現在の研究課題
「標的殺害は道徳的に許容されるか――〈汚れた手〉問題からの戦争倫理学的検討」 (基盤研究C、2023年度-)
研究目的(概要)
本研究の目的は、標的殺害の道徳的是非を、〈汚れた手〉問題の再検討を通じて問うことである。近年、資源や能力に恵まれた交戦者と小規模交戦者が行う非対称戦争において、特定個人の意図的かつ計画的な殺害、いわゆる「標的殺害」がしばしば行われている。標的殺害は、双方が武装した交戦状態で実行されるわけではない点では暗殺とされる形式に近い。そこで本研究では、標的殺害を要人の暗殺として理解し、その許容性を〈汚れた手〉の観点から分析・評価する。すなわち、第一に、標的殺害の特質を、要人の暗殺という側面から分析することで、通常の戦闘行為とは異なる倫理的特徴を解明し、第二に、非対称戦争における交戦者の道徳的地位を区別したうえで、非対称戦争において能力的に優位にある側が標的殺害を行うことは〈汚れた手〉の一環として許容されうるかを論証する。
現在の進捗状況
2023年度、本研究課題に関わる研究成果として、以下の研究を公表した。
1.「平和研究としての政治哲学――『理想』を再定義する」 『平和研究』60号、1-24頁
2. "The Right and Justice of Subsistence Wars as Necessity: A Grotian Account," International Politics, online first
2024年度、本研究課題に関わる研究成果として、以下の研究を公表した。
1. "A Threshold Account of Last Resort in the Ethics of War," International Relations, online first
2. 「自由の制限はいつどのように許容されうるか――チルドレス諸原則の分析」 岩崎正洋編『コロナ化した世界──COVID-19は政治を変えたのか』(勁草書房)、19-37頁
また、以下の研究を実施中であり、2025年度中に公表する予定である。
1. 正戦論における〈比例性〉と〈必要性〉の関係に関する研究
2.政治倫理における「マシな悪」(lesser-evil)の構造的把握に関する研究