1.遺伝情報発現の場としての細胞
問1-1.生命、生物とは何か?
生物学者だけではなく、哲学者を含め、すべての研究者が問題意識として持っていると思います。
問1-2.生物の最小単位を何か? ウイルスは生物だと考えますか?
もし、ウイルスを生物だと考えるひとがおられれば、その理由を聞かせてください。
リチャード・ドーキンスは遺伝子を中心とした生物観「利己的な遺伝子」を発表しています。
私は、自己増殖が可能である細胞を生物の最小単位であると考えています。
問1-3.DNAの塩基配列を遺伝情報であると考えると、その情報はどのように細胞内において発現(機能)していますか?
フランシス・クリックは遺伝情報の流れのことを「セントラルドグマ」と呼びました。
DNAに刻まれた遺伝情報は、細胞内において発現して、機能しています。
細胞が分裂する際、遺伝情報は2倍となり、それぞれの細胞に分配されます。
もし、DNA複製と細胞分裂のタイミングがずれると、細胞は維持できず、おそらく死にます。
問1-4.この細胞内における情報発現のシステムが、細胞外で生じている場があるでしょうか?
もし、細胞外でもあるというひとがおられれば、それはどこであるか聞かせてください。
細胞は、細胞膜によって囲まれて、内と外が区別されます。
2.遺伝情報としてのDNA
最初は、遺伝情報の本体であるDNAについて、復習します。
進化という観点からDNAを見ると、それは、親から子へ継承されてきたものです。
バクテリアのように親も子もない場合には、まさに時間とともに細胞から細胞へ継承されてきたものです。
問2-1.バクテリアには親も子もないというのはどういうことですか?
機能という観点からDNAを見ると、それは、細胞内における情報発現の中核です。
また、様々なタンパク質との相互作用によって、情報の発現制御が行われています。
構造という観点からDNAを見ると、重要な点として、2重らせん構造になっていることです。
問2-2.リン酸、糖、塩基から成り立つDNAの構造を描いてください。 その際、RNAとの違いについても述べてください。
問2-3.DNAに遺伝情報がコードされていると言いますが、どのような意味でしょうか?
問2-4.遺伝子とは何か? タンパク質をコードしているという答えは、大学生としては0点です。
その生物のすべての遺伝情報(遺伝子)のセットのことをゲノムと呼びます。
ハンス・ヴィンクラーが1920年に、gene + chromosome = genomeとゲノムということばをつくりました。
私たち人間のように父と母を持つ場合には、2つのゲノム情報から成り立つこととなります。
ここは重要なので、違う言い方で示すと、私たちは父の精子のゲノム情報と母の卵のゲノム情報の2つの情報を持った受精卵の細胞分裂によって成り立っています。
これに対して、バクテリアのようにクローン生産によって生きている生物は、1つのゲノム情報を倍化して、それを継承しています。
問2-5.クローンとは何か説明してください。
マイコプラズマは0.6メガ塩基対からなるゲノムを持っており、500の遺伝子がコードされています。
大腸菌は4.6メガ塩基対からなるゲノムに、4000の遺伝子を持っています。
バクテリアにおいては、ゲノムサイズと遺伝子数には正の相関があるといえます。
他方、線虫は100メガ塩基対のゲノム(染色体数は6)に20000遺伝子、ショウジョウバエは180メガ塩基対(染色体数は4)に14000遺伝子です。
問2-6.線虫とショウジョウバエのように、どうして真核生物では、ゲノムサイズと遺伝子数が正の相関を持っていないようなことが生じるのか説明してください。
3.細胞外にあるDNAは機能していないか?
遺伝情報をコードするDNAは真核細胞では核に収納されていますが、バクテリアやアーキアには真核生物のような核はありません。
遺伝情報の伝達の方法は、細胞分裂によりますので、DNAが倍化したのちに細胞が分裂する必要があります。
遺伝情報は、それぞれの生物のアイデンティティそのものですので、細胞外から異なる遺伝情報が入らないようになっているはずですね。
しかし、単細胞として生活環を持つようなバクテリアなどは、細胞外から遺伝情報を取り込む場合があります。
そのことを水平伝播と呼び、親から子へ伝達される垂直遺伝と区別されます。
問3-1.バクテリアやアーキアの中で、最もゲノムサイズが大きな生物は何でしょうか?
様々な環境に適用できるように、遺伝情報を蓄積しているような「スーパーバクテリア」を私は知りません。
それどころか、バクテリアのゲノムサイズは分裂を繰り返すことによって、縮まるという論文が発表されています。
バクテリアは何かが外部から供給される環境になると、それを造るための遺伝子を欠落させる傾向にあります。
例えば、寄生バクテリアが宿主から供給されるアミノ酸については、その生合成遺伝子を欠落させ、宿主が必要としているアミノ酸だけ造っていることなどの報告があります。
極端な例としては、ミトコンドリアや葉緑体にはDNAが存在し、それは細胞内共生の前の名残ですが、とても短いサイズとなっています。
おそらく、環境で自律的に生きているバクテリアにおいてもゲノムサイズの縮小の進化的な圧力がかかっていると考えられます。
しかし、環境は変化し、それに対して適応できなければ、地球から消滅してしまいます。
もし、環境に漂っているDNAを取り込むことができれば、ゲノムサイズの縮小圧力に対抗できることになります。
現環境では不要な遺伝情報のプールを環境に構築することによって、必要な際に利用することができれば、極めて効率的なシステムといえます。
その意味では、バクテリアなどの生物の進化は、細胞内だけを考えていては成立しないこととなります。
問3-2.なぜ細胞内だけを考えているだけでは進化は成立しないのでしょうか?
また、その進化は、生命の誕生時から40億年も継承されていると考えることができます。
細胞膜によって隔てられた細胞内と細胞外ですが、その両方にDNAが存在し、それらは完全に独立ではないということになります。
クローン生産だけでは、遺伝情報の多様化は生じないため、バクテリアやアーキアにおける進化では、遺伝情報の水平伝播は必須ということになります。
問3-3.遺伝情報(DNA)の水平伝播はランダムに生じているわけではなく、偏り(バイアス)を持って生じていることがわかりつつあります。どのようなバイアスがあるでしょうか?
例えば、DNAのグアニン・シトシン含量(GC含量)において、細胞内に入り込むDNAのGC含量はその細胞のクロモソームDNAのGC含量よりも数%低い傾向にあることが示されています。
さらに、バクテリアにおけるゲノムDNAの長さとGC含量は正の相関があることがわかっています。例えば、放線菌のような長いゲノムを持つバクテリアのGC含量は高く、マイコプラズマのように短いゲノムを持つバクテリアのGC含量は低いことがわかっています。
真核細胞であっても、バクテリアやアーキアであっても、細胞は自身の遺伝情報のアイデンティティを維持しながら、多様化を生じさせる場となっています。
4.バクテリアの形質転換
バクテリアが細胞外DNAを取り込む能力があったとしても、それを常時行っているかどうかは不明です。
少なくとも、試験管(便宜上そのように表現しますが、試験管に限っていません)における細胞内へのDNAの導入は強制的に行っています。
塩化カルシウム存在下でコンピテントセルにDNAを導入する方法
電気パルスによって細胞に一時的な穴をあけてDNAを導入する方法
パーティクル・ガンによって細胞内にDNAを打ち込む方法
プロトプラストにPEGを作用させてDNAを導入する方法
これら4つの方法を説明できますか?
などありますが、すべて細胞膜に大きな負荷をかけて強制的にDNAを導入しています。
また、その際、数メガ塩基対のクロモソームサイズのDNAは導入できず、数キロから数十キロ塩基対のプラスミドサイズのDNAが対象となります。
もし、簡単にクロモソームサイズのDNAが細胞内に導入されると、その生物のアイデンティティが維持できなくなる可能性があります。
問4-1.どのような場合にアイデンティティを維持できないでしょうか?
生物は、アイデンティティを維持するため、40億年をかけて、現在のようなシステムを築き上げたと考えられます。
遺伝情報の水平伝播も規模は大きく変化したと考えられます。
すなわち、生命が誕生した時期においては、個々の細胞のアイデンティティはほぼ存在しておらず、細胞は遺伝情報の多様化の方向に進んだと考えられます。
そのような時期には、大規模な遺伝情報の水平伝播が生じ、様々な情報を持った細胞が造られたと考えられます。
その中から、ほぼ正確に自己の遺伝情報を次世代へ伝えることが可能な細胞が生じ、その後に細胞や生物のアイデンティティが確立していったと考えられます。
現在では、遺伝情報の多様化よりも細胞個々のアイデンティティが重要となり、水平伝播する遺伝情報は小規模となり、プラスミドやウイルスを介して生じている程度になっていると考えられます。
このような状況においても形質転換が可能であることは、多様化をゼロにすることは生物としてできないことを意味しているとも考えられます。
アイデンティティの維持と多様化の促進は相反するものですが、双方とも重要なことです。
5.バクテリアの細胞表層構造
さて、本講義の中心課題は細胞膜であると述べています。
ウイルスは細胞膜を持たず、宿主がなければ遺伝情報の増幅もできません。
すべてのバクテリアは細胞膜を持っています。
多くのバクテリアの細胞表層は、細胞膜だけで構成されているわけではありません。
例外的に、マイコプラズマは、シンプルに細胞膜で覆われた細胞を持っています。
前述したように、マイコプラズマのゲノムサイズは小さく、遺伝子数は少ないですが、それを可能にしている一つの要因が、細胞膜以外の表層を持たず、その分の遺伝情報を持っていないことが挙げられます。
ただ、そのようなバクテリアは例外的です。
問5-1.バクテリアの細胞は、大きくグラム陽性と陰性の2つのタイプに分けらています。 それらの細胞表層の特徴について述べてください。
問5-2.細胞壁の主成分は、ペプチドグリカンですが、その構造的な特徴を言えますか?
問5-3.ペニシリンは細胞壁の合成を阻害します。 どのような機構で阻害しますか?
問5-4.ペニシリンはアレクサンダー・フレミングが青かびから抽出した世界で最初の抗生物質です。 抗生物質とは何ですか?
問5-5.リゾチームはペプチドグリカンを分解する酵素です。 誰が発見したでしょうか?
細胞壁は必ず細胞膜よりも細胞の外側に形成されます。
このことは、細胞膜は細胞壁によって外部より保護されているとも考えることができます。
呼吸にしても、光合成にしても、その場は細胞膜です。
どれほどの電子がどのように細胞膜において移動しているかという問題は、実に生物物理化学であると感じます。
バクテリアの細胞膜において、上記の問題は解かれているでしょうか? おそらくわからないことの方が多い状況であると思っています。
研究や実験はわからないことへのチャレンジですので、まずは、どうすれば、問題が解けるかを考える必要があります。
6.ミトコンドリアや葉緑体における細胞膜とATP合成
細胞が生きていくためには、ATPの合成は極めて重要なことです。
ミトコンドリアや葉緑体の役割の重要なことはATPの生産です。
問6-1.ミトコンドリアと葉緑体の断面図を書いてください。 その断面図において、ATPが蓄積している領域を示してください。
現在では、ミトコンドリアや葉緑体の起源はバクテリアであり、それらが細胞内共生して、現在の細胞小器官となったと教科書にもかかれています。
細胞そのものの水平伝播と考えられるこの出来事は、真核生物誕生の鍵となることであり、生物多様化の大きなステップでありました。
葉緑体の起源とされるシアノバクテリアは確かに酸素発生型の光合成を行っており、葉緑体と同じようなシステムを持っています。
興味深いことには、バクテリアにおける光合成の多様度は大きく、シアノバクテリアのような複雑な光合成がどのような経緯で生じたかについてもある程度類推できます。
光合成細菌の中には、細胞内に独立したチラコイドを形成せず、細胞膜が陥入しているような構造体であるクロマトフォアを形成するものがあります。
現在、植物細胞においては、葉緑体とミトコンドリアは別々の器官として共存しています。
しかし、紅色光合成細菌の多くは、細胞膜上において、光合成も呼吸も行っています。
光合成における電子伝達と呼吸における電子伝達には多くの共通点があり、シトクロム、キノン、デヒドロゲナーゼなどです。
すなわち、両者は共通の祖先を有し、それぞれのシステムが構築されたと考えることが自然です。
その場合、地球上に酸素が大量に存在するようになったのは、シアノバクテリアの働きによるものであり、それ以降に酸素呼吸が成立したように考えられます。
すなわち、呼吸における電子伝達は、光合成における電子伝達から生じたと考えられます。
その進化的な鍵を握る生物が紅色光合成細菌です。
呼吸も光合成も同じ細胞膜上で行っている目的は、細胞外にプロトンを放出して、その濃度勾配をつくることにあります。
ATPは細胞膜に存在しているATP合成装置によって造られています。
ATP合成装置をATPのエネルギーで起動することは意味ないですね。
問6-2.では、どのような仕組みで細胞膜に存在しているATP合成装置は機能していますか?
ピーター・ミッチェルは化学浸透説を発表しました。 生物学の歴史の中でも重要な仮説の提唱とその証明ということになります。
7.細胞膜の選択透過性
細胞膜の重要な点は、単なる脂質二重膜とは異なる機能をそれぞれの膜タンパク質によって担われていることによって成り立つ点です。
ここはとても重要ですので、重複しても繰り返して述べます。
プロトンなどが細胞膜を介して濃度勾配を生じる大前提として、脂質二重膜は、プロトンが自由に透過できないからです。
問7-1.それはなぜですか?
問7-2.窒素や酸素はどうですか?
問7-3.エタノールと水ではどちらが脂質二重膜を透過しやすいでしょうか?
問7-4.DNAはどうですか?
DNAを遺伝情報として、生物のアイデンティティとして存在させることを可能とするためには、細胞膜を簡単に透過できないことが前提となります。
問7-5.細胞膜を構成しているリン脂質には多様性があります。 その多様性、例えば、リン脂質の種類や構造などについて示してください。
8.輸送系膜タンパク質
さて、問6-1で見たように、ミトコンドリアにおいてATPが高濃度に存在している状態は、細胞にとっては意味がありません。
ミトコンドリアで造られたATPは細胞質に放出される必要があります。
問8-1.どのようにして、ミトコンドリアにおいて生産されたATPは細胞質において利用されているのでしょうか?
ADPを取り入れてATPを取り出すようなことを行う装置は、膜に埋め込まれたタンパク質が行っています。
トランスポータやチャネルと呼ばれている物質の輸送にかかわるタンパク質の存在がなければ、細胞膜に囲まれた内部の恒常性を維持することはできません。
アーキア、バクテリア、真核細胞生物におけるタンパク質の種類や数は違っていますが、その25%程度が膜タンパク質です。
問8-2.膜タンパク質を1つ取り上げて、その機能についてレポートしてください。 もし、可能であれば、ミトコンドリアの外膜におけるATPの細胞質への放出がどのようになっているかについてレポートしてください。
9.バクテリア細胞の巨大化と液胞形成
バクテリアの細胞膜において、単位面積当たり1つのATP合成装置が存在し、それによって、細胞質が維持されているとします。
問9-1.この細胞の直径が100倍になった場合、細胞膜の面積は何倍になって、細胞質の体積は何倍になるでしょうか?
問9-2.その場合、最初のATP供給を維持するためには、単位面積当たりのATP合成装置の数はどれほどになる必要があるでしょうか?
問9-3.もし、単位面積当たりのATP合成装置の数が1のままで細胞質を維持するとすると、細胞質はどれほどまでに減少する必要があるでしょうか?
私たちの研究室では、バクテリア細胞の細胞壁を分解し、再合成を阻害させた条件で、細胞巨大化を行っています。
https://sites.google.com/site/appliedbioinformaticslab/home/research/ju-da-hua-yan-jiu-ji-lu
細胞壁をリゾチームで処理して、分解したものをスフェロプラストやプロトプラストと呼びます。
スフェロプラストやプロトプラストは培地の条件さえ整えば、分裂することなく、巨大化し、これまでに直径が1000倍になった細胞も現れました。
バクテリア細胞の巨大化は、風船が膨らむような膨張ではなく、巨大化におけるリン脂質組成の変化でお話したように、リン脂質の組成を変化させるように合成を調整しながら行われていることを示しました。
20倍程度に巨大化したバクテリア細胞には、生物種に関係なく、その細胞質に液胞が形成されます。
これは、細胞質の体積の増加を抑制する効果があると考えています。
10.バクテリア細胞の巨大化と金属イオン組成、DNAの複製
特定の金属イオンがバクテリアのプロトプラストやスフェロプラストの巨大化にかかわっていることが明らかになりつつあります。
あるグラム陰性バクテリアのスフェロプラストの巨大化にカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンが必要であることを明らかにしました。
さらに、このスフェロプラストの巨大化では、カルシウムイオンの場合には、外膜が融合し、超巨大化しましたが、マグネシウムイオンの場合には外膜融合は生じませんでした。
このことは、金属イオンが細胞表層に物理的に関係を持ち、カルシウムイオンの場合には異なる細胞との表層と融合が可能であるが、マグネシウムイオンの場合には1つの細胞の細胞表層の伸張は可能であるが、異なる細胞間での接着、融合ができない構造になっていると考えられます。
他方、金属イオン組成を変えることによって、細胞表層の伸張の速度が変化する場合があります。
このことは、金属イオンが細胞内に浸透し、細胞表層の合成速度が高めた可能性を示しています。
このように、金属イオンそのものが構造的にかかわっている可能性、細胞内において酵素やタンパク質の活性に関与している可能性などが考えられます。 実験で証明していく場合には、様々な可能性を検証するというスタイルが必要となります。
細胞周期ということばを聞いたことがあるかと思います。
真核細胞の分裂で使用されることが多いのですが、細胞が分裂する前に、遺伝情報であるDNAは倍化する必要があり、その制御機構のことを指しています。
当然のことですが、これはバクテリアやアーキアの細胞分裂においても重要なことで、DNAが複製していない状況では、細胞は分裂できません。
細胞分裂のためには、細胞膜が合成される必要がありますし、細胞質も最終的には2倍になる必要があります。
すべての細胞にとって、複製はすべてのスタート、あるいは、リセットではないか? と思います。
私たちは、バクテリアのプロトプラストやスフェロプラストを巨大化させていますが、その際、細胞分裂は生じません。
にもかかわらず、DNAは複製を繰り返し、細胞内のDNA量は増加します。
細胞膜は伸張し、合成されていることを考えると、複製は細胞膜合成と関連していると考えられます。
問10ー1.このようなときに、どのような実験を行って、複製と細胞膜合成の関係を調べればよいでしょうか?
ケミカル・バイオロジーという分野があります。
抗生物質学と呼ばれる分野の別名のような気もしていますが、抗生物質に限らず、化合物によって、生物学実験を行って、生物現象を解明するという感じかと理解しています。
複製を停止させる化合物として、ノボビオシンという化合物(抗生物質)があります。
バクテリア細胞の巨大化のインキュベーションのときに、このノボビオシンを入れると、DNAの複製だけではなく、巨大化が停止することがわかりました。
また、ノボビオシンが実験で使用したバクテリア細胞を死滅させることがなく、培地からノボビオシンの効果をなくすと、巨大化が再開することも確かめました。
ちなみにマイトマイシンCという化合物も複製阻害の活性を持っています。
上記のバクテリアのプロトプラストの巨大化インキュベーションにおいて添加したところ、巨大化はストップしました。
しかし、DNAは分解され、細胞は死んでしまいました。 巨大化しないのは当然です。
薬剤や化合物の効果を低減させて、もとの状態に戻すようなことが可能な場合は少ないわけです。
私たちは巨大化させたバクテリア細胞に様々な異種ゲノムを導入し、巨大化に与える影響について実験しました。
その結果、導入されたゲノムによって細胞の伸張が抑制される傾向にあることがわかりました。
ただ、導入していない場合と違いが生じない異種ゲノムも存在しており、異種ゲノムを宿主細胞がどのように認識しているか明らかにする必要があります。