執筆:2014年4月
1.自己紹介
大学院留学以前は日本の大学の経済学部に在籍しており、学部では環境経済、開発経済、開発金融等の科目を取り、環境開発に興味を持ちました。留学の動機はまず英語力の向上、次に開発学を専門的に身に付けたかったからです。人類学を選んだのは単なる興味本位からであり、元々は環境開発に進む予定でした。
大学以前はオーストラリアでの2年間の職務経験があります。高校時代より、環境難民と会う機会があり、それから開発学に興味をもちました。
2.所属コースの概要
コースの強みは
① 日本では取れないコースであること。
② 実践的であり、行動力が何より求められていること。
③ 2ヶ月のフィールドトリップが義務であり、評価の半分は17,000字の修論であること。
授業展開はすべてリーディングをベースにしたディスカッション形式。
弱みは理論が無いところです。知識の全てはケーススタディなので理論を勉強したい人には向かないと思います。先生は人類学者であり、開発の専門ではありません。開発の穴をつくような話ばかりなので、開発を批判することが多いのが特徴です。
クラスメイトの半分はインターナショナル(南アメリカ系がほとんど)で、アジア系は私のみです。基本的にクラスメイトは気さくで優しく、毎週のように何かイベントを開いて飲み会をしています。何か質問があれば、Facebookのグループで連絡がきます。
クラスメイトはほとんど人類学専攻であり、NGOなどでの環境保護、先住民保護活動への参加経験があります。下は21歳から上は34歳と年齢層が比較的若く、どうやら半分はPhDに進むようです。
3.授業の概要
授業名:Population and Development
内容:途上国での人口変化、その原因を文化的背景の違いとし個々のケースを考察する。
感想:ここにきて一番おもしろかった授業の1つです。先生は生粋のフェミニストで、教育、所得、地理、宗教によって人口がどのように変化してきたのかを学びます。毎回20分程度の先生のプレゼンがあり、その後、前もって振り分けられた3つか4つ論文のサマリーを一人ひとり発表します。自分のコメントを添えて、その後皆でディスカッションします。
授業名:Resource Use and Impact
内容:先住民族が保有するエネルギーの問題、それに伴う人権問題など。
感想:今年は主にアマゾンとアフリカ地域を重点的に見ました。現地に住む先住民族のオントロジー法から始まり、貨幣経済に組み込まれることについての弊害、水森空気土などの資源問題、先住民族の居住地の問題、農業と環境破壊、先住民族知識と西洋的知識の衝突等、扱う内容は多岐に渡ります。授業方法は前もって振り分けられた論文(4つぐらい)のサマリーを発表して、その後ディスカッション。先生は授業によって変わります。
授業名:Land, Food and Agriculture
内容:途上国での農業問題
感想:違う学部で、開発計画学科(Development Planning Unit)の授業をオプションでとっています。途上国で起きている農業就業者が対面する諸問題について扱います。リーディングは比較的少なく、授業は講義形式です。評価はエッセイ1本のみです。
4.大学紹介
UCLはロンドン大学本部のすぐ近くにあり、なおかつ周りにSOAS, IOEなどの大学があるので相互に図書館やその他サービスを利用できます。UCLはその中でも一番の規模を誇るので、大抵のことは大学内で済みます(バー、ジム、病院、GP、銀行、簡易ベッドも院生向けに設けられています)。ありがたいのは図書館が週末を除き24時間開いているので徹夜も出来ることです。校風はとても自由で、それはコースの内容にも現れています。院生向けには理系とも文系とも呼べないコースが大量にあります。それに魅力を感じて世界中から面白い生徒が集まってくるので、彼らとの交流はUCLでしか出来ないものだと思います。
5.その他
現在はフラットシェアをしています。歩いて1時間程度かかりますが、気分転換もかねて徒歩通学しています。ロンドンに住んでいると飲み会がかなり多いのですが、ロケーションも良いので深夜になっても比較的安心して飲んでいられます。
6.留学をめざしている人へ一言
UCLは本当に自由で革新的な学校だと思います。私はこの大学で勉強できていることに感謝しています。自分は理論的で詰め込み型の勉強は大の苦手でしたので、ディスカッション形式の授業はとても助かっています。反対に発言力、行動力がないと私のコースは厳しいかもしれません。自分の性格と大学の校風がマッチすることも大切だと思います。