1.エフとは
エフ(絵符)とは、いわば「荷札」のことです。どこにどのような不具合があるのか、その場所と処置内容を忘れないために、また不具合の処置漏れを防ぐために、不具合個所に日付や発見した人の名前、不具合の内容を記入して取り付けることを基本としています。そして、不具合を見つけることを「エフ付け」といいます。つまり、エフは不具合の「目で見る管理」の道具であり、不具合の「見える化」の役割を担っています。
2.不具合とは
エフは主として、設備の不具合に付けます。不具合を整理すると、表・1のようになります。
表・1 不具合とは
3.エフの種類
(1)白エフ
白エフは、もっとも多く付けられるエフとして、おもに自主保全や基本条件の整備活動の中で使用されるエフです(図・1)。白エフを付ける不具合は、
1)職場の整理・整頓・清掃の3Sに対しての不具合
2)設備の基本条件(清掃・給油・増締め)に対する不具合
3)業・業務などの内容のやりにくさなどに対する不具合
4)設備の機能的不具合
5)作業・業務標準に対する不具合
といったものがあげられます。
(2)赤エフ
赤エフは、
1)現場サークルだけでは処置できないもの
2)他部門に依頼しなければ処置できないもの
3)自部門と他部門といくつかの部門にまたがり、他部門と協力しないと処置できないもの
などについて白エフと区別するために付けます。ある不具合が「赤エフ」か「白エフ」の判断はオペレーターが行わず、必ず職場の上司に確認するようにしましょう。
設備に赤エフをつけるのは、工法や機構の改善・改良に及んでしまう場合です。その中身は、高度なもの(多大な費用・時間を要する)から、比較的短期間で対策できる(発生源・困難個所対策で改善の準備が可能)ものまでが赤エフの対象となります。
図・1 白エフ(左)と赤エフ
(3)他のエフ
安全・衛生用、事務間接用、環境用などの用途に応じて、黄エフや緑エフを用いることもあります。
4.エフ付けの手順
(1)設備が止まっているとき
設備が止まっているときには、
1)五感を働かせて外観を中心にエフ付けする
2)清掃してエフ付けする
3)分解してエフ付けする
4)分解したものを清掃してエフ付けする
という手順で不具合を見つけます。必ず1の手順の後に清掃をしてください。清掃から始めてしまうと、漏れや飛散個所がわからなくなってしまうことがあります。ただ、不具合が見つけられないほどホコリ、屑、油で汚れている場合は、清掃を先に行うことはいうまでもありません。
(2)設備が動いているとき
設備が動いているときは、
1)外観でエフ付けをする
2)設備を停止して安全確認をしてから、カバーを外してエフ付けをする
という手順で行います。そうすることで、振動、異音、発熱の状態や作業上の問題点などが見つけられます。
5.エフの整理
エフを取る前の準備として、付けたエフの整理をする必要があります。表・2のようなエフ付け・エフ取り一覧表を作成します。赤エフは保全部門への依頼が多くなるので、必ず依頼部門の担当者と連携を取りながらエフ取り予定日を明確にして、そのつど確認をしていくことが必要となります。
表・2 エフ付け・エフ取り一覧表
6.エフ取り
エフ付けして摘出した不具合は、必ず処置することが原則です。これをエフ取りといいます。
付けたエフをそのままにしておくことは職場・設備の不具合を放置していることになり、そのままの状態では設備の停止や品質不良、作業効率の低下につながってきます。
そこで、エフ付けしてその場で処置のできるものはすぐ取るようにします。また、時間のかかるものについては、エフ取りの計画を明確にして、なるべく短期間で処置・対策ができるようにしておきましょう。
1度エフ取りをした個所は引き続き観察をしていく必要があります。これは処置や改善方法が適切であったかどうかを確認するために重要なことです。もし、処置後に再発するようであれば、処置が適切ではなかったことになります。エフの処置は「再発防止」を念頭に置くことが大事です。このように再発した個所へは「繰返しエフ付け」を実施することになります。
7.白エフ取りに必要なスキル
白エフを取るに当たっては、オペレーターは不具合を処置するスキルを身につけておかなければなりません。表・3はその習得方法の代表例です。こうした機会を積極的に利用して、白エフ取りのスキルを身につけるようにしましょう。
表・3 エフ取りスキルの習得方法(代表例)
8.エフ付けとエフ取りは継続する
エフ付け、エフ取りの活動は、自主保全だけではなく、あらゆることに適用できる行動様式です。上手に会社の業務の中に組み込むと、成果が期待できます。自主保全の第1ステップだけの活動ではないということを、しっかりと理解して継続するようにしましょう。
9.エフによるマネジメント
エフを活用してマネジメントできるのは、次のとおりです。
(1)エフ付けマップ
エフ付けマップは職場や設備のどの部分に不具合が多いのかがひと目でわかり、どのような種類の不具合がどの場所に集中しているかの影響度を確認するためにも役立ちます(図・2)。また、エフ取りの際にはマップ上に記したエフ付け個所にエフ取りの印を付けていくことで、エフ処置の進捗もわかるようになります。
職場であれば全体のレイアウト図やブロック図を、設備であれば全体の平面図や対象部位の図やイラスト、写真などを利用します。とくに図やイラストの場合は立体的に描くとわかりやすいでしょう。また、大きな設備の場合は部位ごとやブロックごとに分けて作成するのが効果的です。
図・2 エフ付けマップの例(清掃・給油・点検、発生源)
(2)エフ付け・エフ取りグラフ
「エフ付け・エフ取りグラフ」は、サークルがどれだけ不具合の発見ができるようになったか、設備にどれだけ不具合点があったかを、付けたエフの枚数で評価します。横軸を月、縦軸をエフ付け・エフ取りの枚数として、その推移を表します(図・3)。
図・3 エフ付け・エフ取りグラフ
(3)不具合層別グラフ
エフを不具合の内容別に区分して、その枚数を「不具合層別グラフ」に表します。たとえば内容の層別であれば、「設備の微欠陥」「汚れ・漏れの発生源」「清掃・給油・点検の困難個所」「不安全個所」といった項目に分けます(図・4)。こうしたグラフを活用することで、設備の問題点の傾向がわかります。
図・4 不具合層別グラフ
(解説終わり)