【NBA Team紹介】San Antonio Spurs 後編

投稿日: Nov 01, 2013 6:27:51 AM

前編

中編

大方の予想通りNBA開幕までに間に合わなかったですね。

取り敢えずこのコーナーは続けていきます。

NBAに興味を持ってもらうのが目的ですからね。

さて、ようやくSpurs編も本題に入れそうです。

なぜスパーズは強いのかですが、

まずこのチーム、いやHCのポポビッチはプレーオフでの優勝しか考えていません。

その為に一大イベントのクリスマスゲームですら主力をごっそり休ませたり

規律を乱す選手も嫌いそれまで中々活躍していたとしてもトレードに出したりと徹底されています。

それはプレーにも体現されていまして、非常に効率のいいプレースタイルとなっております。

ここからはザックリ3つに分けて簡単にスパーズの強さについて取り上げていきます。

①ディフェンス

チーム作りの根底にまずディフェンスが大前提で、

ディフェンス意識が高いプレーヤーを揃えています。

ディフェンスの戦略としてはリーグでも有数のショットブロッカーのダンカンともう一人でインサイドを固め

ウイングにエースストッパーを配するのが定番パターン。

今ではそのストッパーの役割は主にクワイ・レナードが担っていますが

以前はブルース・ボーエンという永久欠番にもなった選手が担っていました。

彼はしつこいディフェンスでエースを追い回し時にはダーティープレーすら駆使して止めるスタイルなので

相手選手、相手ファンに相当嫌われていました。オフェンスではほとんどコーナーからの3ptという割り切り具合。

SGのジノビリもフロップ(ファールを貰う為の演技)を得意としていたため

NBAファンの中でスパーズアレルギーをもっている人たちはこの頃のダーティーイメージが強いのでしょう。

ステップや位置取りは参考にしてもいいと思いますが、

相手を怪我させる恐れのある行為、

特に着地点に足を出したり、

シュートモーションの際でも過度に密着するようなディフェンスは真似しないようにしましょう。

怪我をさせてまでバスケを楽しむのは反対ですから。

ここまでただボーエンの話がしたかっただけですが、

このようにブロッカー&ストッパーといういたって普通の構成ですよね。

やはりスタンスもストッパーがエースをスローダウンさせ

インサイドをガチガチに固めるといった変哲も無い特徴のディフェンスです。

ダンカン加入以後、今も昔もこのスタンスは変わっていません。

では、他のチームと何が違うのでしょうか?

それはHCによる意思・方針の統一性が徹底されている点でしょう。

人事権も持っているポポビッチHCは

ディフェンス意識低いプレーヤーは使わないどころかトレードに出したり

首にしてしまうほどで、ディフェンス意識が低ければ大黒柱のダンカンでさえ

叱り飛ばすほど徹底させようとします。

ディフェンスはチームとして意思を持つほど強固になります。

3連覇2回のブルズや黄金期のレイカーズ、そのレイカーズを止めたピストンズや

2連覇中のヒートといった歴代優勝チームは総じてディフェンス意識が徹底されていました。

「ディフェンスを制するものがNBAを制する」のです。

②ディフェンス→オフェンス

ダンカンを中心としたインサイド陣がリバウンドを獲ると

今のスパーズは意図的にペースを上げてオフェンスに切り替えます。

昔はスローダウンさせハーフコートでしっかり組み立てる事が多かったのですが、

ダンカンの衰えにより、オフェンスのメインをバックコート陣へ重きを置くようになって来ました。

ただし、このペースアップしたオフェンスにおいてやはり大黒柱のダンカンの重要度は非常に高いのです。

ダンカンと言う男は、リバウンドからのパスアウトがリーグ一とも言われています。

百聞は~、動画を見てみましょう。

どうですか、この綺麗なスムーズなオフェンスへの移行。

前にも書いたと思うのですが、オフェンス効率を考えた場合、

ボール運びの時間と言うのは無駄なんですよね。

ここを如何に短くし次のオフェンスへ繋げるのかがトレンドになっているように思います

そして最近このアウトレットパスが非常に機能した場面がありました。

それはヒートとのファイナルでの第3戦です。

ヒートのディフェンスが第2戦でスパーズのボール運びへのプレッシャーを強め

スパーズはコートの高い位置でトラップに引っかかりボールを失う場面が多く大敗を喫してしまいました。

そして第3戦でダンカンは高い位置でトラップを狙うヒートの裏を突いて

ハーフライン近くへボールをフィードし

ガード陣のトラップ回避に成功したのでした。その結果NBAファイナル記録の3ptシュートをクリエイトしたのです。

ヒートのディフェンスはこれまた最近のバスケの流行であるハイピック(高い位置でPGにスクリーンに行くプレー)を

機動力がありサイズもあるレブロンとボッシュが潰しにかかるというハーフコートプレスが一番の武器&脅威なんです。

それをセットされる前にハーフまでボールを進め一時的に攻略する事に成功したのがダンカンのパスなのです。

(余談ですが、ヒートは次の試合で更にプレッシャーとスピードをあげ勘のいいウェイドをパスカット走らせる事によりスパーズにプレッシャーをかけるのでした)

この動画ではわかりにくいというよりほとんど映っていないですが、録画している方は見返してみてください。

エンドからのボール出しやリバウンドからのパスアウトの時、パーカーが高い位置にセットし

ダンカンがヒートのディフェンスを掻い潜ってパスを通している場面が多々ありますから。

③セットオフェンス

スパーズのオフェンスはディフェンス以上に効率が高いものになっています。

狙いのほとんどが、成功率が高いシュートと得点効率が高いシュートで

非効率かつ確率の落ちるシュートを嫌います。

具体的に言うと、

といった感じです。もちろんジャンプシュートもちゃんと打ちますが、狙うのは上2つのゴール下か3ptがメインです。

1mくらいの差の距離なら3ptにしろってことの他に

ボーエンのようなオフェンスに武器が無いプレーヤーでも

3ptさえあればチームの武器にしてしまう戦略なんですね。

それにラインがしっかりある分長い距離の2ptより確立が安定するという点もあります。

話はそれますが、歴史に名を残すようなプレーヤーは逆に2ptのジャンプシュートメインで一時代を築く事が多いです。

一番有名なのがジョーダンやコービーです。その他にもジャズのカール・マローンもジャンプシュートを武器にしていましたし

決して侮れはできないのですが、近年のNBAではその重要度が落ちてきているのも事実です。

スパーズにおいて積極的に2ptを打つ選手はインサイドプレーヤー以外だと3ptが決して得意ではないパーカーだけで

その他のバックコート陣は基本的に3ptより外側で常にポジショニングしています。

ではゴール下と3ptのシュートをどのようにクリエイトしているか動画を見てみましょう。

まずZIPというパーカーのスピードと3枚のスクリーンを柱にしたセット。

これはTopへボールを捌いた45度のパーカーがミドルポスト、ローポスト、逆サイドのダウンスクリーンを巧に使い

ボールを貰う流れの中でチーム全体でゴールを狙っていきます。

現在のスパーズで圧倒的に他のチームよりアドバンテージを奪えるのがパーカーのスピードな為

まず一番確率のいいところで攻める、すると相手チームはパーカーへヘルプに出たりスクリーンを読んだりするので

そこから空いたシューターへ捌いたり更にスクリーンを応用して攻めているのですね。

続いての動画。

"Through" シリーズというセット。

ポストのスクリーナで基本的に攻めます。

セットしたスクリーンを上手く活用しTopから攻めるパターンで

空いたところへパスを捌いたりシュートを放ったりと臨機応変さが重要な攻め方。

逆サイドのシューターやスクリーンの動きによって上手くスペースを作っているところが味噌。

最後と決めないといつまでもやってそうなので最後の動画。

”Hammer Action”というセットバリエーション。

逆サイドのシューターへパスを捌く動きです。

逆サイドのポストがスクリーンでフリーのシューターを作っています。

以上代表的なムーブメントを紹介しましたが

これに加えポストのセットを多数取り揃えていて、

ダンカンだけでなくSFのレナード用のポストプレーも用意されています。

このように引き出しも多く熟練にはIQが必要なので

スパーズにフィットするプレーヤーはリーグ内でも限られた存在といえ、

主力を変更しにくい要因であったりもします。

しかもチームとして対戦相手の研究も熱心なので

相手によって臨機応変に使い分けるだけでなく複数の動きを組み合わせたりして

チームの一体のオフェンスを繰り出しているのです。

あと忘れてはいけないのがパターンを読まれやすいセットオフェンスに

ジノビリを筆頭としたアクセントをつけるプレーヤーがいるのが

非常に難解なオフェンスにしているのですね。

どうですか?

スパーズの魅力が伝わったでしょうか?

個人的には今一番NBAで見ていて面白いチームだと思います。

是非見る機会があればビール片手に見てみてはいかがでしょうか?