Epidural 硬膜外麻酔(和痛/無痛分娩)について

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妊婦さんの大きな関心事の一つである、Epidural硬膜外麻酔)(いわゆる「無痛分娩」、「和痛分娩」と言われるもの)について、妊娠サポートグループの参加者として来て頂いていた日本の麻酔科医の佐藤和香子先生が、分かりやすくまとめて下さいましたので、ご紹介します。


筆者:佐藤和香子先生(麻酔科標榜医、日本麻酔科学会専門医)/更新日:2017年2月17日

出産時の硬膜外麻酔

いわゆる硬膜外無痛分娩について


「無痛分娩」は硬膜外麻酔で陣痛など出産時の痛みを和らげることを言います。

出産時の痛みを和らげる方法には

薬を用いない方法(ラマーズ法などの呼吸法、リラクゼーション、姿勢を変える、歩く、お風呂やシャワーに入る、アロマ、など)と

薬を用いる方法(鎮静薬や鎮痛薬を点滴または注射する、硬膜外麻酔)があります。

出産の間はこれらを組み合わせて乗り切ります。

現在では硬膜外麻酔を用いることが、薬を用いる方法の中心となっています。


硬膜外麻酔を希望されても、一部の妊婦さんは硬膜外麻酔を行うことができません。腰部や背中、背骨の手術・既往歴がある、カテーテルを留置すべき皮膚に感染や炎症、などのトラブルがある、出血傾向がある、脳神経系の症状がある、硬膜外麻酔で使われる器具や薬剤にアレルギー歴がある、血圧や心臓などの疾患がある、などの場合です。これらに当てはまる方は事前に担当の先生に確認してみてください。


硬膜外麻酔を用いることの利点

脊髄という痛みを伝える神経の近くに(硬膜外腔;特に下腹部腰部、会陰部といった陣痛を感じる部位を担当する部分に限局させて)薬を投与できるので、痛みを緩和する効果が強いこと、点滴や注射での投与と違い全身を巡らないので、妊婦さんへの影響は少なく、胎盤を通って赤ちゃんへ届くこともほとんどありません(赤ちゃんに影響が出ることはない極微量のみ)。

薬の量も調整が可能ですので、経過とともに変化する陣痛に薬の量で対応することもできます。

鎮静薬のように意識への作用もなく、体力温存ができます。


起こりうる問題点 ※はお薬で対応できます

出産時に限らず、硬膜外麻酔を行うときには

血圧が下がる(血圧測定を定期的にします)※

足の感覚が鈍くなる(触っている感じがわかりにくくなる、足のつま先や足首、膝などが上を向いている、曲がっているなどわかりにくくなる、など)

下半身に力が入りにくい(足の膝が曲げにくい、姿勢を変えるのに足で支えにくいなど)

尿意を感じにくくなる

顔や体がかゆくなる※

体が震える(寒く感じることも、感じないこともありますが、寒さでガタガタ震えるのに似ています)※

吐き気がする※

体温が高くなる(産後に赤ちゃんにケアが必要になることが稀にあります)

硬膜外麻酔後に頭痛が起こる※

カテーテルの入っているところが痛くなる※

足、お尻、背中にお産の痛みとは違う痛みやしびれ(しびれとは医学用語ではないので、例えば何もしていないのにやけどのようにチリチリするとか、正座の後に足がじんじんする、肘を打った時のようにビリっとする、など)がでる※

足、お尻、背中の痛みやしびれが残る※(出産そのものによる症状のこともあります)

などがあります。

使用中にカテーテルの位置がずれて、位置を調整したり入れなおしたりすることもあります。

また、硬膜外腔以外の血管や硬膜内に薬が入ってしまうことが極まれに起こり、この場合には緊急処置を要します。(唇がしびれる、耳鳴りがするときは即刻スタッフに告げましょう。)


出産に対する影響

分娩時間は長くなります。

合わせて、促進剤を使うことになることが多いです。

帝王切開の可能性は上げませんが、鉗子・吸引分娩の可能性は上がります。

赤ちゃんが産道を降りてきていることは、会陰部の圧迫感(肛門に向けて圧迫される感じ、が近いでしょうか)でわかることが多いです。

この圧迫感やおなかの張りがわかりにくくなったり、いきみが出来ているのかどうかわからなかったりすることがありますが、スタッフがタイミングやいきみ方を伝えたり、硬膜外麻酔調整をしたりしてお手伝いします。


過ごし方

妊婦さんは胎児の心拍モニター、陣痛計、血圧計のほか、パルスオキシメーター、尿道カテーテル、点滴をつけます。

ベッド上で過ごします。できる範囲で姿勢を動かすことは可能ですが制限があり、排泄もベッド上です。

固形物は摂取できず、飲めるものはお茶や水、果肉のないジュース、コーヒー、スポーツドリンク(ゼリー飲料はダメな施設が多いです)に制限されます。

状態によっては飲むこともストップします。

痛みが強くなる、今までなかった痛みが出てくる(痛くなる場所は下腹部に限りません、頭、足、腰、みぞおち、どこであっても)、また体調に異変を感じたら、察してもらえるとは考えず、すぐにスタッフに伝えましょう。


開始する時期

陣痛が始まってリクエストがあってから開始します。

初産では陣痛が1分持続かつ5分間隔が1時間以上続き、子宮口が4-5cm開いてからが多いです。(経産婦さんでは出産の経過が早いことが予想されるのでもう少し早めに始める場合もあります)

いきみを始めるタイミングまでお産が進んでしまってからは行うことはできません。周りの状況や妊婦さんと赤ちゃんの状態によっては開始が遅れることがあります。(例えば、他の妊婦さんに硬膜外麻酔の準備をしている最中であったりすれば、すぐとは行きません。頼んでからどのくらいでやってもらえるのか、入院後にスタッフに確認されるとよいと思います)

また硬膜外麻酔を行う前に、麻酔科医師や硬膜外麻酔を行う資格を持つ専門看護師から、最終的な診察・説明を受けて同意書に署名をします。この診察で、前述の硬膜外麻酔に適さない状態が見つかれば受けることはできません。また陣痛のさなかであり十分な時間をかけて行われないこともあります。

陣痛のためにうまく自分で医療スタッフに無痛分娩の希望を伝えることができないこともあります。付き添ってくれる予定の方にもどんなタイミングで使用したいと考えているのか、事前にお話ししておくことも大事です。

バースプランで無痛分娩は受けない!としていても、出産の途中で無痛分娩を利用することは開始できる時期を逃さなければ出来ます。


硬膜外麻酔を終えた後

硬膜外麻酔の効果は数時間でなくなります。

すぐに授乳できます。硬膜外麻酔の薬は局所麻酔薬をメインに医療用麻薬も含まれますが、アメリカ小児学会でも母乳育児にさしつかえないとしています。

硬膜外麻酔による無痛分娩で母乳育児成功率は下がりません。

飲み物や食事についてはスタッフに確認してからにしましょう。

最初にベッドで体を起こす、ベッドから立ち上がる、歩くは、スタッフとともにします。


事前に準備しておくといいこと

各病院ごとに出産準備クラスがあるかと思います。

無痛分娩についての講習を受講され、その病院でのルールや開始時期の決め方など把握されておくとよいと思います。


日本産科麻酔学会に妊婦さん向けの無痛分娩のQ&Aがありますのでご紹介いたします。

以下のURLからウェブサイトへ入ることができます。

帝王切開についてのQ&A、またお役立ちサイトにはイギリスとボストンの妊婦さん向け情報が掲載され日本語で読めますので、よりイメージがわきやすいと思います。

http://www.jsoap.com/prevailing.html


参照文献

1. Chestnut, David H. Chestnut's Obstetric Anesthesia: Principles and Practice. Fourth ed. Philadelphia: Mosby/Elsevier, 2009. Print.

2. Sutter Health Palo Alto Medical Foundation. We Plus You. "Understanding Birth."

3. 日本産科麻酔科学会Web Site.

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