認知心理学,言語心理学,教育心理学
身体化された認知,基盤化された認知,言語理解,単語認知,物語理解,視点取得,対人コミュニケーション
単語や文,文章を理解する際に感覚や運動に関わる情報がその理解にどのように寄与しているのかについて興味をもっています。大学院では,文を理解する際に,心的シミュレーション(文を理解する際に起こると考えられるその内容に関する擬似的な体験)によってどのような知覚的情報が活性化されるのかといったことについて研究していました。最近では,単語認知に影響を与える語彙特性として感覚運動情報を扱った研究に興味をもっていて,特に抽象概念に関する単語の理解に感覚運動情報がどのように影響するのかを検討したいと考えています。最近では,そういった内容の語彙特性の情報の収集を(細々と)行っています。基盤化された認知(grounded cognition)とそれに関連する内容についてまとめられた書籍を翻訳したものが出版されています。興味があればぜひお手にとっていただきたいと思います。
望月 正哉 (2021). 概念は何に基盤化されているのか―身体化された認知と基盤化された認知に基づく概念処理と単語認知― 認知科学, 28(4), 629–641. https://doi.org/10.11225/cs.2021.052
レベッカ・フィンチャー-キーファー (著) 望月 正哉 ・井関 龍太・川﨑 惠里子 (訳) (2021). 知識は身体からできている―身体化された認知の心理学― 新曜社 [出版社サイト]
文章理解に理解について研究されている複数の先生方と共同研究をさせていただいている内容です。文章理解について検討する際には,その目的に合致する素材を作成したり,既存の素材を利用しますが,その理解に影響する要因は多岐にわたり,適切な素材を準備することに頭を悩ませることが多いです。そういった発想から,心理学実験に利用しやすい短編小説(物語)を収集し,その物語に関する様々な特性を評価したデータベースを作成し,公開するというプロジェクトが始まりました。このプロジェクトには国語教育や日本語教育の先生も参加されていて,単に実験用の素材を収集するだけでなく,教育目的に使用しやすい物語素材についての検討も行っています。
望月 正哉・井関 龍太・福田由紀・長田 友紀・常深 浩平・石黒 圭 (2021). 読者がもつ物語の認知的ジャンルの測定 読書科学, 62(3/4), 160–174. https://doi.org/10.19011/sor.62.3-4_160
井関 龍太・菊池 理紗・望月 正哉・福田 由紀・石黒 圭 (2022). 品詞構成に基づく文体指標は読者の印象とどのように関わるか―MVRと品詞構成率の心理学的検討― 計量国語学, 33(7), 493–509. https://doi.org/10.24701/mathling.33.7_493
言語理解の研究では,視点取得や理解の個人差ということについても扱っていたことから,自己と他者の認識の差やその差から生まれるミスコミュニケーションについても興味をもっています。そこから発展して,一時期はコミュニケーションにおける「いじり」の研究を行っていました。一連の研究では,送り手は「いじり」だと思っていても,受け手は「いじめ」に感じる可能性もあるということを示しました。最近ではほとんど関連した研究を行えていませんが,勤務先の大学のゼミの学生はこういったテーマに興味をもっている人が多いです。「いじり」研究をしたいという学生さんがいたら大歓迎です。
望月 正哉・吉澤 英里・武田 美亜・瀧澤 純・黒川 雅幸・吉澤 和真・三島 浩路 (2020). コミュニケーションに潜むいじめのリスク 教育心理学年報, 59, 265–273. https://doi.org/10.5926/arepj.59.265
澤海 崇文・望月 正哉・瀧澤 純・吉澤 英里 (2023). 「いじり」行為のもたらす感情経験──「からかい」および「いじめ」との比較による検討── 感情心理学研究. 30(1), 1–10. https://doi.org/10.4092/jsre.30.1_1