初等整数論: 数の神秘へ
4 で割ると 1 余る素数を挙げてみましょう。
例えば 5, 29, 2017 とします。
これらは全て
5=1^2 +2^2,
29=2^2 +5^2,
2017=9^2 +44^2
というように 2 つの平方数の和で書き表せます。
しかし、4 で割ると 3 余る素数ではこの ように書き表すことは絶対にできません。
では、これはいったい何故なのでしょうか。
セミナーではこのような数の性質を勉強していきます。
予備知識は高校までの数学で十分です。
一緒に数の神秘へ冒険してみませんか
雪江明彦,『整数論 1 初等整数論から p 進数体へ』,日本評論社,2013.
高木貞治,『初等整数論講義(第2版)』,共立出版,1971.
大学院への代数学
大学院に入るとテンソル積、位相群論、ホモロジー代数などといった
「学部の授業で習ったわけでもないのにもう既に知ってることにされてる概念・分野」
というものが数多く出てきます。
そういう概念・分野の勉強を
本当に予め学部生のうちにしておくというのが本セミナーの目的です。
学部2~3年で習う代数学に+αを施したような内容ですが、
凄く難しい概念を取り扱うというわけではないので
抽象的な議論に慣れていけば1年生でも参加可能だと思います。
このセミナーの内容は将来的には代数的整数論、代数幾何学、 環論などといった
代数学の分野の学習をする上での道具として使われていきます。
Atiyah-MacDonald, 『可換代数入門』, 共立出版, 2006.
壬生雅道, 『位相群論概説』, 岩波書店, 1976.
Goodearl-Warfield, 『An introduction to Noncommutative Noetherian Rings』, Cambridge University Press, 1989.
対称式の話
みなさんは対称式という名前を聞いたことがあるでしょうか。
簡単に言うと、どの 2 変 数を入れ換えても初めと変わらない多項式のことです。
実は高校の数学でもその性質を使った問題は登場します。
これまで見たことのあるものは大抵変数が 2 個や 3 個のものだ と思いますが、
このセミナーでは n 個の変数で考えたり、
果ては無限個に増やしたりしま す。
対称式には多くの性質や重要な応用があり、
それらをサラッと学習する予定です。
ど のように便利かということにまで触れられたらいいなと思っています。
岡田聡一, 『古典群の表現論と組合せ論 下』, 培風館, 2006.
フーリエ級数の理論
フランスの数学者フーリエは
19世紀初頭に「周期関数は三角関数の和で表せる」とい うことを主張しました。
この主張は (そのままの形では) 偽ですが、
周期関数を三角関数 で表すという手法はフーリエ解析という分野を生み、
関数解析学のような現代解析学が生 まれる原動力の一つとなりました。
また、フーリエ解析の技術は数学の他の分野や広く自 然科学でも用いられ、
理系分野専攻では名が知れ渡るようになりました。
本コースではフーリエ級数の理論を数学的に厳密に学びます。
その際に (主に 2 年生の) 講義で習う関数列の勉強が役に立ちます。
ですので、関数列の扱いにある程度慣れている 方が本コースのターゲットでありますが、
一年生などの参加も歓迎し、レベルに応じて適 切な参加方法を考えます。
特に問題が発生しなければ
E. M. Stein and R. Shakarchi, 『Fourier Analysis: An Introduction. Princeton Lectures in Analysis I』, Princeton University Press, 2003.
の Chapter2-4 あたりを読みます。
英語の勉強になるので英語で読むのも良いですが、
和訳が日本評論社から出版されているのでそちらを使用することも可能です。
また、この本のレベルが合わないという方には別に文献を紹介・相談したいと思います。
お気軽にご相談下さい。
シッカリ学ぶビセキブン
1, 2年生の講義で微分積分法を学びます。
しかし、授業時間の都合上、計算技術の習得がメインになり、美しい理論をゆっくり学ぶ機会が損なわれがちです。
そこで、本セミナーでは「多変数の微分法」の論理を厳密に展開してゆき、その偉大さを学びます。
当面の目標は「逆関数定理の理解と証明」とし、テキストは
M.Spivak. Calculus on Manifolds. 2章.
を使います。
逆関数定理を学んだ後は、
ミルナーによる逆関数定理を用いた「つむじの定理」の別証明 (ミルナーの論文を読むことになります。)
ミルナーの著書「Topology from the Differentiable Viewpoint」の1章にある、逆関数定理を用いた代数学の基本定理の証明
などを学び、逆関数定理の意義について議論していきたいと思います。
後日談:
「つむじの定理」はチューターが「お楽しみ会」として発表しました。
その際のレジュメを公開しています。
複素関数に慣れる
私がチューターとなるセミナーでは、
[1]、[2] のいずれかの輪講を行います。
皆さんの よく知る関数 f (x) は、x と f (x) のいずれの値も実数値のものであると思います。
複素関 数とは、その両方が複素数値であるものです。
言葉で表すと、
違いがよく分からない、
なぜ複素数を使う必要があるのか、
ただ理論を難しく考えようとしているのでは、
などと感じることでしょう。
しかし、両者の理論には大きく違いがあり、
複素関数でしか起こらな い性質が成立、
むしろ簡単化する部分があるといったことが学習するうちに分かります。
セミナーが終わるころには、きっと複素数と今より仲良くなれると思います。
[1] 神保道夫, 『複素関数入門』, 岩波書店.
[2] L. Ahlfors, 『Complex Analysis』, McGraw-Hill Education.
このセミナーで取り扱う内容は主に 2 年次に学ぶものであり、
可換体論、数論、組合せ 論、代数幾何、(実数の) 微分積分学、Fourier 解析、関数解析、佐藤の超関数論、多様体 論、位相幾何学、リーマン面、複素幾何、多変数複素解析、流体力学、電気回路、制御理 論など、
多種多様な分野に応用されています。