執筆:2025年1月
担当:鈴木麻由(University of Sussex, IDS)
はじめまして、加藤里咲と申します。私は2017年に創価大学を卒業後、インドのITサービス企業の日本支社(日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ)にてキャリアをスタートさせました。業務面ではインド駐在での経験や、システム保守運用サービスの提供、自社AI製品チームでブリッジエンジニア(社内やクライアント、また本社チーム間の架け橋となってプロジェクトがスムーズに進むようにサポートする職種)を担当する等、様々な業務を経験しました。その後、アクセンチュアに転職し、ITコンサルタントとしてプロジェクト推進やシステム改革に向けた現状分析など、幅広い業務に従事しました。さらに、英国の監査法人(EY新日本有限責任監査法人)のサステナビリティチームにて、コンサルタントとして気候変動や人権分野でのサービス支援を担当し、現在は休職中で、サセックス大学のIDS(Institute of Development Studies)にて、貧困と開発(MA Poverty and Development)を専攻しています。
理由は主に3つあります。
(1)大学時代のメキシコへの留学
留学のきっかけは、高校生の時にJICA海外協力隊として海外に滞在している日本人が特集されている番組を偶然見たことで、自分も苦しい状況にある人々や社会に貢献したいという漠然とした思いを抱いたことでした。
留学先としてメキシコを選んだのは、第二言語を習得できることに加え、中進国として発展途中の現状を自分の目で確かめたいと考えたためです。
交換留学で1年間滞在したメキシコで、日常的に物乞いにあったり路上で生活している人を目にし、電気の不安定さなど脆弱なインフラを経験しました。留学中は水や電気がない村で、短期間でしたが教育や物資支援のボランティアに携わり、将来は困窮状態にある人々や生活の改善・向上に貢献したいという思いが強くなりました。
(2)新卒で勤めた会社でインド駐在の経験
インド駐在では主にオフィス勤務だったのですが、メキシコと同様、オフィス前で物乞いをする人や路上で生活する人と遭遇したりするなど、電気や水などのインフラの脆弱性に加え、ディーゼル車の普及による排気ガスからくる大気汚染など環境面に目が向くようにもなりました。この経験から、持続可能性を考慮しながら社会や人々に貢献したいという思いが、より一層強くなりました。
(3)IDE-JETROの国際開発研修や現職での経験
元々、留学を経験した際に抱いていた思いは企業勤めをしている間に消えると思いつつ、それが10年経っても消えないなら、大学院で学んでみようとなんとなく考えていました。2社目での在職中に、IDE-JETROの国際開発研修(IDEAS)やUNICEFの国際協力講座を受講し、企業視点から実現可能な社会への貢献の一つとして「サステナビリティ」に特化したコンサルティング支援に携わりたいと思い、転職しました。入社して気候変動分野での支援に携わる中で、気候変動から発生するような自然災害や環境への影響による被害を受けるのは、十分な対策ができていない発展途上国や人々であるという考えに至り、企業以外の視点で途上国の課題を考えたくなり、大学院進学を決意しました。専攻選びは、留学や駐在の経験から、「貧困」というキーワードが自分の中にあったことや、多様な状況や問題の根源の1つに貧困が存在するのではないかという考えから、Poverty and Developmentを選択しました。
Wellbeing(Poverty and Inequality: Core module in Autumn term)
Poverty and Inequalityという専攻コースのコアモジュールでは、多角的な視点で貧困と不平等の事象を学ぶのですが、その中で特に面白かったのはWellbeingに関する授業でした。貧困を測定する際、通常は家庭や個人の所得・支出といった金銭的状況や健康・教育・生活水準といった複数の側面も考慮します。この授業では、これらの基準に基づき客観的に貧困を測定するだけでなく、貧困状況にある人々が自らの状況をどのように捉えているかといった満足度(Wellbeing)の観点から貧困を考えるという内容で、実際にこの観点で調査を行った方が講義を行っていました。金銭的状況など目に見える、測定可能な視点で貧困を評価するのだと考えていたため、個人の気持ちや感情も含む新しい視点で貧困を捉えることの可能性や重要性を認識することができ、非常に興味深かったです。
セミナーでの発言が非常に苦手で、毎回苦い思いをしながら1回1回を積み重ねています。クラスメイトの発言内容が理解できなかったり、自分の発言内容にぽかんとした顔をされたり(笑)、と何かしらの壁に当たる日々ですが、1日1回は発言しようと心がけています。また、授業に向けたリーディングの際に意見や質問を準備するようにしなんとか乗り切っています。専攻の特性上、自国の貧困の状況や社会保護の現状やサポートに関する意見を求められることも多いのですが、日本という安定した環境で、不自由なく過ごしてきた自分は、都市・田舎間の違いや男女間での差異といった意見しか出てこず、自身の無知を痛感する日々です。行き詰まった時には親しい友人に相談したり、セミナーやレクチャーの先生にメールをしたり、オフィスアワーに訪問して質問や相談をしたりするなど、一人で抱え込みすぎないように気をつけています。
卒業後は、進学直前まで勤務していた会社に復職し、引き続きサステナビリティの領域で企業向け支援を行う予定です。ただ、クライアントの利益だけでなく、大学院で学んでいる社会的な視点や、企業の先に存在する社会や人々を意識したサービスや業務に貢献していけたらと考えています。また、社内には国際開発やODAのプロジェクトに従事するチームがあり、社外でも学んだことが活かせる場が数多くあるので、関連業務にいつか従事できればと思っています。
海外大学院への進学となると、決して安くはない学費に加え、生活や語学面などさまざまな不安や思いが募ることもありますが、それでも、自分が学びたいことや究めたい内容、興味・関心があれば、どうか諦めないでほしいと思います。社会人の方にとっては現在の生活を手放すことや、今後のキャリアに対する不安もあるかもしれません。私も進学について悩んでいた際に、一足先に同大学院に留学していた先輩が「純粋に学びたいことを学びに来るのでも、いいんじゃないかな?」と声をかけてくださいました。 これから留学を目指す方にとっても、この言葉が少しでも後押しになれば嬉しいです。