カポエイラ・ゴスペル

Capoeira Gospel

数年前にプロテスタント教会の布教活動を目的とした【Capoeira Gospel】(カポエイラ・ゴスペル)はカポエイラ界内外から文化の盗用であると問題提起され、物議を醸しました。ポルトガル語の発音は「ゴースペウ」の方が近いですが、本サイトでは日本で一般的な「ゴスペル」と表記します。

ここではカポエイラ・ゴスペルの特徴を簡単に紹介し、懸念される事柄についての考察をまとめてみます

カポエイラ・ゴスペとは O que é capoeira gospel?

ひとつの旗の下に集まったスタイルではなく、「福音派・カポエイラ」(Capoeira Evangélica)または「キリシタン・カポエイラ」(Capoeira Cristã)とも呼ばれ、アフロブラジル宗教であるウンバンダ(Umbanda)やカンドンブレ(Candomblé)の要素をカポエイラの歌から排除したり、代わりにゴスペル曲が取り入れられたりするのが《カポエイラ・ゴスペ最大の特徴です。プロテスタント教会に改宗したカポエイラのメストリ(師範)数人が各自で団体を立ち上げ、1990年前後に布教活動の一環としてカポエイラを取り入れたのが始まりだったようです

懸念される事柄 Preocupações

カポエイラからアフロブラジル宗教の要素を排除して、プロテスタント教会布教ためにカポエイラを使うのは文化の盗用であり、ブラジルで迫害の歴史を乗り越えてきた黒人の歴史やルーツそのものの否定につながるのが一番の懸念されています。

ブラジル人の4人に1人は福音派であるといわれており(ちなみにブラジルの人口は約3億人)、白人至上主義に近い思想やジェンダー関連の取り組みに反対する強固な姿勢で知られる福音系政党の議員も多く、カポエイラの白人化を促進させるためにアフロ文化に対する規制も立案・決議されかねません。

近年、サルヴァドール市の郷土料理【acarajé】(アカラジェ)がカンドンブレ捧げ物でもあるため、福音派の売子らは《ジーザスのコロッケ》の意味の【bolinho de Jesus】に名称を変えて売り始め、それは明らかな文化の盗用であると各メディアが報道しました。その流れを止めさせるために法的措置まで取られましたが、カポエイラからアフロ文化を排除する流れがこれ以上広まらず、限定的であるように願ってやみません。

参考資料 Referências