執筆:2009年1月
自己紹介
学部の開発地理学の授業を履修したこと、さらに所属していた地理学ゼミにおける様々なフィールドワークでの経験を通じて、開発学への興味がわき、学部卒業後に開発学を学びたいと思うようになりました。大学卒業後、日本の大学院へ入学しましたが、開発学が盛んなイギリス留学への夢があきらめきれずに英国の大学院への転学を決意し、今に至っています。学生としての立場でフィールドワーク等のプログラムへの参加などはありますが、そのほか専門家としてのキャリアは全くありません。職務経験はありませんが、イギリスでさまざまな経験を持つ方々との出会いを楽しんでいます。
所属コースの概要
Urban Development Planning (UDP) は、Development Planning Unit (DPU) の中のひとつのコースです。DPUにはUDP以外にも、環境、都市経済開発、社会開発、都市デザインなど、途上国と開発をテーマとしたさまざまなコースが用意されています。その中でUDPは主に途上国の都市部で起きている現象や問題を多角的な視点から取り扱い、それに対しての取組みや分析の方法などを学びます。扱う範囲は、フーコーやハバマスといった哲学的な内容から、スラム地域における水問題など現実的なものまで幅広いです。
勉強する環境としては、DPUがある建物は驚くほどこぢんまりとした場所なので、多くの学生が集まる授業では、UCLのキャンパスを転々とすることが多くあります。ただ、多くはアパートのような一室での授業なので、ある意味とてもアットホームな雰囲気で日々を過ごせます。建物の狭さや不便さは、UCLの他のキャンパスが近くに多く点在しているので、そこの施設をうまく使えば問題はありません。
コースメイトですが、UDPの場合、約20人が在籍し、イギリス人も含め3人以上同じ国籍ということはなく、とても国際色豊かです。また、私を含めた学部卒の生徒もいますが、多くの人が以前働いていた経験(開発関係か建築関係が多い)があり、多くの体験談を交えた議論が楽しめます。グループワークが非常に多いので、比較的早い段階からクラスのメンバーと仲良くなれます。
授業全体について
DPUは3学期制(9月-12月、1月-4月、5月-6月+論文執筆(9月まで))をとっています。1学期はワークショップ、2学期は授業の継続のため、DPUの学生にはReading Week(ターム中間にある1週間の休み)の休みはありません。科目は基本的にすべて通年で、3つの必修科目と1つの選択科目をとる必要があります。理論を主に学ぶ授業と、フィールドに出ての作業など実践に重きを置く授業がそれぞれ必修科目には含まれています。これら授業に加え、3学期は、各々のコースごとに海外へ2週間程度のフィールドワークへ行くことになっています。今年、UDPはインドのムンバイにおけるスラム地区での住宅問題をテーマに調査をする予定です。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名:The City and Its Relations: Context, Institutions and Actors In Urban Development Planning
内容・感想:
グローバル化する都市構造や、それに伴う途上国の都市開発がどう変わっていくのかを様々な理論を交え学んでいく授業です。特に都市部におけるグローバリゼーションや格差など、世界的な現象を学術的にどう解釈していくかといった授業内容になっています。授業は、教授らによるレクチャーとセミナーに分かれています。そのため前後期は各一回、自分で選んだテーマをグループ発表、あるいは個人発表をし、授業の進行を担います。グループ発表のため、その調整が大変なこともありますが、各回面白いテーマを多くの視点から分析している発表を見て、その後議論やレクチャーを受けるのは日々刺激になります。ただ理論的な側面が多くなる授業です。(成績評価:試験40%+エッセイ60%)
授業名: Urban Development Policy, Planning&Management: Strategic Action in Theory & Practice
内容・感想:
この授業は、プランニングに焦点をおいて授業が構成されています。ただ、実際の技術や方法を学ぶというよりも、プランニングの歴史、プランニングが与える影響、プランナーとしての立場などを考える授業となっています。哲学的な問題も取り扱うので、いろいろ混乱することもありますが、現在のプランニングがどのような文脈の中に成り立っているのかといったことを考えるのに必要な知識が身に付く授業です。先生はUDPのコースディレクターが行うので、とても和やかな雰囲気で、発言しやすく、また内容も明快で気持のいい授業です。(成績評価:試験40%+エッセイ60%)
授業名: Practice in Urban Development Planning
内容・感想:
全授業の中で最もフィールドワークが多い内容となっています。1学期はロンドン市内(今年はHackney)の調査を他のコースと合同で行います。2学期は3学期にある海外フィールドワークに向けての準備に入り、毎回現地の専門家の方の講義を受けます。グループワークが多くあるので、他の授業で忙しい学期中に、グループで調査に行くなど大変なことも多くあります。しかし、実際に街ゆく人にインタビューなどをする貴重な機会が与えられ、他の2つの授業とはまた違った魅力がある授業です。
大学情報
University College London (UCL) はロンドンの中心部の位置し、生活に不便は全くありません。大きな大学であるため、さまざまな学問に対応できるように多くの図書館等を完備しています。またカフェや学食も味は賛否両論ありますが、充実しており、いつでも食事やコーヒーが楽しめます。寮は海外留学生の1年目は確保されることになっていますので、自分で民間のアパート等を探すことは基本的にはしなくても大丈夫なようになっています。ただ、学校までの距離、施設の充実度は各寮によってだいぶ異なります。距離は学校から徒歩で5分のところから、40分のところまでありその点も考慮する必要があります。希望する寮に入るためには、寮の申込をなるべく早く行うことをお勧めします。