明治大学「法と文学」シンポジウムのご報告

去る6月23日(土)に開催された明治大学「法と文学」シンポジウムについてご報告いたします。

土曜日の昼下がりにも関わらず、会場には50名余の皆様にお越しいただきました。法学研究者、文学研究者、大学院生・学生、社会人と多様な方々が、それぞれのご関心からシンポジウムに参加してくださいました。

あらためまして主催者を代表して御礼申し上げます。

はじめに、主催・法科大学院ジェンダー法センター長の角田由紀子教授が開会の挨拶を行いました。続いて小林史明が、このシンポジウムを企画し、今「法と文学」を取り上げることの意義について説明しました。

研究報告として、リチャード・ポズナー『法と文学』(木鐸社、2011年)を翻訳した神馬幸一氏(静岡大学)、坂本真樹氏(同)がまず登壇し、訳者ならではの視点から本書の特徴と、注目すべき論点についての指摘を行いました。神馬氏が著者ポズナー(Richard Allen Posner)と本書全体に係る問題系を扱った一方で、坂本氏はポズナーとアメリカのフェミニズム法学者ロビン・ウエスト(Robin West)との論争を中心に「法と文学」の中身に直接関わる報告をしました。

小林史明

続いて法哲学の立場から小林史明(明治大学)報告pdfと吉良貴之氏(常磐大学)報告pdfが登壇し、「法と文学」に対する相反するそれぞれの評価を行いました。小林が人文学に見られる反実仮想的想像力の重視が法にとっても重要であるとする一方で、吉良氏は「法と文学」研究者が攻撃することの多い「法の形式性」を再評価することでナラティヴ論をはじめとする一回的で体系性のない実践に身を委ねる危険性を指摘しました。

会場からは十を超える質問票が出され、文学を読むことがどのように法学教育にとって重要なのか、法科大学院制度との関係はどうなのかなど、「法と文学」への関心の高まりが感じられる活発な質疑応答となりました。

最後に主催・明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター長の細野はるみ教授が閉会の挨拶を行いました。細野教授は、文学者として法科生・経済学科生の教育にあたった経験から、志賀直哉「范の犯罪」に対するそれぞれの学生のリアクションに差異について、また「法と文学」が文学やジェンダー・スタディーにとって持つ意味を強調しました。

数年前より「法と文学」に関する書籍の出版が日本においても多く見られるようになり、さらなる研究が待たれるなか当シンポジウムが盛会となったことは、今後の「法と文学」研究への明るい兆しであると思います。以上です。

当日の<プログラム>

開会挨拶 角田 由紀子(明治大学法科大学院ジェンダー法センター長、弁護士)

趣旨説明 小林 史明

報告1 神馬 幸一(訳者、静岡大学准教授、刑事法・医事法)

報告2 坂本 真樹(訳者、静岡大学准教授、民事訴訟法・英米法)

報告3 小林 史明(明治大学法科大学院ジェンダー法センターRA、法哲学)

報告4 吉良 貴之(常磐大学嘱託研究員、法哲学)

質疑応答・ディスカッション

閉会挨拶 細野はるみ(明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンター長)

吉良貴之