2016年度の講義録

第10回講義

講演者: 西村吉雄氏(早稲田大学政治経済学術院 客員教授、元 日経エレクトロニクス編集長)

日時:2017年2月18日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 524会議室

講演題目:「理系博士がジャーナリストになる」

科新塾第6期第10回講義は、今年の最終講義。例年であれば今年一年を振り返る時間に充てていますが、今年は講師をお呼びしました。講師は、元日経エレクトロニクス編集長の西村吉雄先生。御年75歳ですが、現在も技術ジャーナリストとして精力的に活動されています。

講義は西村先生の生い立ちから出版社に就職するまでのお話、ジャーナリスト業界のお話、電子産業のお話など多岐に渡り、先生の熱意にどんどん引き込まれて難しくも濃密な時間を過ごすことができました。特に印象的だったのは、先生が大学院時代にフランスに留学されていた頃、フランスの「5月危機」とチェコの「プラハの春」を、さらに帰国後には学生紛争を目の当たりにされたこと。世界の変革を肌で感じられた先生は、通常の研究生活に違和感を覚え、博士課程卒業後に出版社への就職を決められたそうです。そのお話を聞いた時には、大きな時代の変わり目にいたからこそそのような選択ができたのではないか、と感じたのですが、後でそうではないと思い直しました。昨年のイギリスのEU離脱や相次ぐテロ、大統領選挙でのトランプ候補の勝利など、世界の情勢は目まぐるしく変わっていて、問題意識を持ち、危機感を抱くことはあるはず。だから結局のところ、どれだけ感性を磨いて「自分に関係すること」として捉えられるかが重要なのではないかと思いました。

仕事のお話では、技術ジャーナリストの実情についてのお話が興味深く、書いた記事に対して企業側からクレームを受けることも多いとおっしゃっていました。科学の世界では科学的に正しいことが求められますが、現実の社会では事実(に基づく分析)を伝えることだけが正解なのか、ということについて考えさせられました。

懇親会は、今年で定年退官される河田塾長にささやかながら花束の贈呈を行いました。講義・懇親会ともに約15名の塾生が参加した最終講義には、OB・OGの方も駆けつけ、心温まる会になりました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

河田先生、ご退官おめでとうございます。来期以降もよろしくお願いいたします。

(塾頭:鯉沼 宏章)

第9回講義

講演者: 鈴木寛氏

(元文部科学副大臣、東京大学教授、慶應義塾大学教授)

日時:2017年1月28日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 524会議室

講演題目:「官僚から大学教員、政治家になる」

第8回講義

講演者:塾長 河田聡

日時:12月17日 (土) 14:00~17:00

会場:日本大学 理工学部 駿河台キャンパス 5号館2階524教室

講義題目:「誰が人を評価するか」

第7回講義

講演者:落合陽一氏

(筑波大助教 落合研主宰,メディアアーティスト)

日時:11月26日(土) 10:00~13:00

会場:日本大学 理工学部 駿河台キャンパス 5号館2階524教室

第6回講義

講演者: 岡島礼奈氏(株式会社ALE代表取締役社長)

日時:2016年10月22日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 524会議室

講演題目:「夢をどう実現していくか?」

本日の講師は株式会社ALE代表の岡島礼奈様、なんと、お子さんを抱っこしてのご登場です(すやすやお休み中です)。タイトルは「夢をどう実現していくか?」さて、どんなお話が聞けるのでしょうか?

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・自己紹介

大学在学中に起業・その後超有名投資会社に就職・再び起業というご経歴に、こんなすごい方のお話が参考になるのか…とちょっと不安な講義スタート。それでも、「学生時代に他の学生と比較して、自分は研究向いてないのかなと思ったり」と身近なエピソードもお話いただいて、ぐいぐい話に引き込まれていきました。なかでも印象的だった点は、これまでの経歴で、ライフイベント、起業、就職、NPO法人と、複数の軸が同時並行で成立していること。まるでライブのタイムテーブルのようです(笑)。枠にとらわれない行動力&エネルギッシュなところが、岡島さんならではの魅力・強みだと感じます。

・人工流れ星

人工衛星から「つぶつぶ」を振りまく→大気圏に突入→「つぶつぶ」が光る。これが人工流れ星のメカニズムです。

作ろうとしたきっかけは、学生時代に流星群を見て、こんなことできないかな、と話したことがきっかけだそうです。いまでは、この夢に共感する出資者や仲間が続々と集まっているのだとか。ちなみに、流れ星をつくるための実験方法は、流れ星のもとになる「つぶつぶ」に、真空下で高速ジェットを吹き付けて、光を観察するというもの(映像で見てもすごい明るさです!)。人工流れ星プロジェクトでは、任意の条件で流れ星を発生させ観察することができるため、基礎研究分野にも大きく貢献できると考えられています。

・グループディスカッション(おやつと飲み物を囲みながらの質問会になりました)

Q. 事業のお金は?

A. バイトしながら研究費を貯めて、大学の共同研究で実験した。ベンチャーキャピタルは利用していない。

Q. 子供がいて良かったこと?

A. 100%仕事ができなくなる=思い悩むことが中断されるので精神面でよい

Q. 自分でやりたいことをやるために、必要なことってなんでしょう?

A. 発信することと(=仲間を見つけること)。特に具体的に発信すること!できないっ、助けてっ、ていう人が一番強い。

などなど。みなさん、思い思いに質問をして、あっという間に時間が経ってしまいました。

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人工流れ星に限らず、最新宇宙ビジネスのお話を伺って、受講生一同ワクワクの一日でした。ありがとうございました。

(御茶ノ水第6期塾生:山崎杏子)

第5回講義

講演者: 井上智広氏(NHK制作局 科学環境番組部 チーフ・プロデューサー)

日時:2016年9月24日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 523会議室

講演題目:「博士課程からNHK科学番組プロデューサーへ」

東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻修士課程修了。修士(理学)。

同博士課程中退。NHK入局。福井放送局に着任し,地震防災・原子力・環境問題等の番組を制作。東京・科学環境番組部に配属。これまでに「科学大好き土よう塾」,「サイエンスZERO」、「MEGAQUAKE 巨大地震」第1シリーズ、「宇宙の渚」などを経て「ためしてガッテン」制作班に所属。現在はチーフ・プロデューサーとして活躍中。

科新塾御茶ノ水・第6期は9月24日(土)に第5回講義を行いました。今回は、NHK制作局の井上智広氏をお招きし、「博士課程からNHK科学番組プロデューサーへ」というテーマでご講演いただきました。聴講者も塾生約20名と大盛況でした。前半のご講演、後半のディスカッションとともに、多くの笑いあり深く考えさせられる議論が行われました。

前半の講義では、科学者を「シェフ」に例えて、科学を伝えるためには何が必要だろうか、科学とはそもそも何だろうか、など本質的かつ根本的な問いについて、これまでの井上氏のご経験や制作事例を交えながらご講演していただきました。番組が放映されるまでの制作プロセスは研究者の研究活動もしかり、シェフの料理の作成プロセスにもほとんど共通しており、自身の研究活動を見返りながら楽しく聴くことができました。例えば、国内でもっとも人気ある科学番組の1つである「ためしてガッテン」は、面白い研究の紹介や単なる情報番組ではなく、その現象や効果に対する「なぜ」を知ることを追求していると井上氏は言います。これは、視聴者が満足する情報だけでなく、本当に伝えたいこととしてメッセージ性を添えることで、制作者と視聴者の双方コミュニケーションを可能とし、視聴者におのずと伝わることを意図したものです。井上氏の1時間半にわたるご講演は、上記以外にも貴重な刺激と多くのヒントを私たちに与えてくださいました。自分の考える「科学」とはなにか、を追及していきたいと感じました。

後半のグループワークでは、『NHKスペシャルの企画書を作ろう!』ということで、事前に準備してきた各人のアイデアからチーム内で一つを選び、それらを練り上げ企画書を作成しました。最後に、全体で発表しあい、井上氏から過去の企画書に挙げられた事例から多くのアドバイスを頂きました。その中でも、番組のタイトルに対する井上氏の指摘が強く印象に残っています。ある班で発表された遺伝子操作・治療に関する発表は、以前NHKスペシャルでも類似したテーマで取り上げたことがありました。そのときの推敲されたタイトルと今回発表した際のタイトルが違うだけで、面白そう!もっと聞いてみたい!と思う気持ちや興味が大きく異なるということです。人にアイデアを伝えるために必要なエッセンスを感じることができました。

講義後の懇親会では、井上氏を囲い活発な議論が絶えず行われました。撮影現場の舞台裏に関する質問など、普段聞けないような面白エピソードや大変だったことなど、多岐にわたる質問をすることができ、非常に貴重な時間を過ごすことができました。参加してくださった方々、有難うございました。

(御茶ノ水第6期塾生 山崎貴大)

第4回講義 中之島・御茶ノ水 合同サマースクール

<1日目>8月20日(大阪大学中之島センター)

13:30 自己紹介

14:45 ディスカッション(円座形式)

16:30 片付け・移動

17:00 懇親会(大阪大学中之島センター横にあるルミエールにて,懇親会費3000円)

<2日目>8月21日(鶴見緑地公園バーベキュー場)

11:00 バーベキュー

16:00 青空サイエンス

1日目: グループワーク

サマースクールの1日目は、御茶ノ水校から7名が参加し、グループワークを行いました。前半は中之島校の方々との自己紹介タイム。御茶ノ水校の方には中之島校の方々の自己紹介パンフレットが配布され、中之島校の方々には私たち御茶ノ水校の方々のパンフレットが配布されました。QRコードだけの自己紹介パンフレットや、人生ゲーム風に仕立てたものなど、皆さん様々な面白いパンフレットを作成されていたこともあり、話が尽きず、時間がとても短く感じられました。

一通り自己紹介が終わり、中之島校・御茶ノ水校の皆さんそれぞれが打ち解けた後は、いくつかのテーマについて全員でディスカッションを行いました。話すテーマと話の進行役は “大きなサイコロ” を振ることによって決めるというルールだったこと、そして、皆さん一人一人のバックグランドの違いから、会場は大いに盛り上がりました。

懇親会の後も、有志の方たちは2次会、3次会まで語り明かし、親睦を深めることが出来ました。

2日目: バーベキュー・青空サイエンス

サマースクールの2日目は、御茶ノ水校からは9名が参加し、中之島校の方々の顔ぶれも1日目とは少し入れ替わり、初日より大人数でバーベキューと青空サイエンスを楽しみました。この日は雲一つない快晴に恵まれ、少し暑かったですが、冷たい飲み物を片手に話に花が咲きました。

アルコールも回ってきたころ、 “ドクターサイエンスしろう博士” を先頭に公園の広場に繰り出し、“浮力” や “片栗粉を使ったダイラタンシー” ・ “断熱膨張による雲の発生” の実演などを行い、多くの子ども連れの方々に身近な科学を体験していただくことが出来ました。特に、私たち博士を目指す学生にとって、専門家と話す機会はふんだんにありますが、小さな子どもたちに対して科学を伝えるという機会はあまりなく、貴重な経験をすることが出来ました。

(御茶ノ水第6期塾生 加藤 孝信)

第3回講義

講演者: 對馬哲平氏(エンジニア、阪大卒、科新塾OB)

日時:2016年7月23日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 524会議室

講演題目:「大企業で革新的な商品開発をする」

科新塾御茶ノ水・第6期は7月23日に第3回講義を行いました。大阪大学を卒業後大手メーカーでエンジニアとしてご活躍されている對馬哲平様をお招きし、「大企業で革新的な商品開発をする」という題目でご講義いただきました。

前半の講義では對馬さんのこれまでの生い立ちから始まり、大手メーカーとベンチャー企業の比較も交えながら、なぜこのキャリアパスを選んだのか、そしていかにして入社後すぐに革新的なヒット商品を生み出すことが出来たのかについてお話いただきました。對馬さんは入社後、社内ベンチャーを支援するスタートアップオーディションを勝ち抜かれ、自分のアイデアを形にするべくプロジェクトをスタートされました。その後クラウドファンディングで多くの支持を集め、実際に製品化されヒット商品となった今は大手量販店などからの取り扱いの交渉が忙しく、嬉しい悲鳴をあげているとの事でした。「ずっとガジェットが好きで、作る側になりたかった」という熱い想いから生まれたデバイスを私たちも実際に見せていただき、その想いを感じ取ることが出来ました。

質疑応答の時間でも非常に盛り上がり、「何をやるにしても、好きだという情熱が一番大事だ」というメッセージをいただき、これからの進路を考えるにあたって非常に参考になる有意義なお話を伺うことができました。

後半のグループワークでは実際に新しい商品のアイデア出しを行い、グループ内で1つの案をブラッシュアップし、企画案を作成しました。その後全体で発表し合い、對馬さんからのフィードバックをいただきました。商品開発を行う際にはその案が実現可能か、という現実性も重要ですが對馬さんはそれよりも「好き」という情熱から始まっているかどうかを非常に大切にされており、各グループからそれぞれの情熱が込められたアイデアが出てきて非常に有意義なワークになりました。

講義後の懇親会では、對馬さんを囲んで活発な議論が行われました。商品開発の舞台裏など、普段なかなか聞けないようなお話を伺うことができ、これからのキャリア選択を考えるにあたって非常に勇気付けられる会となりました。参加してくださった皆様、誠に有難うございました。

(御茶ノ水第6期塾生 松浦 恭兵)

第2回講義

講演者: 高橋修一郎氏(株式会社リバネス 代表取締役社長COO)

東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(生命科学)。設立時からリバネスに参画し、教材開発事業やアグリ事業の立ち上げを行う。大学院修了後は東京大学教員として研究活動を続ける一方でリバネスの研究所を立ち上げ、研究開発事業の基盤を構築した。さらに独自の研究助成「リバネス研究費」のビジネスモデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだオープンイノベーション・プロジェクトを数多く仕掛ける。2010年より代表取締役に就任。

日時:2016年6月25日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 524会議室

講演題目:「科学技術を軸に新たなビジネスを生み出す」

科新塾御茶ノ水・第6期は6月25日に第2回講義を行いました。塾生20名が参加し、大盛況の中終了しました。第2回講義は、リバネス代表取締役社長の高橋修一郎様より「科学技術を軸に新たなビジネスを生み出す」というテーマでご講演いただきました。

前半の講義では、日本初の科学実験教室を行う会社であるリバネスを起業した経緯や立ち上げ当初の苦労、そして会社を軌道に乗せていくまでのプロセスを実際の事業例も交えながらわかりやすくお話いただきました。また、リバネス研究費の考案は、会社に初めて利益が出た際にそのお金の使い道を考えたことがきっかけとなったことを知り、目先の楽しみ(=飲み会など)のためにすぐに使ってしまうのではなく、可能性のあるもの(=面白い研究をしている研究者)に投資していこうとする姿勢に感銘を受けました。講義全体を通して感じたのは、元々全員理系の研究者集団からスタートしたリバネスが、社員一人ひとりの問題意識(=Question)と情熱(=Passion)を大切にすることで様々な事業を生み出し成功へとつなげていくという、社員の成長を軸に会社経営をしていることでした。これは「Leave a nest(=巣立つ)」という社名にもその理念が表れています。会社の枠に収まらない多様で主体的な人材の育成に努めることは、会社・株主の利益や「会社」という存在そのものではなく「人」を重視するという意味で、広く社会で活躍していく強い「個」を生み出すことになり、結果として会社を発展させることに繋がるのだろうと思いました。

講義後の質問では、「学業と会社の両立はどうやりくりすればよいか」「会社が大きくなるにしたがって『リバネスで何かをしたい』のではなく『入ることが目的』にならないか」など多くの質問が寄せられ、会社の価値について考えさせられました。

後半のグループワークの前に、前日に起きたイギリスのEU離脱について、河田先生から塾生たちにお話がありました。印象的だったのは、河田先生がまず「離脱」と「残留」のどちらを選ぶかで塾生に挙手を求めた後、「それとは反対の立場になって」意見を述べさせた点です。多くの塾生が少し困惑していたようでした。自分の中で意見を構築した後にそれと反対の意見を正当化しようとするのは非常に難しいことでしたが、双方の意見を吟味するいい機会となり、また最初の自分の意見が安易な理由に基づくものであることも同時に痛感させられました。

グループワークは前半の講義を受けて自分なりのQuestionとPassionを考えるという内容で、普段とは異なり円になってグループを作るのではなく、「個」を意識した個別形式で行いました。教育格差や人種間の格差など一人ひとりのQuestionとPassionが述べられ、熱のこもった意見や個性的な意見に塾生たちは真剣に耳を傾けていました。その後、「Questionを解決するために必要なこと」や「解決した後に社会はどう変わるか」についても一人一人が考えたのですが、時間切れとなり発表することなく講義は終了。名残惜しい幕切れとなりました。

懇親会も多くの方にご参加いただき、高橋様への質問やEU離脱問題など、活発な意見交換が絶えず行われました。第6期の科学者維新塾・御茶の水は第2回講義も無事に終えることができました。初参加の方も見られ、今回も充実した会となりました。参加してくださった方々、ありがとうございました。

(塾頭:鯉沼 宏章)

第1回講義

グループワーク:「夢と博士」

講演者:河田 聡 (科学者維新塾塾長、大阪大学教授)

理化学研究所主任研究員、大阪大学教授、阪大フォトニクスセンター長。専門は応用物理(ナノフォトニクス)。 1974年大阪大学卒業、79年同博士課程修了、カリフォルニア大学ポスドクなどを経て1993年より阪大教授。2003年ラマン顕微鏡メーカー、ナノ フォトン(株)を創業。光(フォトン)とナノ構造の相互作用の研究である「ナノフォトニクス」の世界的パイオニア。ギネスブックに世界で最小のレーザー造 形物が写真入りで掲載。紫綬褒章、文部科学大臣表彰、島津賞、市村学術賞等。 著書:「論文・プレゼンの科学」「科学計測のためのデータ処理入門」

日時:2016年5月28日(土) 14:00-17:00

場所:日本大学 理工学部5号館 524会議室

講演題目:「私が科新塾を始めた理由」

科新塾御茶ノ水・第6期は5月28日に第1回講義を行いました。塾生約25名が参加し、大盛況の中終了しました。第1回講義は、塾長の河田聡先生より「私が科新塾を始めた理由」というテーマでご講演いただきました。

河田先生は昨今の産業界の不正と日本の論文数や特許出願数の減少を取り上げ、これらに「新しいものを生み出せない」という共通する問題があると述べました。先生はその原因を日本の会社や大学の組織の古さ(=歳を取り過ぎたこと)にあると考え、チャールズ・ダーウィンやリチャード・ドーキンスといった進化生物学者の言葉を引用し、日本は世代交代して社会の変化に対応しなければならないと説きました。そこで、かつて脱藩浪人である坂本龍馬が日本を改革したように、何にも縛られないポスドク・博士にこそ年老いた日本を救う可能性があると考え、緒方洪庵の適塾をモデルに科学者維新塾を立ち上げることにしたのです。後半は、適塾の卒業生である福沢諭吉の「文明論之概略」を取り上げ、組織や国に依存し独立心のない現在の日本の博士に警鐘を鳴らし、博士とは幅広い知識を持つ異端妄説家で、国を支えて国に頼らない存在となるべきであるとエールをいただきました。修士課程や博士課程、ポスドクの参加者が多い中、奨学金や学振等に頼らず独立して稼ぐべきだとのお言葉は印象的で、国に頼らない生き方をしたいと強く感じさせるものでした。

グループワークでは、参加に将来の夢や博士でやりたいこと、できなかったことを述べていただきました。中には「南極という極限環境で生きるコケを研究したい」などユニークな夢をもつ人もいて、個性的な参加者たちに会場は盛り上がりました。

懇親会も多くの方にご参加いただき、活発な議論が絶えず行われました。第6期を迎える科学者維新塾・御茶の水は非常に活発な第1回講義を終えることができました。今後の講義が楽しみでなりません。

(塾頭:鯉沼 宏章)