特別チュートリアル「パターン認識とメディア理解のフロンティア」

特別チュートリアルのねらい

工学は自然科学の知見に基礎を置きながら、産業、社会への具体的貢献を持って実証される学問である。それゆえに基礎技術に集中すればするほど、 その実証分野は周辺分野への展開が重要となる。その実例を示そう。 MIRU長尾賞は長尾眞先生の功績を記念して授与される 本会議における最優秀論文賞であるが、長尾先生の功績は画像処理だけでなく 機械翻訳を含む自然言語処理にもあることはよく知られている。 とにかく先生ご自身が『面白い』、と思う事に取り組まれた結果は単純ではなく 、功績の深さだけでなくその幅にもある。

今回、3人の講師を招へいした。パターン認識の実利用の状況、 データベースとの融合、自然言語処理との差異、音声・楽音処理の諸問題を説明していただく。 パネルディスカッションでは、他分野での応用の広がりを総括した上で、 メディア理解技術の有効性を実証する上での課題を議論したい。 さらに画像以外のメディアを扱う研究者が議論することで、 AI-Complete(AI完全)問題へのアナロジーから画像に限らず取り組むべき問題の本質が掴めれば幸いである。

特別チュートリアルオーガナイザ: 栄藤 稔

チュートリアルのまとめ

特別チュートリアルディスカッションペーパー(栄藤 稔)

開催要領

日時

2014年7月28日(月) 午後3時15分~午後6時15分

会場

MIRUメイン会場(岡山コンベンションセンター・コンベンションホール)

参加費

MIRU本会議参加費に含まれます

タイムテーブル

ゲスト講演

「自然言語処理の現在と画像処理」

徳永拓之(株式会社 Preferred Infrastructure)

現在の自然言語処理は、画像処理と同じく機械学習を多用する分野である。しかし、 自然言語と画像では、問題の性質が違う所も多い。本チュートリアルでは、自然言語処理と画像処理の共通点や、 自然言語処理特有の事情を概観する。また、自然言語処理と画像処理の両分野にまたがるような研究や、 近年の自然言語処理分野での流行についても解説するつもりである。

徳永拓之

大阪大学基礎工学部システム科学科卒業、東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。ヤフー株式会社を経て、現在は株式会社Preferred Infrastructure勤務。自然言語処理、機械学習に興味を持つ。著書に「日本語入力を支える技術」(2012年、技術評論社)がある。

「音楽理解技術の魅力」

後藤 真孝(産業技術総合研究所)

音楽情報処理分野は過去20年間で大きく飛躍して重要性を増し、注目を集めている。 音楽は「混ざり合った複数の音が相互に関係し合いながら時間的な構造を形成して内容を 伝える信号」であり、その複雑な信号の自動理解は、まだ部分的にしか解決されていない 困難な課題で、研究テーマの宝庫である。本講演ではその音楽理解技術の魅力を伝えつつ、 音楽理解技術の発展によって、エンドユーザが直接恩恵を受けることができる様々な応用が 切り拓かれつつあることを紹介する。

後藤 真孝

1998年早稲田大学大学院 理工学研究科 博士後期課程修了。博士(工学)。現在、産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員 兼 メディアインタラクション研究グループ長。日本学士院学術奨励賞、日本学術振興会賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞 基礎科学部門 優秀賞、科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞、情報処理学会 長尾真記念特別賞、星雲賞【ノンフィクション部門】等、38件受賞。計算機によって音楽・音声コンテンツを自在に扱える技術の確立を目指し、音の自動理解や音インタフェース、歌声情報処理等の研究を22年間推進。音楽鑑賞サービス http://songle.jp 及び http://songrium.jp 、製品発売を開始した歌声合成技術VocaListener(ぼかりす)等を研究開発中。

「E-Commerceにおける機械学習・パターン認識・画像解析技術の活用の実際」

森 正弥(楽天株式会社)

E-Commerceにおいては、ビッグデータという潮流に代表されるようにデータ分析や そのための技術活用は重要な経営課題と認識され、様々な試みが進行している。 本講演では、企業がどのような応用を行っているか、機械学習の適用に際しては 現実的にどのような困難があるのか、またパターン認識・画像解析の技術は、 E-Commerceにおいて実際活用されているのか、について解説しつつ、 E-Commerceにおける技術活用の可能性について示す。

森 正弥

楽天株式会社執行役員 兼 楽天技術研究所長。アクセンチュア株式会社を経て2006年、楽天株式会社入社。現在、同社 執行役員 兼 楽天技術研究所長、情報プロセス部 副部長としてマネジメントおよびデータサイエンティスト戦略に従事。情報処理学会、電子情報通信学会各会員。電子情報通信学会データ工学専門委員会 専門委員. Rubyアソシエーション評議員. IPA Ruby標準化WG委員. 企業情報化協会 ビッグデータ戦略的ビジネス活用コンソーシアム副委員長、 データサイエンティスト育成委員会 委員. 過去に、 経済産業省次世代高度IT人材モデルキャリア検討委員、 CIO育成委員会委員等を歴任. 2013年日経BP社 IT Pro にて、「世界を元気にする100人」に、日経産業新聞にて「40人の異才」に選出。著作に「クラウド大全」(日経BP社、 共著)、「クラウド時代のヘルスケアモニタリングシステム構築と応用」(シーエムシー出版、 共著)、「ウェブ大変化 パワーシフトの始まり」(近代セールス社)がある.

パネルディスカッション

「画像以外もこんなに面白い。」

パネリスト: 徳永拓之(PFI) 後藤真孝(産総研) 森正弥(楽天)

コーディネーター:栄藤 稔(NTTドコモ)

特別チュートリアルオーガナイザ

栄藤 稔

所属: 株式会社 NTTドコモ 執行役員 R&D戦略部部長

略歴 3年毎にやることが変わる技術屋。 修士までは並列コンピュータ試作する計算機研究。パナソニックに就職と共に デジタルVCR試作。3年後ATRに出向。役に立たない非単調推論を研究。 ATRから大学に行き、パターン認識研究を2年間。ECCV、 ICCVへの発表内容で学位取得。 パナソニックに戻りMPEG標準化のリーダー。2000年にドコモに転じ、モバイルマルチ メディアを担当。そのときAppleと組んで定めたファイル形式がMP4。自称ipodの外祖父。2002年末にシリコンバレーに異動となり、モバイルインターネット。一方でH.264標準化活動でMPEGのエミー賞受賞に貢献。2005年に日本に戻り分散音声認識を商用化。 2007年にデータマイニングを立ち上げ、並列分散ペタバイトデータベースを構築。 以後、大規模自然言語処理と並列データベース等に関係する新規事業創出に従事。 2013年日経BP社 IT Pro にて、「世界を元気にする100人」に選出。 電子情報通信学会論文賞、業績賞、前島密賞等を受賞。 twitter IDはmickbean。