執筆:2008年5月
1. 学校紹介
レディング大学は、イギリス中央部に位置するレディングという町にあります。レディングは、ロンドンから西へ電車で30分強、ヒースロー空港からバスで40分強の範囲にあり、更にイギリス全土への鉄道路線を有するターミナルの役割を果たし、交通の便に優れた場所です。
そのような利便性を持ちつつも、駅周辺の繁華街を離れると、緑が多く、静かで穏やかな住宅街が広がっています。その町並みを30分ほど歩くと、公園のようなキャンパスが見えてきます。それが、レディング大学 Whiteknights Campus です。
同Campusは、手入れが常にされている緑豊かな広場、鴨や白鳥が時折家族で姿を見せる湖、近代的な建物がバランスよく配されており、その総面積は130 ヘクタールといわれています。その他、駅から徒歩15分のところに位置するLondon Road Campus、レディング東部に位置するBulmershe Campusがあります。
レディング大学は、1892年にオックスフォード大学の分校として創設されました。1926年に大学としての設立認可証を得、80年を経た現在では、経済・社会学部、芸術・人文科学学部、理学部、生命科学学部の4つの学部に分かれる総合大学として幅広い分野における学術実績を積み上げつつあり、全英ランキング(2007年)において、110大学中31位に位置しています。
2. プログラム紹介
レディング大学の国際開発プログラムは、生命科学学部下に配しているGraduate Institute of International Development and Applied Economics (GIIDAE) によって展開されています。International and Rural Development Department (IRDD)とDepartment of Agricultural and Food Economicsが合併され、GIIDAEとして2006年に設立されました。
GIIDAEは、国際開発、農業経済、食品経済の分野を網羅するTaught ProgramとResearch Programを提供しており、大学学部を修了した学生(Post Graduate)のみを対象としています。1年で修了するTaught Program(2年で修了するPart-timeのコースもあります)は国際開発コース、経済コースの2コースから構成され、前者は8プログラム、後者は3プログラムを提供しています。Research Programは、2年で修了するMPhilコース、3年または4年で終了するPhDコースに分かれています。
GIIDAEの提供プログラムの詳細は、http://www.reading.ac.uk/apd/pg-taught/apd-pgtcourses.asp(Taught Program)、http://www.reading.ac.uk/apd/pg-research/apd-pgrabout.aspResearch Program)をご覧下さい。
3. GIIDAE国際開発コースの全体像
授業
進め方:授業は、理論と実務を相互補完するような進め方で行われています。理論面については、各テーマについて、パワーポイントを利用した説明が行われ、実務面については、そのテーマに関するビデオなどの視覚教材(BBC、UNやInternational NGO等が作成したノンフィクション、ドキュメンタリー)を使用して進められます。
視覚教材を利用する以外に、学生が、テーマに関連した自国での経験などをプレゼンすることもあります。前半は講義、後半はビデオ、或いは学生のプレゼンテーション、それらを基にしたグループディスカッション、という授業の流れが主のようです。
また、Blackboardと呼ばれるオンラインシステムが各科目に用意されており、授業の予復習のサポートとして活用されています。Blackboardには、教官が講義で使用したプレゼンテーションファイルの他、授業の関連資料(論文、新聞や雑誌の掲載記事)が閲覧できるようになっています。
教官は、各プログラムのディレクター、後述の修士論文のスーパーバイザーを兼ねています。
科目履修システム:修士号取得に必要な単位は180単位、そのうち修士論文(Dissertation)が60単位、自分の在籍プログラムのチュートリアルが10単位を占めます。各コースに必修科目(Compulsory Module)1つ、専門科目(Specialist Module)が2 - 3つ配されている他は、バラエティに富んだ選択科目(Optional Module)が配されています。
必修科目は、国際開発コース共通のPerspective on Development(開発学概論)、専門科目は各プログラムの専門性に拠ります。選択科目の取捨選択は学生の裁量に任されており、GIIDAE以外の授業を選択することも可能です。在籍プログラムが異なるにも拘らず、受講科目が全て同じだったということもあるようです。
アセスメント:試験、エッセー(課題文)、プレゼンテーションの3種類がアセスメントの方法として採られています。各科目によって、それらの組み合わせは異なり、エッセー100%のみの場合もあれば、グループプレゼンテーション20%+レポート10%+エッセー70%などの場合もあります。
試験は、学期中盤、或いは最終週に行われる場合と、4月中旬から始まる夏学期にまとめて行われる場合があります。
学生構成
国際開発コース全体で、60人強です。これは、1年で修了するFull-time、2年で修了するPart-timeの学生両方を含みます。
2007/08年度の学生の出身国構成は、アフリカ出身者が7割強を占め、その他をEU圏、アジア圏(中国、パキスタン、ブータン、インド、ネパール、マレーシア、日本)の出身者が占めます。今年度、同コースに所属した日本人は1人でした。
応募条件に「開発実務経験があることが望ましい」とされており、実際、政府、NGOや開発援助機関等で実務経験を積んだ学生が8割方を占めます。そして、その多くは、出身国政府からの派遣生の立場であったり、あるいはBritish Council等の奨学金給付団体の支援を受けたりしています。平均年齢は、30代前半くらいでしょうか。
実務経験を有する学生が多いため、授業中のディスカッションやプレゼンテーションでは、自らの実務経験にて得たこと、悩んだこと、疑問に感じていたことを発言することで共有し、お互いに学び合っている場面が多々あります。
修士論文(Dissertation)
10月中旬より、上述のプログラムチュートリアル等を利用して、「どんなテーマで研究をしたいか」を明確にする作業から、プログラムディレクターと一緒に準備を始めます。11月末に最初のプロポーザルを提出し、テーマに基づいてスーパーバイザーが決まります。
スーパーバイザーとプログラムディレクターが異なる場合もあります。そのような場合においても、国際開発コースは、プログラム間の敷居が低く、またプログラムディレクターとスーパーバイザーを兼ねる教官と学生の日常的な距離が近いので、あまり問題にはならないようです。
その他
英語サポート
EU圏外からの留学生に対しては、秋学期、春学期、夏学期を通じて、In-sessional Courseと呼ばれる課外英語研修が語学センター(Centre of Applied Language Studies)によって行われています。Writing、Speaking、Pronunciationの3つから成り、自身のプログラムの時間割と調整して、好きな授業を無料で受けることができます。
受講のおまけとして、自分の受講クラスの先生による、自分の英語の使い方のクセ、注意を要する点、英語の学習方法等について、カウンセリングを受けることもできます。
催しもの
毎週火曜日夕方に、イギリス内の大学、或いはOverseas Development Institute、DFID(英国開発庁)からゲストスピーカーを招いて、国際開発の現場にて行われていることを紹介する講座が設けられています。その内容は、DFID、World Bank(世界銀行)、AfDB(アフリカ開発銀行)UN関連機関の実施しているプロジェクト、そこで導入されている技術、或いは国際開発に纏わる学術研究の紹介であったり、援助協調、気候変動、HIV/.AIDS等のテーマについての講演であったり、と多種多様です。
その他、不定期ですが、教官が現在自ら行っている研究の紹介をする時間もあります。
4. レディング大学 GIIDAE国際協力コースへ入学するためには
応募に際し、2年以上の実務経験を有することが望まれています。しかしながら、イギリス内外の大学、Foundation Courseを修了後、すぐに入学している学生も少数ながら在籍していることから、必ず満たすべき条件ではないようです。恐らく、実務経験の有無より、Curriculum Vitae(英文履歴書)や、「なぜ、レディング大の○○プログラムで勉強したいのか。そして、何を学びたいのか。」を明記したStatement of Purposeを入念に準備するほうが、重要なのではないかと思います。
その他、英語を母国語としない留学生には語学条件が付されています。語学条件を達していない場合、10月のプログラム開始前に行われるPre session Program(語学研修)の受講することが義務付けられる他、研修最後に行われる最終試験にて規定点数を通過すること、自主研究のプレゼンテーションの合格が課されています。
応募についてのURLは以下の通りです。
各プログラムの応募条件:
http://www.reading.ac.uk/apd/pg-taught/apd-pgtentryrequirements.asp
レディング大学Post graduateプログラムへの応募方法(全学共通):
http://www.reading.ac.uk/Study/apply/pg-applyhow.asp
生命科学部の語学条件:
http://www.reading.ac.uk/Study/international/study-english.asp
執筆者略歴
出井 里佳(いでい・りか)
大学院(社会基盤工学(建設マネジメント)専攻)修了後、開発コンサルティング会社に就職。国際協力機構(JICA) 地域開発計画調査、及び技術協力プロジェクト、外務省 評価案件に従事後、JICA海外長期研修員として、レディング大学 MA in Social Development and Sustainable Livelihoodsに2007年秋より在籍中。