1.第2ステップ:発生源・困難個所対策
第2ステップは、第1ステップで摘出したゴミ・汚れ・漏れなどの発生源と清掃・給油・点検の困難個所(やりにくいところ)の対策を行い、強制劣化を防止するとともに、清掃・給油・点検に要する時間を短縮して、保全性の向上を図ることを目的としています。この活動を通して、次のような考え方や技能を身につけることを目指しています。
発生源・困難個所という問題の根源を掘り下げる対策をすることです。これは「予防する」あるいは「未然に防ぐ」という、TPMの基本的な考え方に則った行動そのもので、大切な考え方です
この活動を通してオペレーターが設備を改善するという能力を身につけ、さらに高いレベルの改善へと能力を伸ばしていきます
今まで活用されていなかったオペレーターの能力を開発して、それを仕事の中に生かします。たとえば、設備故障や品質不良をサークル自身の問題として取り上げて改善することです
発生源・困難個所対策のねらいをまとめると、次のとおりです。
(1)設備面
ゴミ・汚れ・漏れなどの発生源に対策して強制劣化を防止する
清掃・給油・点検の困難個所に対策を講じて、やりやすく、しかも短時間でできるように改善して、保全性を向上する
(2)人の面
改善の芽を育てる
改善の考え方・進め方を学び、改善の楽しみを味わう
2.発生源・困難個所対策の進め方
第2ステップ:発生源・困難個所対策の進め方の例を、次に説明します。
(1)基礎教育を受ける
以下のようなテーマで発生源・困難個所対策の教育を受ける。
発生源対策とは
困難個所対策とは
改善活動と発生源対策の進め方.4.工具の使い方.5.改善と安全など
(2)活動計画の作成
活動計画を作成する。
第1ステップで抽出した発生源・困難個所の現場確認を行う
目標の設定(数値目標)
担当と日程を決める
改善の基本構想を決める
(3)改善活動の準備
発生源・困難個所の改善を実施するにあたり、材料・道具・改善場所を準備する。
必要な道具を揃える
鉄板・配管など、使用する材料を準備する
(4)発生源対策の実施
まず発生源対策を実施する。発生源対策とは、ゴミ・汚れ・漏れの原因を突き止め、それを改善することである。改善は以下の手順で行う。
発生源を絶つ。どうしても止まらなければ2、3へと進める
量・範囲を極小化する(局所カバー)
清掃しやすくする
(5)困難個所対策の実施
困難個所対策を実施する。困難個所対策とは、やりにくい、時間がかかるというところをやりやすく、しかも短時間でできるように改善することである。
清掃困難個所
給油困難個所
点検困難個所を対象に行う。
(6)対策実施後のチェック
発生源・困難個所対策の実施後、その効果をチェックする。
効果が不十分なときには改善を繰り返す
発生源で止められない場合は、第2の手段(量や範囲を減らす)、第3の手段(清掃しやすくする)を考える(図・5)
図・5 飛散防止カバーの例
(7)仮基準の修正、追加・更新
発生源・困難個所対策を実施した後、その効果を確かめ
て第1ステップで作成した仮基準を更新する。
(8)活動データの整理と活動板の整備
発生源・困難個所対策の活動データを整理・集計して活動板に表示する。
発生源・困難個所と対策計画・効果度一覧表
発生源・困難個所マップ
発生源・困難個所対策事例
ワンポイントレッスン
仮基準書
第2ステップのトピックス
(9)自主診断の実施と不具合修正
(10)トップ診断の受診
不合格→(4)へ戻る 合格→(11)へ
(11)トップ診断指摘事項の実施
トップ診断で指摘されたところの対策を実施する。
(12)第3ステップ:自主保全仮基準の作成へ
3.発生源対策の進め方
発生源対策とはゴミ・汚れ・漏れの発生源を把握して、それを改善することです。
第1ステップで、すでに把握されているものを1件ずつ対策していきます。発生源を絶って止まるものもあれば、切粉・切削水の飛散のように完全には止められないものもあります。発生源が完全に止められないときの最後の手段は「清掃する」ということになります。
発生源対策の進め方のまとめを表・4に示します。
表・4 発生源対策の進め方
4.局所(極小)カバー
発生源をどうしても絶つことができない場合、汚れが広がらないように飛散防止カバーを取り付けます。
発生源のごく近くに小さなカバーを取り付ければ、汚れる範囲もそれだけ小さな面積で済みます。これが局所・極小の考え方で、このカバーを局所カバーと呼びます。小さな局所カバーが大きな効果を発揮します。
ただし、局所カバーをつくるときに次の3点をよく確認してください。
1.切削水のかけ方や量は適切か(必要なとき、必要な量を、必要な部分に)
2.飛散の方向・量・速度はどうか
3.作業性や安全性に問題はないか
5.困難個所対策の進め方
困難個所対策とは、「清掃がやりにくい」「給油がやりにくい」「点検がやりにくい」「時間がかかる」というような個所をやりやすく改善することです。
たとえば、
架台床下の奥深いところにある空圧3点セットを、架台前面に移設して清掃・給油・点検を行いやすくする
カバーを外さないと点検できないVベルトのカバーに、点検窓をつけて点検しやすくする
カバーを短時間で外せるように工夫する・.カバーを外さなくても点検できる工夫をする
などです。
作業方法、作業姿勢が少しでもラクに、作業時間が短くなるように工夫することが大切です。
6.発生源・困難個所対策の効果測定
第2ステップ:発生源・困難個所対策では、第1ステップの復元・改善から、原因系の改善へと活動が進んできます。効果測定も、「現場・現物・現象」でつかんでいきます。効果測定の例を次にあげます。
(1)定量的な効果
1)活動をしながら見える効果
発生源
ゴミ、切屑の飛散削減(重量、体積、頻度)・床面飛散削減(面積、重量、体積)
クーラント、油漏れ、空気漏れ、水漏れ、粉体削減(体積、面積)
ゴミの除去低減(重量、体積、回数)
ピット内の汚水・油の浸入低減(体積、面積)
困難個所
清掃のしやすさ「配管・配線・機器の床上げ、オイルパン・カバーの撤去、ワンタッチ化など」(時間、動作、周期、頻度、回数)
給油・点検部位のスルー化(時間、動作)・.集中化(個所、時間、動作)・.安全化(動作、危険度)
・.定置・定量・定点管理(量、面積、体積、個数)・.目で見る管理(時間、動作、誤認識、わかりやすさ)
2)活動板への表示
清掃時間の短縮、点検時間の短縮、給油時間の短縮、危険部位の改善
チョコ停の低減・故障の低減
自サークルで行った改善の件数
重大な欠陥の発見事例件数
ワンポイントレッスン作成件数
局所カバー、極小化改善件数
(2)定性的な効果
清掃回数が減り、清掃点検がラクになり管理しやすい設備になった
不具合を見逃さず保全性がよくなった
改善が自分でできるようになった
など
(解説終わり)