執筆:2007年9月
略歴:
大学卒業後、アフリカで活動している日本のNGOに8年在籍。日本事務所における4年間の勤務の後、アフリカのチャド共和国にコーディネーターとして派遣さる。派遣期間中、1年間は国連ボランティアの資格で同業務に従事。現地にて、UNHCRとの交渉なども担当。NGO退職後、1年間、国際協力機構より農村開発専門家としてチャド国に再度派遣される。
業務終了後、渡英して開発学の修士コースに参加。
・学校全体の紹介
The University of Reading URL: http://www.reading.ac.uk
レディングの街はテムズ谷に位置するハイテク・センターとしての街としても知られ、美しい景観を有する。また、ロンドンとオックスフォードそれぞれから、列車で約30分という場所にも位置する。
レディング大学は、オックスフォード大学の分校として1892年に設立された。現在、大学全体として約15,000人の学生を有し、そのうち30%は大学院の学生である。大学は留学生を歓迎する強い伝統を有し、彼・彼女らの出身国は135国以上にも上る。(以上、パンフレットより)
・専攻しているコースの紹介
The School of Agriculture, Policy and Development
Graduate Institute of International Development and Applied Economics(GIIDAE)
http://www.apd.rdg.ac.uk/apdgraduateinstitute.htm
(ホームページに取得可能コースが紹介されている)
GIIDAEは、the International and Rural Development Department (IRDD)とthe Department of Agricultural and Food Economicsが2006年に合併されて設立された。従って、GIIDAEはより広範で学際的なプログラムを学生に提供することが可能となっている。授業は自然科学と社会科学を組み合わせて行なわれており、理論面と実践面が充実している。(以上、パンフレットより)
〔しかし、実際には授業は国際開発系と経済・農業開発系にはっきりと分かれており、それぞれの系列の学生が同一の授業を取ることは滅多に無い。〕
・特徴
学生の多くが開発に関わっている、もしくは関わったという経歴を持っているため、ディスカッションの中身はより実践的なものになっている。また、全体として成熟した学生が多い。
・生徒
英国学生が1/4程在籍している他、アジア(日本、中国、台湾、ブータン、ネパール、パキスタン、インドなど)、アフリカ(ジンバブエ、マラウィ、マリ、ガンビア、ガーナ、ケニヤ、タンザニアなど)からの学生が在籍している。英国学生は開発に関係のないバックグラウンドから来ているものもいるが、社会学に造詣の深い学生もいる。アフリカからの学生は殆どが政府からの派遣で、アジアからも政府もしくは団体からの派遣である学生がいる。また、開発の現場で業務を経験し、開発学の再勉強を志望する学生も多い。年齢は20代中盤から30代後半、40代始めぐらいまで。
・教員、授業内容や進め方
教員:ホームページ参照のこと
進め方:一部教授は、オンラインシステムを活用した授業のサポートをしている他、授業中はディスカッションも含め、パワーポイントやビデオなどを使用して進めている。学期中にアセスされるプレゼンテーションを課す授業もある。
科目履修システム:修士号取得に必要な単位は180単位であり、そのうち修士論文は60単位を占める。各コース毎に必修科目、専門科目が配されている他は、バラエティに富んだオプション科目が配されている。オプション科目の取捨選択は自由度がかなり高い。
アセスメント:試験とエッセイに分かれている。どちらか一方、もしくは両方を配するモジュールがある。また、場合によってはプレゼンテーションやディベートもアセスメントの対称となることもある。1モジュール内のアセスされる課題は、総合して100%となっている。例えば、エッセイ50%で試験が50%の場合もあれば、もっと細かく、プレゼンテーションが20%、エッセイ40%、試験40%などの場合もある。
・修士論文
テーマ:コースによって様々である。開発全体を取り扱うものもあるし、マイクロ・ファイナンス、ジェンダー、サステイナブル・ライブラリフッズ・フレームワーク、教育、開発経済、ボランティア、開発とコミュニケーションなどなど。
自分のテーマ:“To what extent can local organisations contribute to participation for development: their potential and constraints”
作成の流れ:コースや指導教官によって作成の流れは異なるが、共通しているのは12月頭に簡単な論文タイトル(仮)、内容、背景などを提出、それに基づいて指導教官が決定される。その後は教官毎に指導が行われるが、基本的に論文タイトルを決め、その決定過程でより詳しい背景、リテラチャー・リビューの作成、論文構成(仮目次)、作成スケジュール、調査方法などを絞り込むことは、全ての学生が行っている。作成の開始時期も教官毎によってまちまちだが、おおよそ2月頃に最初のミーティングが持たれた後は、5月末頃までに最初の1章(リテラチャー・リビュー)の作成を指示する教官や、5月末頃に論文作成計画を提出させる教官もいる。提出日は9月上旬の金曜日。
・コースの雰囲気
学科全体として非常に和やかな雰囲気を有する。教授陣も非常に気さくな人々であり、オープンな雰囲気を持っている。国を超えた交流が可能。
・卒業生の進路
まず、政府やその他の団体から派遣されている学生は、所属先に戻る。その他、国連職員やNGOに就く学生も少数だがいる模様。しかし、開発関係での求職が少ないこともあり、特に英国学生は開発関係への就職を希望するも、適わないケースが見受けられるように思われる。そうでなければ、皆、思い思いの就職先へ進んでいく。就職サポートは概して弱い。
・Admission
経験を有する学生に対しては積極的にオファーを出しているように思われる。私の場合、5年に亘る経験を有していたので、申請した月に英語の条件付きながらオファーが早速来た。学費は決して安くなく、17,000ポンド相当を有しているという銀行残高証明を送付しないとオファーがアンコンディショナル(=入学許可)にならない。ちなみに、学費はこの半額の8,500ポンドで、残りの半額は1年間の住宅費と生活費である。すなわち、学費が払えても生活出来ない学生には入学許可が降りないということである。
条件:
大学卒業後すぐから入学可能だが、数年の経験を有することが望ましい。
英語条件:
British Council International – English Language Test Score (IELTS): 6.5
Test of English as a Foreign Language (TOEFL) (Paper-based version): 570
Test of English as a Foreign Language (TOEFL) (Computer-based version): 230
Cambridge UCLES Certificate of Proficiency in English (COE): C
Test of English for Educational Purposes (TEEP): 6.5
アドバイス:
出願は早ければ早い方がいいと思う(例えば入学希望の前年11月から12月頃)が、出願がかなり遅くても手続きさえ済めば学期が始まっても入学許可は降りるので、トライする価値はあると思う。
ただし、授業への参加が遅れればそれだけ課題をこなすのが大変になるので、やはり早めに手続きを進めたい。また、英語に不安がある人は、同大学が実施している英語コースを取得することをお薦めする。早ければ4月からの半年のコースがあるが、7月からの3ヶ月コース、それよりも短いコースもあり、英語のレベルに応じたコースの選択が可能である。ちなみに、このコースを取った後にレディング大学の大学院に行く場合、大学院のIELTS要求レベルを0.5ポイント下げてくれるというおまけもある。