執筆:2009年1月
自己紹介
昨年度(2007/8年度)SOASに入学し、現在学部の2年目に所属しています。高校の時に「国際開発」という学問があることを知り、開発学に定評のあるイギリスの大学に進学することを決めました。高校卒業後1年間は都内の留学機関にて英語を勉強し、その後渡英しました。渡英後1年間はカンタベリーのカレッジでファウンデーションコースを取得し、その後現大学入学という経歴です。
所属コースの概要
私が所属するコースはBA Development Studies and Linguistics(開発学と言語学)というCombined Degree(アメリカでいうダブルメジャー)です。SOASの学部課程では開発学のみの履修は不可能で、他にもう一つの科目と組み合わせて履修します。私は言語学との比較的珍しい組み合わせですが、多くの生徒は経済学や政治学、人類学や他の言語と組み合わせて専攻しています。
1年間で、各科目から2単位ごと、合計4単位を取得します。1年時はほとんどが必須科目ですが、学年が上がるごとに選択科目も増え、興味に応じて様々な科目を組み合わせることができます。また、half unitと呼ばれる1単位の半分に値する科目もあり、秋学期と春学期でそれぞれ違う科目を選択することも可能です。他にfloaterと呼ばれる単位があり、自分が専攻していない科目から単位を専攻することもできます(学部や教授からの承認が必要)。それだけでなく、ロンドン大学の他のカレッジ(University College Londonなど)の科目も選択することが出来ます。
開発学のコースでは、イギリス人学生と留学生の比率はだいたい7:3くらいです。留学生は、ヨーロッパ各国、中東、アフリカそしてアジアからと様々です。SOASと提携している日本や韓国、そしてアメリカの大学からの短期交換留学生も多数います。SOASにはきわめて珍しいバックグラウンドを持った学生がたくさんおり、イギリス人といっても移民家族の出身であったり、片親が海外出身であったりして、数カ国語話せる人を見つけることは難しくありません。途上国と言われる国から来ている学生もいるので、ディスカッションなどを通してその国の現状を知ることができるのが良い点です。
授業全体について
SOASは3学期制で、秋学期、春学期、そして夏学期に分かれています(ちなみに夏学期は基本的に授業なしのテスト期間)。イギリスの大学特有の、学期の中間にある1週間ほどの休み(reading week)は秋学期、春学期にそれぞれ1週間ずつあります。各学期の間には、クリスマス休暇が3週間、イースター休暇が1ヶ月、そして夏期休暇が3ヶ月ほどあります。
授業は理論重視です。特に1年次は基礎として理論を多数身につけることを必要とされます。先ほどもあげましたように、途上国から来ている生徒から現地の実情を知ることができるのはとても刺激的です。しかしフィールドワークは授業に含まれていないので、自らの目で実情を確かめたい場合には、個人的に赴くことになります。
授業の雰囲気はとても活発です。講義では教授がときどき冗談も交えながら興味深い話をしますし、チュートリアル(日本でいうセミナー)ではディスカッションやディベート、そしてプレゼンテーションをします。ディスカッションやディベートでは意見が活発にかわされます。プレゼンテーションの有無は授業によりますが、大抵のクラスは最低1学期に1回自分の番がまわってきます。パワーポイントなどを使用した大掛かりなものから、読んだものの要約を発表するだけというものまで様々です。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名:Theory and Evidence in Contemporary Development
内容・感想:
これは2年次の必須科目です。コースの名前からわかるように、様々な国のケーススタディーをもとに、理論と実証の関係を分析するという概要です。構造調整、難民、紛争、戦後の復興、国際財政、農業改革など開発に関する様々な議題を、論理的そして実証的アプローチ(データ分析等)両方の視点から考察します。講義は1週間に1回2時間あり、チュートリアルは週に1回1時間です。
主となる教授はいますが、議題により専門の教授が変わるので、いろいろな教授の講義を聞くことができます。毎授業ごとに読むべき文献が定められており、チュートリアル前にそれを読むことが義務とされます。そしてチュートリアルではそれに基づいたディスカッションが行われます。プレゼンテーションは2学期目から始まりましたが、文献を要約して発表するという比較的簡単な形式です。評価の方法は、1学期と2学期にそれぞれ1つずつ提出するエッセイ(各2,500文字)が30%(各15%)、3学期にあるテストが70%という極めてテスト重視の比重となっています。
授業名:Politics of Development
内容・感想:
これは政治学部のコースで、2年次の選択科目です。コースの目的は、政治的要素がどのように経済発展に影響をおよぼすか考察するというものです。主に政府の経済介入に焦点を当て、様々な国のケーススタディーと政治経済的理論をもとに分析します。コースの前半はアフリカに、後半はアジアと南米にそれぞれ焦点を当てます。講師も前半と後半とで変わります。講義・チュートリアルの形式は上記のコースとほとんど同じですが、このコースのチュートリアルはプレゼンテーションがありませんでした。評価の方法は、1学期と2学期にそれぞれ1つずつ提出するエッセイ(各最大3,000文字)が20%(各10%)、3学期目にあるテストが80%という比重です。こちらのコースもかなりテスト重視となります。
大学情報
SOASのキャンパスはRussell Square(メインキャンパス)とVernon Squareにわかれています。どちらとも地下鉄の駅から徒歩5分ほどの便利な場所にあります。Russell Squareキャンパスは特に環境に恵まれており、緑が多く、大英博物館が徒歩5分の場所にあります。SOASの図書館は他では見つけられないアジアやアフリカの専門文献が豊富に揃っていることで有名です。英語はもちろん、アジア・アフリカ各国の言語で書かれた文献も多数あります(もちろん日本語の本もあります)。
学生寮は各キャンパスの周辺に複数あります。私は昨年King’s Cross周辺のSOAS学生専用寮に住んでいましたが、立地的には非常に便利でした。Vernon Squareキャンパスへは徒歩3分、メインキャンパスへは徒歩15 - 20分ほどです。部屋は一人でちょうど良いくらいの広さのen-suite(シャワー・トイレ付き)です。キッチンは他5人のフラットメイトとシェアしていました。ネット環境も整っています。友達の輪を広げるには良い環境ですが、静かさとプライバシーを重視されるかたにはおすすめしません。
SOASは開発学を勉強されたい方にはかなりおすすめできる大学です。まずSOASの開発学独特のものとして、国際開発を司る国際機関(世界銀行やIMF、国際連合など)を批判するという姿勢があります。これは他の大学では見られないものなので、とても新鮮ですし、開発の視点を広げることができます。さらに、SOASは開発学の分野で広く認められているので、国内海外関わらず有名な教授が講演に訪れることが数多くあります。また、SOASと他5つの大学(University College London, London School of Hygiene and Tropical Medicine, Institute of Educationなど)の協力によって2007年度に新しくできたLondon International Development Centreにより、ますます国際開発関連の情報やイベントへのアクセスが増えました。SOASは開発学を勉強する環境が非常に整っていると感じます。