第10回 九州人類学研究会オータム・セミナー(2011)

【2011年10月29日(土)~10月30日(日)1泊2日】

【場所】国民宿舎ひびき

所在地:福岡県宗像市鐘崎79-6

最寄駅:JR 鹿児島本線の東郷駅(博多駅より快速電車で30分程度)下車

タクシーにて約30分

※なお、当日は博多駅(筑紫口ホテルセントラーザ前)、九大箱崎キャンパス北門前、JR東郷駅に無料送迎バスが参ります。

【参加費】

学生:6,500円(宿泊費+1日目夕食+2日目朝食を含む)

一般(常勤有職者):8,500円(同上)

※部屋着・洗面用具等は各自でご用意ください。

【時間割】

10月29日(土)

各自、現地まで移動

※送迎バス出発時刻(時間厳守)

11:45 JR博多駅(筑紫口ホテルセントラーザ前)

12:00 九大箱崎キャンパス北門前

12:40 JR東郷駅

13:30 現地集合

14:00~17:00 セッションA: 「フィールドから考える自然と宗教―アニミズム・シャーマニズム・夢」

18:00~ 懇親会

10月30日(日)

08:00 朝食

09:00~12:00 セッションB: 「モノから見る人の集まり、モノの集まりから見る人」

終了後、現地にて解散

【参加申し込みにあたってのご注意】

①会場の都合上、一泊二日の全日程にご参加いただける方のみ受付いたします。

1日のみの参加はできませんのでご了承ください。

②ご参加申し込みの締め切りは、2011年10月17日(月)までとさせていただきます。

③お申し込みはreligion@lit.kyushu-u.ac.jp まで「セミナー参加希望」の旨、およびバスをご希望の場合は乗車場所(JR博多駅、九大北門前、JR東郷駅のいずれか)をメールにてご連絡ください。

④お申込みを頂いた方には、10月17日(月)以降ご確認のメールならびに最終のご案内をお送りいたします。

⑤万が一、申し込み後にやむを得ない事情で参加取り消しの場合は、必ず事前にご連絡ください。無断でご欠席の場合には参加費用を頂戴することになります。

⑥参加費用は現地にて、受付の際にお預かりいたします。

⑦すべての連絡はメールにてお願いいたします。電話連絡は緊急の場合のみご利用ください。

以上

セッションA:「フィールドから考える自然と宗教―アニミズム・シャーマニズム・夢」

徳安祐子(九州歯科大学非常勤講師):コーディネーター

王貞月(西南学院大学非常勤講師)

津村文彦(福井県立大学準教授)

長谷千代子(九州大学講師)

溝口大助(AA研ジュニアフェロー)

セッション要旨:

かつて宗教起源論のなかで活発におこなわれたアニミズムに関する議論は、文化進化論、宗教起源論が否定されたあとも、その勢いを失いながらも廃れることなく、今日まで民族誌的報告が積み重ねられ、近年自然との関係という視点から再び議論が活発化している。多くの人が、今もなおフィールドに立ったときに否応なくアニミズム的世界に出会い、そこを理解せずにかれらの生活世界を語ることができないと感じてしまうのではないだろうか。また、近年環境問題への関心の高まりとともに、アニミズムは自然との共生を可能にする思想として注目され、「環境にやさしい」ものとして伝統社会の捉えなおし、あるいはそれに対する批判的議論、さらには現代社会のなかでエコロジー思想と結びついて展開する諸現象についての議論が展開されている。しかし、本セッションでは、そういった議論からいったん距離をおいてアニミズムの本義に立ち返り、「精霊信仰」としてのアニミズム、あるいはアニミズムに限らずさまざまな主体が入り乱れる世界における実践としての呪術や憑依について検討する。それによって、「入り混じり、捉えどころのない」主体を対象化するというような試みとしてのアニミズム論をめざす。

まずは原始宗教概念の整理・再考をおこない(長谷・中国)、各発表者が、シャーマニズムにおける霊(王・台湾)、精霊と呪術の関係性(津村・タイ)、呪術師の知識(徳安・ラオス)、動植物と人間社会との関係(溝口・マリ)にそれぞれ着目しながら、目にみえない、われわれ人間とは異なる主体(霊的存在)がどのように立ち現れ、どのように人間に介入してゆくのか、また、その力の発現を通じて、霊的なものと人間とがどのような関係をもつのか、ということについて、各フィールドから得た知見をもとに発表をおこなう。

セッションB:モノから見る人の集まり、モノの集まりから見る人

渡辺 文(日本学術振興会特別研究員・PD):コーディネーター

神本 秀爾(京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程)

田中雅一(京都大学人文科学研究所・教授)

山野 香織(京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程)

【コメント】桑原 知子(熊本学園大学非常勤講師):コメンテーター

●セッション要旨:

近年の文化人類学的議論に見出せるひとつの傾向として、「モノ」の問題系への向かい直しが挙げられるだろう。現地のモノを現地の社会的文脈から明らかにするという1920年代以降の文化相対主義、審美性や形態論の観点からモノの普遍的価値を見出そうとする(とりわけ1980年代以降の)本質主義、そしてグローバルなアリーナにおいてモノの差異がつくられたり捨象されたりする過程へ侵入していく権力批判としての制度論。芸術論を中心に広がったこれら一連の論争は、現在、考古学や科学哲学など広く社会科学の諸分野と出会うことによって、芸術論にとどまらないモノ論として広く議論されてきている。文化人類学のひとつの特徴が、人間の集団形成の在り方を描

き出す点にあるとするならば、アクター ・ネットワーク論やネクサス理論(アルフレッド・ジェル)などをはじめとした現在のモノ論から得られる視座は、「モノが所与の集団を表象する」のではなく、「モノが集団をつくる」、あるいは「モノの媒介によって形成される人間のつながり=集団」という側面を照射してくれる。 本セッションではこのような問題系を踏まえたうえで、「集団形成におけるモノ」というテーマのもと、メンバーの具体的なフィールドの事例に基づいて議論を展開する。神本はジャマイカの三大ラスタ集団のひとつ、EABIC派信徒の着用するターバンが非EABIC派にも浸透するようになっている状況を、フェティッシュを介したネットワークの拡大と重層化という観点から分析する。田中は日本を中心とした下着の悉皆調査から、「彼女の下着」が徐々に所有者の身体の刻印から離床する過程、すなわち「下着が脱身体化するとき」について論じる。山野はワシントンD.C.におけるレストラン街での事例を検討し、エチオピア系移民の集まりについて考察する。渡辺はフィジーにおいて「オセアニア芸術」というカテゴリーを創造しようとする芸術家たちの制作行為、そして「見る」という行為の分析をとおして、作品の集まりと芸術家たちの集まりとを関連づけていく場について論じる。

このように地域も異なれば対象とするモノも多様なメンバーによって構成される本セッションをとおして、モノの次元から人間のつながり、あるいは関係性をいかに描き出すことができるのかを見つめなおしてみたい。