審判の動き

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1 審判の「動き」とは

「塁審の位置」に書きましたとおり,ピッチャーが投げる直前のそれぞれの審判の位置は,状況によってほぼ決まっています。

しかし,ピッチャーが投げたボールがその後どこに移動するのかは,膨大なパターンがあります。バッターが打つと考えても,打球がどこに飛ぶのか分かりません。キャッチャーがボールを捕れずに,ボールを前に弾いたり,ボールがバックネット方向に転がっていったりするかもしれません。判定(ジャッジ)は,なるべく近くで行う方が正確ですから,審判は,次に判定が起こる場所を予測して,インプレー中はその立ち位置を変化させていく必要があります。それが審判の「動き」です。

審判がどのように動くかが難しくなるのは,三人制(球審,1塁塁審,3塁塁審)の場合です。

四人制(球審,1塁塁審,2塁塁審,3塁塁審)の場合は,それぞれの塁をそれぞれの審判が受け持つことが基本になるため,動くことはあまりありません。動く場合の一つが,外野に打球が飛んだ場合です。近くの塁審がボールを追いますので,その空いた塁を近くの審判(基本は先の塁の審判)がカバーします。例えば,

ノーアウト2塁で,レフト線へ大きな飛球

3塁塁審が打球のキャッチやフェア・ファールの判定のため飛球を追うため,3塁の審判がいなくなる

打球が捕球された場合,2塁ランナーのタッチアップ(タッチアップ成立の判定は2塁塁審)によって3塁上でタッチプレイが起こるかもしれないので,球審が3塁に移動する

本塁の審判がいなくなる

場合によっては,2塁ランナーが本塁に突入してタッチプレイが起こるかもしれないので,1塁塁審が打者走者の1塁の触塁を確認した上で本塁へ移動

という動きが想定されます。

我々が考える審判の動きとは,厳密な正解があるわけではなく,状況に応じて臨機応変に,しかも他の審判と協調して動くことであると考えます。「難しそうだ」と感じられたのであれば,正解です。我々も難しいと感じています。もちろん公式審判員の方は,厳密な正解をご存じであり,それを実行されているのかもしれません。しかし,少年野球チームの指導者や,協力してくださる保護者の方,つまり普段審判としてのトレーニングや勉強を行っていない人間にとっては,たいへん難しいことです。

ここでは,そんな方々が少しでも審判としての動きを考えやすくできるように,具体例を挙げながら紹介していきます。しかし,「正解」ではなく,「基本となる考え方」であることを承知して頂きたいと思います。また,明らかな間違いがある場合は,ぜひご指摘ください。

この先は,三人制の場合で,打者が打ったときの審判の動きを解説していきます。

2 フェアとファールの判定

フェアかファールかの判定は,1塁ベースおよび3塁ベースまでは球審が,ベースを超えたところは各塁審が担当します。つまり塁審が判定するのは,ほとんどの場合ベースを超える飛球です。ベースの前か後ろか微妙な場合,塁審はフェアかファールか判断した上で,いったん球審を見て,球審がジャッジした場合はそれに合わせて球審と同じ判定を行い,球審がジャッジしない場合は塁審が判断したジャッジをするぐらいの余裕があるといいと思います。球審のジャッジと塁審のジャッジが違うと,困ったことになってしまいます。

塁審が2塁ランナー等の存在によって内野に入っている場合は,ベースを超えたところも球審が判定します。中に入った塁審がファールラインに走る必要はありません。

3 外野への打球の対応

外野に打球が飛んだ場合,近くの塁審がその打球を追います。レフト方向であれば3塁塁審が,ライト方向であれば1塁塁審がボールを追います。基本的に,追い始めたらそのまま追い続けてください。キャッチしたかの判定はもちろんですが,打球がフェンスやネットに挟まってプレーを止めなけらばならないこともあります。内野に帰ってくる必要はありません。このとき,走者の触塁など判定の大部分は球審が見ることになります。また,残された塁審も状況をよく見て,判定が必要な塁に先回りする必要があります。打球を追っていない審判の負担が増大しますので,練習試合等で球審が公式審判員ではない場合は,塁審は外野の打球を追わないように事前に打ち合わせておくこともありだと思います。

ただし,球審が公式審判員であっても,2塁ランナー等の存在によって内野に入っている塁審は,打球を追いません。恐らく,内野やランナーの動きを阻害する可能性があるからだと思います。

ちなみに,センター方向への打球はどうするのか,ということになりますが,ほとんどの場合,1塁,3塁塁審共に追わない場合が多いと思います。また,両者とも追ったのを見たこともあります。難しいです。

4 ランナーなしの場合

(1) 打球が内野ゴロ

ア 1塁塁審

内野からの一塁送球に備えて,送球に対して90°になる位置に移動します。サードからの送球であればフェアゾーンに深く入り,セカンドからの送球であれば少しフェアゾーンに入る,という位置です。野手の送球を目で確認しながら,途中で一塁に視点を切り替え,視覚で打者走者の触塁,聴覚で送球の捕球を確認し,どちらが速いかを判断します。同時であれば,セーフです。また,打者走者がセーフであり,しかもエラー等が連続した場合,球審が3塁へ移動しますので,1塁塁審は判定後に本塁に移動する場合があります。

イ 3塁塁審

エラー等で打者走者が2塁に進塁を試みる場合に備えて,まずはフェアゾーンに入ります。状況を見て,2塁でのタッチプレイが起こると判断した場合は,「塁審の位置」で紹介したインフィールド内の位置につきます。

ウ 球審

打者走者が,1塁までの走塁中にスリーフットレーンの外で送球に触れると,守備妨害になり打者走者はアウトになります。またスリーフットを超えて野手のタッチを避けるとスリーフィートオーバーになり,やはり打者走者はアウトになります。球審は,打者走者を追いながら,そのようなプレーが起こっているかを判断します。このとき,1塁塁審は1塁の判定に備えています。また3塁塁審は2塁へ向かっています。したがって,エラー等が重なって打者走者が3塁に到達しそうな場合は,球審は1塁のファールライン付近から3塁へと移動します。

(2)レフト方向への打球の場合

ア 1塁塁審

まず,打者走者の1塁の触塁を確認します。しかし,3塁塁審は打球を追っているはずですので,打者走者が2塁に突入した場合に2塁のタッチプレイを判定する審判がいなくなってしまいます。そのため,打球を確認したら,まず内野の1塁と投手の中間ぐらいの位置に入って打者走者の触塁を確認します。その後打者走者と共に走って2塁へ向かい,必要であれば判定します。

打者走者が2塁からさらに3塁へ向かった場合は,球審が3塁へ行っているはずです。そのときは,打者走者が3塁からさらに本塁へ進塁することに備えて,2塁から本塁へ向かいましょう。

たいへんややこしい動きです。

イ 3塁塁審

打球を追い,キャッチやボールデッドの判定を行います。

ウ 球審

とにかく落ち着いて,グラウンド全体を見ます。打者走者の触塁の確認は,1塁塁審が行っているはずですが,球審も見ておいた方がいいです。2塁までは1塁塁審が担当しますが,3塁まで打者走者が来た場合は,球審が3塁に先回りしておく必要があります。このとき,1塁塁審に本塁へ行くよう声をかけられれば,さらに良いでしょう。

(3)ライト方向への打球の場合

ア 1塁塁審

打球を追い,キャッチやボールデッドの判定を行います。

ただし,少年野球ではライトゴロがよく起こります。したがって,闇雲にボールを追うのではなく,ライトゴロになりそうだと判断した場合は打球を追わず,1塁横のファールゾーンに立ち,判定を行います。

イ 3塁塁審

打者走者が2塁に向かう場合に備えて,内野に入ります。内野ゴロの場合と同じ動きです。打者走者が3塁へ向かった場合は,球審が3塁に行っているはずです。そのときは,打者走者が3塁からさらに本塁へ進塁することに備えて,2塁から本塁へ向かいましょう。

ウ 球審

1塁塁審は打球を追っていますので,まず,打者走者の1塁の触塁を確認します。その後,打者走者が2塁へ向かった場合は3塁塁審が判定します。球審は,打者走者がさらに3塁に向かった場合に備えて,3塁に先回りしておきます。このとき,3塁塁審に本塁へ行くよう声をかけられれば,さらに良いでしょう。

(4)センター方向への打球の場合

どちらの塁審が打球を追ったかで決まります。3塁塁審が追った場合は,レフト方向への打球のパターン,1塁塁審が追った場合は,ライト方向への打球のパターンになります。「両者とも追った」場合と「両者とも追わなかった」場合は,臨機応変(便利な言葉ですね)にお願いします。