0.1. オノマトペの意味の構成要素(本シソーラスの作り方)
0.2. オノマトペの鋳型と意味の対応関係(補足情報)
(See also References/参考文献も参照)
構想論文(2016)
Preliminary report/初期報告(June 2013)
0.1. オノマトペの意味の構成要素
本シソーラスは、世の中に対する私たちの「百科事典的知識」に光を当てる「フレーム意味論」(Fillmore 1982, etc.)の考え方をヒントにしています。各オノマトペが描写する物事の種類に着目し、その種類ごとに、オノマトペの理解に必要な視聴覚情報・言語情報を提供するものです。以下、各タイプのオノマトペが典型的に持つ意味要素と、その提示に有効と思われる[→メディア]をまとめてみます。(まずは、三上(2007)の「基本オノマトペ」70語から始めることにしました。)尚、このウェブサイトで示すコロケーション情報は『青空文庫』などのコーパスに基づいています。
1. Sound/音
1.1. Animate sound/声
a) 声には、
[→音声]
b) その発声源として人間や動物がいる。
[→画像、動画]
c) 特に人間の場合は、発声の理由(特定の感情など)がある。
[→シナリオ、動画、アニメーション、名詞コロケーション]
例)「けろけろ」:b) 蛙
「けらけら」:b) 人、c) 面白いできごと
1.2. Inanimate sound/物音
a) 物音には、
[→音声]
b) それを生じさせる接触事象(打撃や摩擦)がある。
[→動画、アニメーション、シナリオ]
c) その接触事象には、少なくとも二つの物体(例:叩き手と叩かれる物)が関わり、その接触は特定の方法・道具で行われる。
[→画像、動画、アニメーション]
d) 接触の結果、物体に特定の変化が生ずることがある。
[→画像]
例)「ぼきぼき」:b) 枝などを折る行為、c) 人と枝など、d) 枝が折れる
2. Motion/移動
2.1. Step/足取り
a) 足取りは、
[→動画、アニメーション、動詞コロケーション]
b) 特定の音や
[→音声]
c) 体の動かし方を伴う。
[→動画、アニメーション]
d) 移動者が特定の心情を持っていることがある。
[→動画、アニメーション、シナリオ、コロケーション]
e) また、移動場所が特定されることがある。
例)「すごすご」:c) 足早、d) 気まずい、恥ずかしい、e) 人前から人目につかない場所へ
2.2. Movement/動き
a) 動き方には、
[→動画、アニメーション、動詞コロケーション]
b) 特定の移動経路や
[→画像、動画、アニメーション、動詞コロケーション]
c) 移動者の
[→画像]
d) 心情が伴うことがある。
[→動画、アニメーション、シナリオ]
e) 移動の基準となる物体や場所があることがある。
[→画像]
例)「うろうろ」:b) 行ったり来たり、c) 人、d) ためらいや心配、e) ある程度広い場所
3. Vision/視覚
例)「きらきら」:
4. Touch/触覚
例)「さらさら」:
5. Internal experience/内的経験
5.1. Pain/痛み
a) 痛みには、
[→比喩などによる説明]
b) 原因(物体かできごと)がある。
[→画像、アニメーション/動画、シナリオ]
b') それには病名・症状名が付いていることがある。
[→名詞コロケーション、シナリオ]
c) 身体部位が特定される場合がある。
[→名詞コロケーション、画像]
d) 痛みの経験者は、
[→画像]
e) 特定の反応(例:感情、表情)を示すことがある。
[→アニメーション、動画、シナリオ]
例)「ちくちく」:a) 「刺すような」、b) 棘状の物体の集まり、毛糸など、b') 痒み、c) 皮膚(首など)、d) 人、e) 不快感
「がんがん」:a) 「鐘が鳴り響くような」「頭が割れそうな」、b) 大きな音、b') 二日酔い、c) 頭、d) 人、e) 強い苦痛
5.2. Emotion/感情
a) 感情には、
[→比喩などによる説明]
b) 特定の原因事象があり、
[→動画、アニメーション、シナリオ]
c) 特定の対象(人、物事)に向けられる。
[→画像]
d) 感情の結果として、感情の経験者は、
[→画像]
e) 特定の反応(例:表情、行為、身体感覚、身体部位反応)を示すことがある。
[→動画、アニメーション、シナリオ、名詞コロケーション]
例)「わくわく」:a) 喜びによる胸の高鳴り、b) 近い将来の楽しみな予定、c) 近い将来の楽しみな予定(=b)、d) 人、e) 心臓における鼓動の高鳴り、笑顔
「うじうじ」:b) 失敗など、c) 失敗など(=b)、d) 人、e) 俯き、動きの少なさ、不満げな表情
0.2. オノマトペの鋳型と意味の対応関係
日本語のオノマトペには典型的な鋳型(テンプレート)があり、それぞれに意味的傾向があります。その多くは時間に関するものです。アクセントについては東京方言です。尚、この記述は「構文形態論」(Booij 2010, etc.)を用いた記述に根差しています。
1. 重複形
1.1. 頭高アクセント:反復、継続、複数
例)憧れの先輩の笑顔にどきどきした。
1.2. 平板アクセント:状態
例)憧れの先輩の笑顔にどきどきだった。(形容詞的)
2. 語尾形
2.1. 促音語尾形:瞬間、勢いの良さ
例)憧れの先輩の笑顔にどきっとした。
2.2. 撥音語尾形:瞬間、残響
例)憧れの先輩の笑顔に心臓がどきんとした。
2.3. 「り」語尾形:瞬間、完了、静けさ、文語性
例)先生の指摘にどきりとした。
3. ずんぐり/むっくり形:強調、様態〜結果、一般副詞的
例)憧れの先輩の笑顔にどっきりした。
4. 古い形
例)さっさ、はっし、ちょっくら、ほんわか
5. 強調形
例)憧れの先輩の笑顔にどっきーんとした。
憧れの先輩の笑顔にどきんどきんだった。(形容詞的)