執筆:2011年2月
自己紹介
日本の大学で政治学学士を取得した後、主に国内で学生・若手社会人を対象にした教育事業を展開するNPOを運営していました。移民学を選択した理由は、学部時代からマイノリティーの社会地位・権利に関心があったことの延長と、学問自体が時代認識と共に重要性を増す分野であると考えたからです。一般に移民学分野は日本国内での学術研究が先進各国に比べ遅れている学問であることや、海外経験を得たいという思いから留学する道を選択しました。開発関連の経験としては、前述のNPOにて日本の大学生(現在は日韓に拡大)が途上国でプロジェクトを行う教育プロジェクトを企画・立ち上げ・運営をした関係で、ネパールの山村に3ヶ月弱滞在していていました。卒業後は、企業の国際人事・グローバル化促進に関連する仕事に就きながら、NPO活動を通じて日本国内外の多文化融和や国際理解の促進に寄与していきたいと考えています。
所属コースの概要
30単位の授業を4つ(うち本年は必修が2つ)、60単位の修士論文の計180単位で卒業となります。また単位とは別に、併設の移民学研究所や他大学で行われる講義等への参加を推奨されます。コースの概要はHPを見ていただければわかりますが、政治・国際関係学部には、私の専攻する移民学の他に国際関係学と公共政策〔政治〕学の修士課程がありますが、学問領域が異なるため共通ガイダンス等を除き交流はあまり多くありません。法学部と地理学部とは共同開講の授業が存在するので、履修状況によってはそちらの学生との関係が近くなります。
コースの最大の長所は、全体で15名弱という少人数制で、講師・生徒共にお互いの顔と名前が一致することです。大教室での授業のように授業が一方通行にならないことに加え、何かと忙しい大学院生活の中で深い友人関係を作れることは大きな魅力だと思います。特に移民学の世界は各国の背景により政策も思考も全く異なるため、同級生からの学びが多くあります。短所としては、講師の人数が少ないこと、インターン等の機会が少ないことが挙げられます。前者については少人数であることと関連しますが、自分の研究興味に合う講師がいない可能性があります。後者については、ボランティア募集や外部イベントの案内などは提供されますが、インターン等のプログラムは基本的にありません。
学生の平均年齢は25歳前後、職業経験は1-2年程度で卒業後に国際機関や政府機関へのキャリアアップを考えている学生が大半です。イギリス国籍者・留学生比率は6:4程度で、出身国はアメリカ・ギリシア・イタリア・オーストラリア・日本となっていますが、移民の背景を持つイギリス国籍者(パキスタン・バングラデシュ・モーリシャスなど)も多いため、より国際色が強い印象があります。
授業全体について
授業全体の構成は、30単位の授業を4つ(うち本年は必修が2つ)、60単位の修士論文の計180単位で卒業となります。今年度は10-12月と1月-3月の各12週間で2学期制、各7週目はReading Week(授業が休講となりエッセーなど課題に集中する為の期間)となり休講、その後は修士論文の準備期間となり数回担当教授と面談する以外は自由に時間が使えます。全体の印象としては、1学期が理論中心の学問(必修)、2学期が応用と実践を中心とした学問(選択)の構成になっていると思います。
これまでに受けた授業の内容・感想
共通する授業形態として、毎回課題図書が指定され講義とゼミナールが行われます。少人数の授業がほぼ全てのため私の場合は全科目、授業での発言が求められます。但し評価はレポートが100%(一部例外あり)なので、講義・ゼミナール中の発言等は評価されません。
授業名:Typologies and Theories in Migration
内容・感想:
移民関連の体系的理論理解のために実施されている必修科目です。各講座で「グローバリゼーション」「ジェンダー」「難民」などテーマが設定されており、講座毎に事前学習が求められている課題図書の内容をベースに講義とゼミナールが行われます。理論部分では世界全体の事例が使用されるので漠然とした理解となりがちですが、ゼミナールでは移民出身のミュージシャンのインタビュー記事などを用いるため、より立体的な理解が得られるような配慮もされています。
授業名:The Housing, Health and Education of Immigrants in a Metropolitan Environment
内容・感想:
住宅・保健・教育の3つの視点で都市における移民の状況を理解する目的で設立された教科です。テーマごとに講師による授業・フィールドワーク・ゲストスピーカーの3つが組み合わされて展開されています。頭も身体も使いながら都市政策・NGO・社会企業などの第一線を知ることが出来る、選択科目ですがコース受講生のほぼ全員が履修している名物授業です。
大学情報
ロンドン東部にあるMile Endキャンパスは、ロンドン中心部周辺で唯一のキャンパス・ユニバーシティーです。他校が基本的にビル群で構成されている点に比べ、例えば大学の寮も大半がキャンパス内に位置しているなど、環境面では比較的充実しています。周辺部の治安は一般的にあまり良くないため夜の出歩きを控えている女性もいますが、ブリック・レーンをはじめとしたロンドン東部は移民文化・サブカルチャーの中心地でもあります。勉強面の施設としては、図書館・PCルーム・大学院生専用の研究棟などがあります。ただし電子化されたものを含め図書館の蔵書が十分といえる量ではないため、英国図書館(British Library)やロンドン大学共通のSenate House Libraryなどを利用することが多いです。好みが分かれるキャンパスのため、一般的な評価は難しいかもしれません。
その他の情報
イギリスの大学院の場合コースが多岐に分かれているため、留学機関などに訊ねても必ずしも適切な情報が手に入るとは限りません。時間と金銭的な余裕がある方はPre-Master Course等で1年間学びながら、進学先を吟味しても良いと思います。