執筆:2024年11月
担当:伴場森一 (London School of Economics and Political Science 修了)
都内の私大の法学部を2023年3月に卒業し、2023年9月から1年間 サセックス大学の修士課程に所属しました。
日本の大学で国際政治について学ぶ中で、人間の安全保障や開発学といった概念に興味を持ち、それらを活かせる職業に就きたいと思うようになりました。開発系、国際系のキャリアには修士号の取得が必須であること、その中で、イギリスが開発学発祥の国であること、修士号が1年でとれる点に魅力を感じ進学を決意しました。開発学×安全保障といった専門性が欲しいと思い、開発学×〇〇のコースが多く、開発学に定評のあるサセックス大学への進学を決めました。
私は、MA Conflict, Security and Development (CSD)は、Global Studiesという学部の中のInternational Relations (IR) という学科の中にあるコースです。Global StudiesはInstitute of Development Studies(IDS) に並んで開発系のコースが多く、日本人学生も多く所属しています。その中でもIR は、私の所属コース以外に3つのコースがあり、学科ごとのガイダンスや選択科目で共に授業を受けます。私が所属した2023/24年は、コースには日本人が3人いて、他のコースメイトは、イギリス、ナイジェリア、パキスタン、リビア、シリア、アルゼンチン、タイ、イエメン、インドネシアなどの出身の学生で構成された25名程度のコースです。Global Studiesの他のコースが15〜20名であることに対し、サセックスの中では比較的規模の大きいコースでした。
サセックス大学の修士コースは、10月から1月までの秋学期、1月から5月までの春学期、そして5月から8月までの夏学期の三つの学期で修士号を取得するものになっています。
1学期目である秋学期は、必修科目2つとCore Skillsというアカデミックライティングや資料収集方法等のモジュールから成り、予め登録されています。
秋学期の授業
【Conflict, Security and Development】(必修科目)
このモジュールは、コース名を冠したものであり、紛争、安全保障、開発学について学ぶ上での基礎知識や理論を扱っています。コース全体を半分に分けた12〜13人のクラスで週に1時間はレクチャー、後半の2時間はセミナー(計3時間)という形で進んでいきます。
レクチャーでは安全保障と開発学の繋がりとネオコロニアリズムに焦点を充て、そこから派生して様々な理論を学んでいきます。そして、その後のレクチャーで国際機関やI/NGOの資料を読み、プレゼンテーションやディスカッションを行います。
評価は中間エッセイ1000 words(30%)+期末エッセイ4000 words(70%)です。
【New Security Challenges】(必修科目)
このモジュールは、今日問題となる新しい安全保障問題について、毎週異なるトピックで学んでいきます。テロやAI、環境や芸術品に至るまで幅広い範囲で学ぶため、自分自身が安全保障の中でも特に何に関心があるのかについて考えるきっかけとなります。
このモジュールは、前述のCSDの他にMA in Geopolitics and International Affairsの必修モジュールとして登録されており、レクチャーは2つのコース全員が集まり、講義を聞きます。セミナーでは、コース混合で2つのグループに分かれ、1グループ20名程度で行います。
評価は期末エッセイ5000 words (100%)です。
春学期の授業
【Humanitarianism in Global Politics】(選択科目)
このモジュールは、人気モジュールかつGlobal Studies内の複数のコースに開かれているため、枠が早々に埋まってしまい、早めに登録した人以外は履修できなかったようです。
このモジュールでは、人道主義の歴史や成り立ちといった基本的な理論から、宗教との関係、人道支援する側に関わる問題や労働環境についてなど体系的に人道支援、人道主義とはなにかについて学びます。この授業を受けていた時期にはガザでの状況が悪化していることもあり、授業内のディスカッションでは何度も言及されていました。人道主義は、宗教や植民地主義との結びつきが強いため、様々なルーツを持つ学生と議論することで理解が大変深まりました。
評価は中間エッセイ1000 words(30%)+期末エッセイ4000 words(70%)です。この授業の期末エッセイは、テーマやアウトラインについて教授とディスカッションする機会が設けられていました。
【Foreign Policy analytics】(選択科目)
この授業では、外交政策の決定プロセスについての分類や具体例について学んでいく授業です。理論を学ぶほかにも外交シミュレーションゲームなどを通して、実際の外交政策にはどのような要因が影響を与えているかを検討していきます。外交政策という特性上、学生に対して「あなたの国ではどうなの?」という質問をされる機会が多かったです。日本人学生が私しかおらず、東アジアの学生も他に居なかったため、日本の外交政策について十分な理解を持ったうえで授業に参加する必要がありました。
評価は期末エッセイ5000 words (100%)です。この期末レポートは、テーマも一任されているため、教授と積極的に連絡を取り合い計画的にテーマを決めて書き始める必要がありました。
【Research Methods and Professional Skills】(必修科目)
修士論文の書き方や気を付けること、調査方法を学ぶ授業です。期末課題として2500 wordsのResearch Proposal(研究計画書)の提出が求められます。
夏学期
【Dissertation】
夏学期は8月末に締め切りのある10,000 wordsの修士論文の執筆期間として設けられています。指導教官は2月に書きたいテーマ若しくは希望する指導教官をもとに割り振られます。この時点で明確なテーマが決まっている人や指導してほしい指導教官が決まっている人はあまり多くないので、指導教官について希望を出していれば通る可能性が高いです。
指導教官は、基本的に自分から連絡を取らなければ対応してもらえないため、Research ProposalやDissertationの提出スケジュールから逆算して指導をお願いする必要があります。また、7~8月には研究休暇やバカンスを取る指導教官も多いため、どの時期まで対応してもらえるのかを事前に聞いておくとよいと思います。
サセックス大学はイングランド南部のブライトンという街にあります。ブライトン中心部からは、電車で10分、バスで30分ほどでキャンパスのある国立公園のエリアまで来ることができます。ロンドンまでも1時間半ほどなので、普段は地方でしっかりと勉強をして、たまにはロンドンで楽しみたい方にお勧めです。大学内に(かなり高いですが)スーパーや郵便局、薬局やGPなどがそろっているため、キャンパスから出ることなく生活することができます。
また、開発学で有名なため、イギリス国内の大学の中で日本人が多い大学です。特に、修士の学生には私のように学部卒業してからすぐ入学する人達だけでなく、社会人を経験してから来られる方も大変多く、私も様々な方に就職のお話しをうかがい、たくさん助けていただきました。
留学生も多く、国立公園の中という敷地の広さから学内でも様々な国や文化のイベントがよく開催されています。学内のパブでのイベントもあるため、夜間に街まで出なくても安全に楽しめるのもサセックス大学ならではの良いところではないでしょうか。
留学は渡航するまでの準備期間と比べると渡航中は一瞬で過ぎていきます。自分が留学中に成し遂げたいことの優先順位を決めておくことで充実した時間を過ごすことができると思います。サセックスの私のコースや似た内容のコースで質問があればいつでも連絡ください。LinkedInで名前を検索していただければ出ると思うので、お気軽にどうぞ。