執筆:2009年1月
自己紹介
大学卒業後、金融機関にて約7年間勤務。退職し、日本の大学院にて経済学修士を取得した後に、現在の大学(SOAS)に来ました。留学した理由は、サブサハラアフリカの研究をより深めたいとい考えたからです。
所属コースの概要
私の所属するコースは、Department of Economics(経済学部)に7つあるコースのうちの1つです。「with reference to 地域名」と名のつくコースは、私のコース以外に3つあります。それらとDevelopment Economicsのコースの違いですが、前者はその地域名の付く授業を2つ取らなければなりません。一方、後者は自由に選択することができます。ただし、後者のコースの生徒が同じ地域名のつくコースを2つとった場合には、強制的に「with reference to 地域名」の学位が授与されることになります。Departmentの生徒ですが、イギリス人とヨーロッパからの留学生が大半を占め、アジアやその他の地域からの留学生は少数です。
授業全体について
Term1、Term2とTerm3の3学期制。Term1と2(各々10週間)のみ、授業があり、各Term内で授業は完結します。Term3は試験のみです。授業の選択ですが、「with reference to地域名」のコースは、必修科目が7つ・自由選択が1つであり、選択の自由はないに等しいといえるでしょう。なお、Development Economicsは必修5つ、自由選択3つです。Term期間中には1週間のReading Week(ターム中間にある1週間の休み)という名の休みがあり、勉強する人もいれば旅行に出る人もいます。私は後者です。授業は、理論中心です。つまり、本や論文を読むことです。ケーススタディや開発の実務について学ぶ機会はありません。授業では、生徒が先生に質問する光景がよく見られ、先生はそれに対してしっかりと応対しています。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名:Microeconomics
内容・感想:
Term1の授業。週2回、講義のみの授業。10週間が前後半に分割され、前半は外部性やゲーム理論といったミクロ経済学のテキストの後半部分に取り上げられる応用にあてられ、後半は消費者・企業の理論や一般均衡理論といった典型的なミクロ経済学の理論にあてられました。前半部分のゲーム理論等はほんの触りの部分だけです。後半の理論部分は、Varianのテキストと同レベルです。授業では数式が用いられますが、テストには数式問題は一切なく論述問題です。例えば、双対性の意義は何か、といった問題です。成績評価は、テスト70%、エッセイ30%。
授業名:African Economies 2
内容・感想:
Term1の授業。講義とセミナーからなる授業。工業化、貿易、地域統合、援助や負債といったマクロの視点から、サブサハラアフリカの経済を概観する授業。国際機関のレポートを土台として授業が組み立てられています。よって、経済理論や計量経済学を用いた論文はほとんど授業では登場しません。様々な国際機関のサブサハラに関する各種レポートを要約したものを先生が話している、という形の授業です。セミナーは、生徒による著名研究者の論文内容の発表。授業に比べ、セミナーは個人的にはあまり有益であるとは思いませんでした。成績評価は、エッセイ30%、試験70%。
授業名:Qualitative Method 1
内容・感想:
Term1の授業。計量経済学の授業。講義と演習からなります。内容は、OLS。学部レベルの計量経済学と全く同じ内容。計量経済学を学部等で一度でも勉強したことがある人ならば、苦労はないと思われます。勉強されたことがない場合、先生の説明は大変丁寧ですので十分についていくことができると思います。演習で用いられる計量のソフトはEviewsです。成績評価は、試験100%。
授業名:Growth and Development
内容・感想:
Term1の授業。開発経済学の授業。講義とセミナーからなります。日本の書店で手に取ることができる「開発経済学」と名のつく本の内容と同じレベルと考えてもらえばいいでしょう。よって、数式は一切出てきません。成績評価は、エッセイ30%、試験70%。
大学情報
ロンドン大学のほとんどすべてに共通することですが、SOASにキャンパスと呼べるものはなく、ビルだけです。SOASには学部生用と院生用の寮の2つがあり、その近くにVernon Square Campusがあります。メインのキャンパスは、そこから徒歩で20分程度のRussell Square Campus。授業毎にキャンパスが異なる人は苦労するでしょう。メインキャンパスに学食はありますが、日本の生協のように安くはありません。よって、午後1時ごろに、無料で食事を配るサービスがメインキャンパスにやってくるので、それで済ませている人も多いです(無料であるが、カンパ箱がある)。
その他の情報
SOASの修士以上の学生は、LSEとUCLの図書館を他のロンドン大学の人よりも自由に利用できます。例えば、本を借りることが可能(大半のロンドン大学の修士以下の学生は閲覧のみ)。