過去の集会情報

アリをめぐる生物種間の相互作用2020(JIUSSI共催)

日時:3/25(木),14:15—16:00

主催者: 上田昇平 (大阪府立大学),北條賢 (関西学院大学)


アリの栄養状態がシジミチョウとの共生に与える影響

◯松本恭士 1・下地博之 1・北條賢 1(1関西学院大・理工)

真社会性昆虫であるアリは,多くの植物や昆虫と相利共生関係を結ぶことが知られており,共生相手を防衛 することで相手から炭水化物やアミノ酸に富む栄養報酬を受け取っている.共生相手が提供する栄養報酬の 価値はアリの栄養状態に依存して変動し,コロニーの適応度や共生関係の成立・安定性に影響を与えると予 測されるが,実際に検証した例は少ない.そこで,本研究ではアリの栄養状態がコロニーの適応度と共生関係 に与える影響を明らかにすることを目的に,アミメアリとムラサキシジミの相利共生を用いて飼育実験を行 った.炭水化物とタンパク質の比率が異なる飼料を与えたアミメアリとムラサキシジミ幼虫を共に 4 週間飼 育し,アリの生存率・次世代の生産数・人工飼料への採餌行動・シジミチョウ幼虫への随伴行動を記録し比 較した.その結果、アリの栄養状態に応じてムラサキシジミ幼虫との共生によって得るアリの利益は変動し, 高炭水化物条件ではアリの生存個体数・次世代生産数が増加し,高タンパク質条件では次世代生産数が減少 した.一方,シジミチョウ幼虫に対するアリの随伴個体数は高炭水化物条件下に比べて高タンパク質条件下 で多かった.これらの結果を踏まえ,アリコロニーの短期的な栄養状態の変化がシジミチョウとの共生関係 に与える影響について考察する.


絶滅危惧種キマダラルリツバメの寄主アリ特異性と大阪府個体群の衰亡要因の解明

◯大谷 郁生1、上田 昇平1、乾 陽子2、森地 重博3、平井 規央1 (1.大阪府大院・生命、2.大教大・教養、3.日本鱗翅学会)

 キマダラルリツバメ(以下,本種)は,東北から中国地方にかけて本州の局所に分布し,生息環境である里山林の衰退や発生木の伐採によって各地で個体数を減少させている.本種は,全幼虫期間を樹上のハリブトシリアゲアリ(以下,寄主アリ)の巣内で働きアリに給餌されて発育し,成虫は寄主アリの営巣木から発生する.本種幼虫は,アリ類が巣仲間を認識するために利用する体表炭化水素を用いて寄主アリを騙し,巣内に定着すると考えられるが,この仮説を検証した研究は無い.本研究では,大阪府と京都府の4地点で採集した本種幼虫17個体と寄主アリの4カースト(女王,雄,働きアリ,幼虫)95個体を用いて,両種の体表炭化水素組成比の類似性を検証した.その結果,本種幼虫は孵化直後から寄主アリ幼虫と類似した体表炭化水素組成比を保持することが判明した.本種幼虫は寄主アリ幼虫に化学擬態することで寄主アリへの寄生を可能にしていると考えられる.次に,大阪府の本種記録4地点(現在では分布が確認されていない地点を含む)で本種と樹上性アリ類の分布調査を実施した.その結果,本種成虫が最後に記録された年が古い地点ほど,寄主アリが発見された株の頻度が低くなる傾向が認められた.本種の衰退には調査地における寄主アリの分布頻度が関係すると考えられる.


日本産クチナガオオアブラムシ属とその寄生蜂の寄主特異性と系統的多様化

〇山本哲也1・市野隆雄1,2(1信州大理学部・2信州大山岳研)

一部の植食性昆虫や捕食寄生性昆虫では、寄主植物や寄主昆虫との相互作用だけでなく、それ以外の生物との相互作用も生存において重要である。本研究では、アリと絶対共生関係を結ぶクチナガオオアブラムシ属とアブラムシ寄生蜂を用いて、クチナガオオアブラムシや寄生蜂の寄主特異性や系統的多様化に共生アリが与える影響を評価した。

日本産クチナガオオアブラムシ属のmtDNAと核DNAの一部の領域を用いた分子系統解析によって見いだされた10の遺伝子系統は、それぞれが特定のアリ種に対する特異性を示さなかったものの、すべての系統が主にケアリ属のアリ種と共生していた。続いて、なぜ共生アリ種の大部分をケアリ属が占めているかを明らかにするため、ケアリ属のアリ種とオオアリ属のムネアカオオアリに随伴されたときのコロニーの個体数変動を比較調査した。その結果、ムネアカオオアリ随伴下ではケアリ属に随伴された時と比べて、多くのコロニーが消失することが明らかになった。また、クチナガオオアブラムシの寄生蜂で発見された2つの隠蔽遺伝子系統は、それぞれ異なるアリ亜属に随伴されたアブラムシに対して特異性を示した。これらの結果を踏まえ、共生アリがアブラムシや寄生蜂の寄主特異性や多様化に与える影響について議論する。

集会名:アリをめぐる生物種間の相互作用2019(JISSI共催)

日時:2019年3月26日(火)(大会2日目)18:00-19:30

場所:筑波大学第二エリア 2B/2C/2H棟(K会場)

世話人:上田昇平(大阪府立大)・北條賢(関西学院大)

講演者:中田勝之 (農林水産省北陸農政局)

講演題目:石川県白山国立公園区域内の好蟻性アリヅカムシ類の分布記録 ~特にゴジラツノアリヅカムシ等の再発見について~

講演者:小松貴 (国立科学博物館)

講演題目:アリに寄り添う奇妙なガ類

講演者:矢後勝也 (東京大・総研博)

講演題目:シジミチョウ科幼虫における好蟻性器官の多様性


集会名:アリをめぐる生物種間の相互作用 2017 JIUSSI共催

日時:2017年3月28日(火)(大会2日目)18:00〜19:30

場所:東京農工大学小金井キャンパス講義棟3階L0033室(J会場)

主催者:秋野順治(京都工繊大)・坂本洋典(玉川大)・萩原康夫(昭和大)

講演者:村上貴弘(九大・決断科学センター)

講演題目:福島第一原発周辺のアリに見られる被爆影響評価

講演者:増子恵一(専修大・経営)

講演題目:アリの栄養交換:血リンパ食の自然史

主催者コメント:

いずれも、応動昆でこれまであまり聞く機会がなかった社会性昆虫の側面を30分間じっくりと話していただきます。

終了後は、懇親会も企画しており、大勢のご参集をお待ちしています。

坂本 洋典

公開シンポジウム「昆虫の社会と行動」

2016年9月25日 13:30〜17:30 日本学術会議行動にて

sympo2016

日本昆虫学会第76回大会・第60回日本応用動物昆虫学会大会合同大会(大阪府立大学)小集会

好蟻性生物 集会2016 (JIUSSI 共催)

日時:3月27日(日)18:45−20:15

場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパスB3棟1階119教室(C会場)

世話人:坂本洋典(玉川大)・小松貴(九州大・熱研)

(発表後に演者を囲んで懇親会を予定)

アリに薬物を与えることで身を守るシジミチョウ

北條 賢 (神戸大・院・理)

植物から昆虫にいたるまで、多くの好蟻性生物がアリに蜜用の分泌物を提供し、それらをアリは好んで摂食することが知られている。これらの分泌物には糖やアミノ酸といった成分が含まれているため、好蟻性生物は報酬としてアリに栄養を与えることで相利共生を維持していると考えられてきた。一方で、好蟻性生物の分泌物に関して攻撃的なアリをなだめる効果や、分泌物を摂食したアリが陶酔するといった観察・記載が古くからなされていた。今回我々は好蟻性シジミチョウの一種であるムラサキシジミとアミメアリの相利共生を対象に行動・生理・薬理学的な実験を行い、ムラサキシジミ幼虫の分泌する蜜が単なる「栄養報酬」ではなく、アリの脳内神経伝達物質を介して協力行動を操作する「薬物」として働いていることを報告する。本発表では蜜を介した共生相手の行動操作に関する他の報告例も挙げつつ、相利共生における行動操作の役割を議論したい。

好蟻性甲虫に関する最近の発見

丸山宗利(九州大・博)・小松 貴(九州大・熱研)・島田 拓(アントルーム)

演者らはここ10年ほど、日本はもとより、世界各地で好蟻性昆虫の調査を進めてきた。主要な調査対象は軍隊アリ類であるが、その他のアリについても折々調査を行っている。本講演では、最近アジアで初めて寄主が明らかとなったダエンゴミムシ(Pseudomorphinae亜科)やオニミツギリゾウムシ(Eremoxenini族)、沖縄で発見されたアリに運搬されるための器官を胸部にもつアリヅカムシの一種をはじめ、そのなかでもとくに興味深い種について紹介したい。なお、好蟻性昆虫は昆虫研究者にさえ馴染みの薄い生き物であり、演者らは外国産種を含め、できるだけ和名を付して、その多様性や興味深い生態の普及啓蒙に努めてきた。近年は差別用語(と勝手に解釈されている言葉)を含む和名の使用を控えようという動きもあるが、ごく一部の過敏な世間の反応に研究者が順流する必要は一切なく、それよりも生物の実態に対する和名の表現性や、古くから使われている和名の安定性を重視すべきである。その点についても議論を行いたい。

ニュージーランドにおける好蟻性アリヅカムシの多様性と進化

野村 周平(国立科博)・丸山 宗利(九大総合博)

ニュージーランドは、赤道をはさんで日本列島と対称的な位置にあり、同じ島国であり、陸地面積も似通っていることから、生物相の対比に用いられることが多い。それぞれの好蟻性甲虫相を比較してみると、日本からは、8科87種ほどが知られている(丸山ほか,2013)。一方、ニュージーランドからは、3科21種ほどが知られているにすぎない。しかし、好蟻性のクワガタムシ(Holloceratognathus passaliformis)が知られるなど、独自性が際立っている。

Nomura and Leschen (2015)は、ニュージーランド産ナガアリヅカムシ上族の好蟻性種を検討し、4新属7新種を記載して、6属10種を認めた。これらを、特にホストとの関係に注目して、日本産の好蟻性アリヅカムシと比較したところ、以下のような点が明らかになった。1)好蟻性種(共生者)、宿主はどちらも他系統的である、2)共生者−宿主関係の間には、一対多、多対一のどちらの関係も見られ、一対一関係に限定されない、3)宿主アリは、どちらもヤマアリ亜科、フタフシアリ亜科、ハリアリ亜科の3亜科にまたがっている。

多次元画像ビッグデータを活用した動物学の新展開 (JIUSSI共催)

日時:3月28日 19:00-20:30

場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパスB3棟1階117教室(A会場)

世話人:岡田泰和(東大院・総合文化)・渕側太郎(京大院・農)

懇親会を21時より近隣で予定しています。席の都合上、参加希望者はご連絡をいただけると幸いです(渕側oioitaro@gmail.com)。

趣旨

動物の形態や行動は非常に複雑な要素からなり、しかも環境要因に応じて時々刻々と変化する。そして、アリなどの社会性昆虫のコロニーメンバー間や被食者-捕食者間など、個体間で生じる相互作用がその複雑さを時間的・空間的にさらに高次にしている。このような複雑性をはらむ行動や形態の研究は、シンプルな要素に着目した地道な観察と計測によって大いに発展してきた。しかしながら、近年、高性能化が進むカメラ機器や、コンピュータの画像処理能力の向上によって、膨大な形態・行動データを“複雑なまま”扱えるようになってきた。例えば、アリの自動トラッキングは、複数の個体を何日間も追跡し、活動性の変遷や相互作用まで解析できるようになっている。本集会では、節足動物(アリ、シロアリ、アリグモ)の活動パターンの定量化による個体間相互作用や擬態に関する行動学的研究について講演を依頼している。小集会では、画像解析における創意工夫や苦悩も交えて、こうしたビッグデータの活用性や今後の課題について議論したい。

講演

1. 岡田 泰和(東大院・総合文化)・渕側 太郎(京大院・農)

趣旨説明:多次元画像ビッグデータを活用した動物学の新展開

2. 阿部 真人(国立環境研)・藤岡 春菜(東大院・広域システム)

トラッキングを用いた社会性昆虫の動態と個体間相互作用の解析

3. 菊地 友則(千葉大)・林 叔克(レディング大)・菅原 研(東北学院大)・結城 麻衣(仙台市)・辻 和希(琉球大)

社会性昆虫における集団レベルのリズム活動発現メカニズム

4. 水元 惟暁(京大院・農)

シロアリの構造物形成における種内変異を生み出すメカニズム

5. 橋本 佳明(兵庫県立大/人博)・木村 敏文(兵庫県立大)

君は僕に似ている?—画像解析手法を用いたアリ擬態の研究

第59回日本応用動物昆虫学会(山形大会)小集会

アリをめぐる生物種間の相互作用 2015(JIUSSI共催)

日時:2015年3月27日(木)17:30-19:00

場所:山形大学小白川キャンパス基盤教育3号館333番教室(L会場)

主催者:秋野順治(京都工繊大)・坂本洋典(玉川大)・萩原康夫(昭和大)

真社会性昆虫と関わる昆虫の化学戦術 アリを操るシジミチョウ・ハチを欺くカマキリ

○水野尊文(京工繊大院)

アリやミツバチなどの真社会性昆虫では、社会生活を維持するために化学コミュニケーションが発達しており、フェロモンを始めとするセミオケミカルへの情報依存度が高い。そのような情報交信をもとに真社会性昆虫は多数のコロニーメンバーと協同で採餌やコロニー防衛を行い、他の生物に対して基本的に攻撃的でそれらを寄せ付けない。このような真社会性昆虫の特性を逆手にとり、化学的手段によって身の安全を確保する共生者や真社会性昆虫を捕食する捕食者について2種の生物を取り上げ紹介する。シジミチョウの多くは身を守るため幼虫期にアリと共生関係を持ち、アリと共生するための好蟻性器官が消失する蛹期にもアリとの関係が継続するものもいる。しかし、このような種の蛹期のアリとの共生に関する研究は少ない。蛹期のミヤマシジミを用いてアリとの共生の至近要因について紹介する。ハナカマキリは非常に花に似た外見から、花に紛れて訪花昆虫を捕食すると考えられてきた。しかし、野外調査ではこれまでの知見とは異なる特徴的な捕食傾向がみられた。この野外調査結果から明らかとなったハナカマキリの巧みなミツバチ捕食方法について紹介する。

アリのアブラムシ認識機構とそれを利用したアブラムシ捕食者の対アリ戦略

○林正幸(千葉大・応用昆虫)

多くのアブラムシはアリと共生関係を結ぶことが知られ、アブラムシがアリに餌資源である甘露を提供するかわりに、アリはアブラムシ捕食者を攻撃し排除する。この共生関係が成立するためには、アリはパートナーとなるアブラムシ種を正確に認識する必要があると考えられる。しかし、アリがアブラムシをどのように識別するのか、そのメカニズムはほとんどわかっていなかった。本講演では、演者のこれまでの研究によって明らかになった内容、①アリがアブラムシ種を学習し、その体表炭化水素を用いて識別すること、②学習をしたアリは経験のあるアブラムシ種だけではなく、経験したことのない共生型アブラムシ種にも非攻撃的に振る舞うこと(非種特異性)、③アブラムシを経験した事のないアリがアブラムシを経験した他個体と接触することで、未経験アリもアブラムシに対し非攻撃になること(社会的学習)、について発表する。さらに、このようなアリのアブラムシ認識メカニズムを利用したアブラムシ捕食者であるクサカゲロウ幼虫の対アリ攻撃回避戦略についても紹介する。

日本応用動物昆虫学会 山形大会に参加される皆様

大会2日目(27日)に開催されます、表記小集会の世話人を努めます坂本洋典と申します。本小集会では、例年は小集会後にそのまま懇親会を行っており、特に申し込みを必要としてはいませんでした。しかし本年度は、小集会の同日に、参加者の多くの方と研究分野が被る化学生態学の本田洋先生、安藤哲先生、西田律夫先生のご退職祝賀会が開催され、多くの方から両方参加したいとのご意向を頂きました。これを受けて、店を予約し合同懇親会という形を取らせて頂きます。そこで事前に、参加人数を把握したいので、お手数ですが参加希望の方は坂本(sakamoto+at+lab.tamagawa.ac.jp)まで、来週月曜日(23日)までにご一報いただければ幸いです。(+at+を@に置き換えてください)

懇親会の詳細は下記のようになります。

日時: 平成27年3月27日 19:30開場 - 20:00開始 - 22:00閉場

会場: クワイエットカフェ 〒990-0039 山形県山形市香澄町 1-8-8 0120-199-018(立食形式となります)

会費: 一般の方 4,500円 学生の方 3,000円

※ 別途、ご賛同頂ける方のみ、退官される先生方への記念品代(\500-)を

追加で頂けると嬉しいです。

なお、小集会のみの参加も勿論歓迎いたします。

下記に、演者と演題を付させていただきます。

W11:L 会場:アリをめぐる生物種間の相互作用 2015 (JIUSSI 共催)

世話人:秋野順治・坂本洋典・萩原康夫

W111 水野 尊文 (京工繊大院) 「真社会性昆虫と関わる昆虫の化学戦術 アリを操るシジミチョウ・ハチを 欺くカマキリ」

W112 林 正幸 (千葉大・応用昆虫) 「アリのアブラムシ認識機構とそれを利用したアブラムシ捕食者の対アリ 戦略」

アリをめぐる生物種間の相互作用 2014(JIUSSI共催、応用動物昆虫学会(3/26-28,高知)での小集会)

日時:2014年3月27日(木)17:15-18:45

場所:高知大学朝倉キャンパス共通教育棟331番教室(M 会場)

講演者氏名、講演タイトル

1)奥野正樹(岐阜大学連合農学研究科 昆虫生態学研究室)

昆虫病原菌への対抗手段としてアリ類が行う行動に関する研究

2)柳川綾(京都大学生存圏研究所)

菌知覚阻止によるシロアリの新規防除法の模索

主催者:秋野順治(京都工繊大)・坂本洋典(玉川大)・萩原康夫(昭和大)

講演要旨は以下の通りです。

奥野正樹「昆虫病原菌への対抗手段としてアリ類が行う行動に関する研究」

社会性昆虫はどのように社会を維持し、そしてどのように進化して繁栄してきたのか。現在まで多種多様な研究によるアプローチがなされ、話題の中心として論議されてきた問いである。社会性昆虫と寄生者との相互作用に関する研究はそのアプローチの一つとして確立されてきた。演者は主に社会性昆虫の寄生者として多用されているMetarhizium anisopliaeを用いて、行動生態学的側面からこの相互作用に対してアプローチを行った。寄生者に対して行う防御機構の一つであるグルーミング行動にスポットをあて、この行動がもたらした社会生活への利益について考察してきた。本発表では、寄主となる社会性昆虫としてトビイロケアリを用いて行ってきた演者の主な研究成果について紹介する。さらに他の研究者の寄主寄生者相互作用に関する研究やグルーミング行動に関する報告事例を織り交ぜながら、社会という集団の生活のなかでグルーミング行動がどのように機能しているのか、さらに、感染リスクの高い土壌などの環境に営巣するアリ類が社会を維持するために寄主寄生者間の相互作用がどのように働いてきたのかについて生態学的視点から議論できればと

考えている

柳川綾「菌知覚阻止によるシロアリの新規防除法の模索」

シロアリの防除にはこれまで有機塩素系殺虫剤などが用いられてきたが、環境および人体への影響が問題視されて、近年、生物的防除法の確立が望まれている。中でも天敵糸状菌を用いた防除試験は世界でも比較的多く行われてきているが、安定的な効果を得るには至っていない。糸状菌による害虫防除をさらに発展させるためには、糸状菌と昆虫の相互関係、特に昆虫の糸状菌感染に対する生体防御戦略を明らかにすることが重要である。シロアリでは社会行動であるグルーミング行動が、糸状菌感染に対抗する生体防御機構として機能していることが認められているが、一方で「行動」による微生物感染抵抗性の増強に関しては依然として不明な点が多い。病原菌認識機構を知る手がかりとして、シロアリがどのような仕組みで病原菌の存在を知り、社会行動による防御を行うに至るのかさらなる研究が必要である。本発表では、シロアリにおける生物的防除の試みを紹介するとともに、現在研究テーマとして取り組んでいる、シロアリの糸状菌知覚能力を調査することで可能となりえる、新たな生物的防除法開発について議論したい。

国際社会性昆虫学会日本支部会小集会「ソシオゲノミクスの現状」

日時:2013年9月16日(月祝)16:30-18:30

場所:A会場(北海道大学農学部中央ブロックN11講義室)

W2A1 辻和希(琉球大学)「国際社会性昆虫学会ケアンズ大会のご案内

W2A2 ○尾崎まみこ・佐倉緑・北條賢(神戸大学)・石井健一(東 京大学)・尾崎浩一(島根大学)「次世代ソシオゲノミクスの視点からみた社会性生物個体の感覚・行動制御機構」

W2A3 三浦徹(北海道大学)「シロアリ研究における次世代ソシオゲノミクス的アプローチの適用」

W2A4 重信秀治(基礎生物学研究所)「次世代シーケンス時代のソシオゲノミクス研究戦略」

講演要旨は以下の通りです。

辻和希「国際社会性昆虫学会ケアンズ大会のご案内」

2014年7月13-18日に,オーストラリア・ケアンズで開催される第17回国際社会性昆虫学会(IUSSI)大会のアナウンスをします。日本支部会の学生会員を対象とした渡航旅費援助についてもご紹介します。

尾崎まみこ「次世代ソシオゲノミクスの視点からみた社会性生物個体の感覚・行動制御機構」

生物社会が安定的に維持存続されるには、社会を構成する個体が社会全体あるいは社会を取り巻く環境に対して調和的に機能するユニットマシーンとして整備されていることが重要である。動物は、環境適応的に身につけた生活スタイルや、様々な感覚モダリティーに対する依存度に応じて、直面する外部の変化を効果的に感知し、時事刻々の微調整を行っている。ここで取り上げるクロオオアリは、フェロモンと呼ばれる匂い信号を多用して種内、種間のコミュニケーションを実現し社会を維持している。また、脳における一次感覚中枢の占める割合を比較する限り嗅覚への依存度が格段に高いことがわかる。私たちは、アリの社会行動に表れる環境センシングシステムの整備状況をカースト間で比較しながら、様々な意味を伴う“匂いパターンセンシング”の仕組みを明らかにしようと考えた。その際に、嗅覚受容機構関連の遺伝子や遺伝子産物をcomparativeな立場から網羅的に解析できる「次世代シーケンス時代のソシオゲノミクス研究戦略」を取り入れることは、至極自然ななりゆきだったのである。

三浦徹「シロアリ研究における次世代ソシオゲノミクス的アプローチの適用」

次世代シーケンス技術の発達により,生物学の様々な分野において大量遺伝子情報が容易に得られるようになり,生物の理解も大いなる飛躍を遂げつつある.社会性昆虫にまつわる分野も例外にもれず,次世代ソシオゲノミクスと言っても良いような研究報告が次々となされる時代に突入している.我々の研究グループにおいても,シロアリにおけるカースト分化や社会行動に関わる遺伝子発現プロファイルが様々な形で得られるようになり,分子の情報を手がかりとした分析手法にも応用できるようになってきている.本講演では,オオシロアリHodotermopsissjostedtiやヤマトシロアリReticulitermessperatus,タカサゴシロアリNasutitermestakasagoensisなどを用いて,これまでに我々が行ってきた遺伝子発現解析,トランスクリプトーム解析を紹介し,得られたデータがどのように活用できるかについて紹介したい.また,ゲノム情報やトランスクリプトーム情報が得られたからといって,現象の全てが理解される訳ではなく,本講演では今後の課題についても考えてみたい.

重信秀治「次世代シーケンス時代のソシオゲノミクス研究戦略」

次世代DNAシーケンサー(NGS)は、超並列シーケンシングにより塩基配列情報をハイスループットに解読することができる装置であり、ゲノム解読はもちろん、変異検出から遺伝子発現の定量解析まで応用範囲が広い。この技術は生物学研究のあり方を変革するほどのインパクトを持っている。社会生物学も例外でなく、ゲノムシーケンス技術の進歩を背景に、ソシオゲノミクスなる研究分野が発展しつつある。社会性昆虫のモデルであるミツバチでは、すでに解読済みのゲノム情報をもとに、トランスクリプトーム解析や、網羅的エピゲノム解析が盛んに行われている。アリ類のゲノムはすでに7種のドラフトシーケンスが発表され、比較ゲノム解析から社会性の進化について議論されている。演者らは、シロアリ類や社会性アブラムシなどこれまで遺伝子情報がほとんどなかった生物種で、トランスクリプトーム解析やゲノム決定を行っている。本集会では、ソシオゲノミクスに利用可能なNGS技術を概説するとともに、NGS時代の社会性昆虫の研究戦略について議論したい。

ウィルソン博士のコスモス国際賞受賞に伴うイベント

日本昆虫学会第72 回大会 玉川大学(町田)の小集会

「昆虫の家族をめぐる進化生態学」第4回 共催:JIUSSI年次集会

日時 2012年9月17日(月) 16:45-18:45

場所 東京都町田市 玉川大学 大学8号館423(C会場)

世話人:鈴木誠治(北大・農)・工藤慎一(鳴門教育大・院・学校教育)

講演1 (16:45-17:25)

工藤慎一 (鳴門教育大・院・学校教育)

節足動物に見られるオスの子育て:ミニレヴューとヒラタヤスデの事例

講演2 (17:25-17:55)

○鈴木 智也 (信州大院・総合工学系)・谷澤 崇 (信州大院・工学系)・東城 幸治

(信州大・理・生物)

仔 (胚) が父親の繁殖適応度を高める昆虫・コオイムシ類の特殊な繁殖戦略

講演3 (17:55-18:35)

大庭伸也 (長崎大・教育)

性淘汰が駆動する雄による卵保護行動の進化:コオイムシ亜科昆虫における実証研究

JIUSSI年次総会(18:35-18:45)

日本生態学会第59回大会(ESJ59)第5回東アジア生態学会連合大会(EAFES5)でのシンポジウム

2012年3月18日(日)14:00-17:00 龍谷大学瀬田キャンパス8号館Room B

S02 Evolutionary community ecology of biological invasion: a lesson from social insects

Organizer: Kazuki Tsuji (Univ. Ryukyus)

Dispersal of organisms plays a key role in ecology and evolution, from individual to ecosystem levels. Biological invasion, initially caused by human-mediated long-distance migration, provides an ideal opportunity to directly study ecological and evolutionary dynamics in action. We primarily focus on social insects as a model system because of their ecological dominance. We show that many other interesting biological processes, such as sex, altruism, symbiosis, competition, life history evolution and speciation, are included in tangled and fascinating ways in the dynamical processes caused by dispersal.

S02-1 Asexuality a deux: Frequent partner-swapping in the ecological success of the symbiosis between the asexual fungus-growing ant Mycocepurus smithii and its clonal fungal cultivars

Ulrich Mueller, Katrin Kellner, Christian Rabeling, Anna G. Himler(Univ. Texas at Austin)

S02-2 Invasion of the termites: Insights from genetic studies of two subterranean termite species.

Edward Vargo(North Carolina State Univ.)

S02-3 Ecology and genetics of little fire ant invasions

Alexander S. Mikheyev(Okinawa Institute of Science and Technology)

S02-4 Revisiting the ants of Melanesia and the Taxon Cycle: historical and human-mediated invasions of an island ecosystem

Evan Economo(Univ. Michigan)

S02-5 Spread and consequences of an unusual invasive ant species: the case of Pachycondyla chinensis

Benoit Guenard, Rob R. Dunn(North Carolina State Univ.)

S02-6 Concluding remarks: Biological invasion and lifehistory evolution

Kazuki Tsuji(Univ. of the Ryukyus)

日本地区会例会 in 松本 日本昆虫学会第71回大会(松本)の小集会

2011年9月18日(日)16:15-18:15

講演予定者(敬称略)

服部充(信州大)「真社会性アブラムシの巧妙な防衛戦略 ~兵隊と警報フェロモン~」

小川浩太(北海道大)「エンドウヒゲナガアブラムシに見られる生活型特異的な飛翔器官形成」

土'田努(富山大)「共生細菌が担うアブラムシの環境適応」

個体群生態学会・JIUSSI共催 国際シンポジウム in 岡山

2011年10月14-16日のうちの1日

講演予定者

Laurent Keller (University of Lausanne, Switzerland)(基調講演)

William Hughes (University of Leeds, UK)(基調講演)

Alexander Mikheyev (Okinawa Inst Sci & Technol, Japan)

Evan Economo (University of Michigan, USA)

Kazuki Tsuji (University of the Ryukyus, Japan)

Kenji Matsuura (Okayama University, Japan)