執筆:2024年12月
担当:伴場 森一(London School of Economics and Political Science修了)
はじめまして、五百旗頭 優希(いおきべ ゆうき)と申します。私は2023年6月にカナダのトロント大学(開発学専攻)を卒業し、同年9月から英国サセックス大学の教育開発の修士課程に在籍していました。
大学進学前も、シンガポール、韓国、アメリカ、香港に在住経験があり、日本よりも海外で長く暮らしてきました。海外を転々とする生活を送っていたため、小学生の頃からぼんやりと「国境にとらわれない働き方」がしたいと考えてはいましたが、国際協力への関心が明確になったのは、高校時代に中国・広州でのボランティア活動に参加したことをきっかけでした。香港にあるカナダ系の高校に通っていたため、自然とカナダの大学への進学が視野に入り、その中で開発学専攻を有するトロント大学を志望するようになりました。
トロント大学進学後は、開発学の異なる分野を幅広く学んでいましたが、履修した教育開発の授業が転機となり、教育という軸で国際開発に携わりたいと考えるようになりました。学部卒業後、すぐ就職することも検討しましたが「もう少し開発を、特に教育開発を学びたい」という気持ちがあったため、1年制かつ国際開発分野で評価の高いサセックス大学へ進学することを決めました。
MA International Education and Development (以下: MAIED)は、途上国をメインに、世界の教育課題に焦点を当てたコースです。私の代は約50名所属していて、出身地域はアフリカ、ヨーロッパ、アジア、北米、南米とかなり多国籍でした。一番多かったのはアフリカ出身の生徒で、プログラムの5、6割を占めていました。日本人は私を含めて4名でした。コースメイトの8割以上が教師経験者もしくは教育関係者で、職務経験がないのは5、6名ほどでした。
授業中のディスカッション、課題(エッセイ)、そして修士論文も自分の経験に基づいたトピックを扱うことが推奨されていました。一年を通して「君がそのトピックを取り上げる意義は?」と教授陣やコースメイトに質問を投げかけられます。特に、修士論文はフィールドワークやインタビューなどの「実証経験を積んでほしい」というコースの方針があるため、各々の生徒が持っているコネクションで実現可能なトピックに落ち着くことが多かったです。
私も、修士論文はカナダのアジア系学生の市民教育での経験について執筆しました。「途上国の教育課題について学びたい!」と意気込んで入学したのに「結局カナダかい」という気持ちもありましたが、自分だからこそ書けるトピックを書く良い機会だったと思います。日本以外の国や教育について研究したいという強い気持ちがある方は、入学前に自分の興味のあるトピックに関するコネクションを作っておくと、トピック決めもスムーズに行くと思いますし、入学前と後のギャップが少ないはずです。
1年を通して、開発学と教育学、両方の理論を学び、世界の教育問題やそれに対する国際機関・政府の政策についてディスカッションしました。
秋学期は通年の授業と必須科目を受講します。各授業週2コマ①Lecture(座学)と②Seminar(ディスカッション・プレゼンテーション中心の授業)がありました。
春学期は、通年の授業に加えて、自分の興味のある授業を2つを選択します。秋学期で固めた基礎を、春学期に応用していくイメージです。各選択授業は週1コマで、授業内に座学とディスカッションの両方行うことが多かったです。
通年の授業:
Academic and Research Skills
修士論文の執筆のためのリサーチ方法やフィールドワークのノウハウを教えてくれる授業です。Lectureは大ホールで、School of Education and Social Work所属の他プログラムの生徒と一緒に受けて、Seminarは教室で、MAIEDの生徒だけで受けていました。この授業は、MAIED以外の教授から指導されたり、他の専攻の学生と話せる貴重な時間でした。
Autumn Semesterは、以下の2つの必須科目があります:
Policy and Practice Issues in International Education and Development
国際機関や途上国の教育政策についてグループごとに調べて、プレゼンテーションをする形式の授業が多かったです。一応LectureとSeminarがありましたが、どちらも同じ教室でカジュアルな雰囲気でディスカッションする授業でした。
Theories of International Education and Development
教育学と開発学の理論について学ぶ授業です。Lectureは主に教授が理論の説明をし、途中でグループディスカッションを挟むといった形でした。一方、Seminarは生徒主導で、各週の担当グループが課題図書やその週のトピックについてプレゼンテーションをしました。
Spring Semesterは、以下の5つの専門コースから2つ選びます:
Curriculum, Learning and Society
Gender and Identities: Education, Citizenship and Youth
Global Conflict and Governance,
Quantitative Analysis in International Education
Refugee and Crisis
私はCurriculum, Learning and SocietyとGender and Identitiesを履修しました。
Curriculum, Learning and Society
毎週違うテーマで(例:Indigenous knowledge, digital and media knowledge, sports)、途上国のカリキュラムや指導法の課題についての講義を受け、クラスメイトとディスカッションをしました。ディスカッションが多く、他の授業に比べて、プレゼンテーションをする機会は少なかったです。個人的には、課題図書が多様で面白かったです。
Gender and Identities: Education, Citizenship and Youth
どのように教育がジェンダー観やアイデンティーの形成に影響を与えているのか、またどのような課題が残っているのか学ぶ授業で、プレゼンテーションが多かったです。担当グループがその週のトピックに関連するプレゼンテーションを行い、担当グループ以外も授業内でグループワークに取り組み、すぐ発表をすることが多かったです。
ロンドンから電車で1時間半程のブライトンという海の街に位置している大学です。研究機関The Institute of Development Studiesがあり、開発学では9年連続世界1位の学校です。
私は学内のEast Slopeという(入学時に)一番新しく、家賃も高い寮に住んでいました。どこの寮よりも校舎に近く、学内のスーパーにも近かったため、大変便利でした。また、キッチンは他6人と共有でしたが、専用バスルームがあったため、プライベートも守られていて良かったです。防音もしっかりしていたため、隣の部屋の音が聴こえることもほぼ無かったです。唯一の問題点は、洗濯機がある棟まで毎回移動しなくてはいけなかったことと、洗濯代が高かったことでした。
私は大学院の1年間を振り返って、結局何が良かったかというと①素敵なコースメイトに出会えたこと②ブライトンという街で過ごせたことでした。コースはもちろんですが、大学がある街のことを調べると留学生活がイメージしやすくなると思います。ブライトンのことやサセックス大学のことに関して、質問がある方は気軽に私のLinkedInの方にご連絡ださい。Yuki Iokibeでヒットするはずです。応援しています!