Bartlett School of Planning, University College London (UCL)
BSc Urban Planning, Design and Management
小林杏奈さん
執筆:2026年9月
担当:生田 洸己 (The London School of Economics and Political Science )
小林さんの自己紹介をお願いいたします。
2026年9月からUCLのバートレット建築環境学部都市計画学科の3年目を迎える、小林杏奈と申します。小学生時代にも4年間ほどロンドンで過ごしており、合計すると7年間ほどの在住経験があります。
中高時代は個人から社会のレベルまで、文化がどのように混じり合い、衝突し、共存していくのかに興味があり、模擬国連の部長を務めたり、日本の伝統芸能を保存・継承するNPOでのインターンをしていました。また、絵を描くことも好きだったため、展示会に参加したり企画したりしながら、空間を通してどう新しい体験を作り、他者とつながる機会を生み出せるかを模索していました。
都市計画という分野に具体的な興味を持ったのは、高校2年生の時でした。タンザニアでのボランティアでスラムを初めて目にし、特定の人々を排除する都市政策の現実を目の当たりにしたことがきっかけです。そこから、目には見えないところで社会に構造を与える政治、経済、歴史といった視点から都市や建築を考えたいと思うようになり、文理芸融合の学びができるUCLのバートレットを目指すようになりました。
所属されているコースの特徴や雰囲気について教えていただけますか。
私が所属するBSc Urban Planning, Design and Managementは、アーバンデザインなどの実技科目と地理・経済・統計といった理論科目がほぼ半々で構成されています。一年目は使い慣れないツールに苦労しましたが、慣れるにつれ設計のスケールが広がり、今では、自分のデザインが立体的になっていく過程にやりがいを感じています。クラスの半分近くは世界各国からの留学生で、アメリカ、ヨーロッパ、香港、シンガポールなど幅広い出身のクラスメイトとの議論は着眼点が多様で面白いです。また、バートレットが建築環境学で世界トップということもあり、この分野に情熱的な学生が多いと感じています。
ロンドンは国際色豊かな空気を持つ一方で、様々な力関係が表面化する場所でもあり、そうした都市の構造を文化的・政治的・経済的な側面から肌で感じられることが、自分にとって大きな学びになっています。さらに、プロとの接点の多さとヨーロッパへのアクセスの良さも、ロンドンで学ぶ魅力だと思っています。ゲスト講師によるプロジェクトへのフィードバックや、夏に一ヶ月間デベロッパーでインターンをする機会にも恵まれました。加えて、移動のしやすさから、例えば「記念碑をその環境に合わせてデザインし直す」課題ではホロコースト記念碑と情報センターを訪れ、一年目にはロッテルダムへ一週間の遠征に連れて行ってもらい、デルフト工科大学の授業も受けることができました。
インターン先のデベロッパーの方々が連れて行ってくださったミュージカル。
UCLで特に印象に残っている授業を教えてください。
授業の内容は先述した通り、実技と理論科目が半々で構成されています。3年間変わらず、1st term(9月〜12月)と2nd term(1月〜4月)は授業期間で、3rd term(5月〜6月)が試験期間です。かといって1st、2nd termに試験がないというわけではなく、教授次第で学期中にも試験を行うケースも少なくありません。そして、建築学部は他学部よりも試験がやや少ない代わりに、大きな制作プロジェクトが一年を通していくつかあります。
制作プロジェクトは大体、学期の途中で中間講評が行われ、終盤に最終講評が行われます。理論の授業はほぼ全てがLectureとSeminarの組み合わせで、それぞれ毎週1回ずつ行われます。授業数も多く、全てを取り上げることができませんが、以下が私が特に好きだった授業になります
① Contemporary Cities(理論・Year 1)
この授業では、世界各地で進む都市化の流れを取り上げ、都市計画や政策がどのように広まり、相互に影響を与えているのかを考察し、そこから読み取れる都市の未来について議論します。授業では毎週異なる論文を読み、感想を共有したうえでエッセイを書くのですが、読んだ中で特に印象的だったのは、中国の人間と自然の共存を目指したエコシティに関する論文と、AI都市計画(AI Urbanism)に関する論文です。
② Urban Design: Theory to Practice(理論+実技・Year 2)
デザインや建築の理論を学びつつ、それを応用してロンドン市内の公営住宅団地の再開発案をチームで考え、発表するという科目です。学期の前半は、実際に現地を訪れて調査し、グラフや地図、3Dモデルなどを使った敷地分析を行い、後半ではその分析を踏まえ、再開発案を具体化しました。実際のコミュニティを取材することによって、共同で所有・管理し、地域コミュニティと関わり続けながら主権を取り戻していくことの大切さと難しさを実感しました。
③ Economies of Cities and their Regions(理論・Year 2)
上記二つが都市の物理的な形態や政治的圧力に焦点を当てた授業でしたが、この授業では都市や地域の経済について、いくつかの理論的な立場から学びました。そしてそのレンズを都市化、集積、郊外化、ジェントリフィケーション※ といったテーマに当てはめて考えていく科目でした。経済と都市の関係性をより深く理解できただけでなく、主流派と批判理論を並行して読む訓練にもなったと感じています。
※ジェントリフィケーション:良好な環境とは言い難い地区において、居住者の階層が上昇することと、居住空間の質の向上とが同時に進行する現象
UCLのキャンパスや大学の雰囲気について教えていただけますか。
UCLはロンドンの中心部に位置し、大英博物館、大英図書館は徒歩圏内にあります。
そういったロケーションから人通りが多く賑やかなエリアでもありますが、道を1、2本奥に入ると静かで落ち着いた街並みも広がりますし、近くには大きな公園がいくつもあり、夏が近づくと学生がよく外で勉強したりピクニックをしています。
また、UCLは夏目漱石や、伊藤博文ら長州ファイブが留学していたことでも知られており、メインキャンパスの中庭は「ジャパニーズ・ガーデン」と名付けられていて、意外と親しみ深いです。また、彼らが留学していた当時のイギリスでは、UCLだけが信仰や人種、性別の違いを超えてすべての学生に教育の機会を与えていた大学だったそうで、その雰囲気は今でも残っており、本当に伸び伸びと学びに励むことができています!
友人とUCL付近の公園でピクニックをしていた時のお写真
入学シーズンのUCLのキャンパス
課外活動について教えていただけますか。
大学一年の春学期から、Urban Roomという場所でボランティアをしています。Urban Room はUCLの東キャンパスにあるUCL図書館、建築学部 (The Bartlett )、芸術学部 (School for the Creative and Cultural Industries)、と建築・都市計画研究室 (UCL Urban Laboratory)が共同で運営しているエキシビション、ワークショップやイベントを行える空間です。様々な年齢や職業の方達が集まって、都市とは何か、建築とは何か、文化や芸術とは何かを考え、学び、展示を作り上げていく工程は、とても刺激的です。
ワークショップを行った時のお写真
留学は、日本にいれば当たり前のようにできていたことがうまくいかなかったり、何だか情けない自分自身と色々な場面で向き合わないといけないことが多いです。ですが、挑戦の機会に恵まれ、一つのことをやり遂げたと思う間もなく次の課題が現れるような環境の中で、自然と自分のキャパシティが広がり、より広く、自由な世界を見られるようになったと感じています。多様な生き方・目標・問題意識・社会観を持つ人々に囲まれる中で、自分自身の社会との関わり方やこの先の可能性も、少しずつ広がってきたように感じています。
留学という経験は必ず無駄にならないと思うので、ぜひ一歩踏み出して挑戦してみてください!
※本ページの内容は、ご回答者様個人のご見解および当時のご経験に基づくものです。最新の情報はご自身でご確認ください。