執筆:2009年3月
自己紹介
大学を卒業して、そのまま修士課程に進学しました。学部時代は言語学を専攻しており、1年間の留学制度を利用し、マンチェスター大学に在籍していました。その際、現在在籍しているIDPMの学生の方とお話をする機会があり、開発学のことを知りました。それまで漠然としていた自分のやりたいことを具現化できる学問に出会えた気がしました。その後、就職活動を通して、やはり本当にやりたいことを仕事にできるようにしたいと思い、現在に至ります。
所属コースの概要
所属コースは実践というよりは、理論を中心とした授業展開になっています。前期は主に経済開発の基礎的な授業や統計、計量経済基礎、開発学理論など、開発学の導入編といった感じがしました。オプションで選べる授業は、貧困開発や福祉政策から、貿易やパブリックセクター分析等まで、幅広く選ぶことができました。ただ、グローバリゼーションに関する授業がなく、少し物足りなさを感じました。
また、統計と計量経済を短期間で履修したため、バックグラウンドのない学生には、かなりきつかったように思います。開発学を初めて学ぶ私にとっては、自分の焦点を当てたい分野を探すという点で、選択肢の幅広さは魅力でしたが、理論が多すぎて実践の少なさが物足りないという声も聞かれました。
後期は、主にグローバリゼーションによる経済の動きが、どのように発展途上国の開発に影響を与えているかという視点に沿った授業が、必修やオプションで選択できるようになりました。フェアトレードなど、最近の論点にも触れるので、理論と実社会の経済現象とのリンクを考えやすくなりました。実際に開発分野で経験が豊富で、実践的なスキルを学びたい方よりは、開発学における理論を勉強して、今後色々な方面で生かしたい方に向いていると思います。
このコースは、私を含めて7人しか学生がいないので、生徒同士や担当教官との距離がとても近く、何でも相談し合います。また、IDPMはいくつかのcluster(例えばsocial developmentなど)に分かれており、私はDevelopment Economics and Public Policy clusterに所属しているので、同じグループの学生とも、授業で頻繁に顔を合わせ、仲良くなれます。
学生のバックグラウンドは様々ですが、新卒の方も結構多いように思います。学部の学位は、経済学、ビジネス、国際関係等を持っている学生が大多数です。職務経験は、途上国の政府関係者やパブリックセクターで開発業務に関わっていた方から、銀行や企業のマーケティングなど、様々です。将来の幅広い人脈作りのみでなく、友人としても良い方々と出会えたと思います。
授業全体について
マンチェスター大学は2学期制で、私の取っている授業では、各学期に約10回のレクチャーと、約4回のセミナーで構成されています。通年科目が1つで、前期は必修科目2つとオプション2つ、後期は必修科目1つとオプション2つになっています。レクチャーでもセミナーでも、学生は積極的に発言し、先生もトピックに関係する学生に意見を求めたりして、理論と現実のディスカッションのバランスがとても良いと思います。イースター休暇中に、トルコへのフィールドトリップが予定されています。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名:Comparative Social Policy
内容・感想:
西欧の福祉国家の概念から、Human developmentに含まれる教育、保健、水問題などの社会政策について、毎回異なるトピックでディスカッションを行いました。個人的には、最も理論と実践のバランスが取れた授業だと思いました。グループプレゼンなども行いましたが、評価は3000語のエッセイ1本で決まります。
授業名:Global Institutions, Trade Rules and Development
内容・感想:
現在に至るまでの世界の貿易システムと、それに関わるWTOなどの国際機関の変遷を始めとして、多国籍企業の活動や国際的な物流などを通して、発展途上国の貿易における現状を学んでいます。セミナーでのグループプレゼンがありますが、4000語のエッセイのみで評価が付けられます。
授業名:Transformation in the World Economy
内容・感想:
資本主義とネオリベラルな開発経済政策の理論と結果、グローバリゼーションの与える様々な影響(経済、金融、貿易、物流、移民など)を考えます。最近の世界経済状況と絡めたディスカッションや、地域ごとの影響に関するプレゼンも行われます。これも評価は4000語のエッセイ1本で決まります。
大学情報
キャンパスが点々と多数存在するので、街と一体化しているような印象です。中心地のショッピングモールなども徒歩圏内で、バスも頻繁に走っているので、便利だと思います。パブやレストランなども多く、友人同士で週末に出かけたりしやすいです。基本的に留学生には学生寮が保証されているので、私は大学の寮に住んでいます。特に強いこだわりがない場合は、施設・費用などを考えても、どこか自分に合う寮が見つかるかと思います。他の大学の寮とも大差はないように感じます。最後に突出している点と言えば、やはり図書館でしょうか。必要な文献は大抵すぐに手に入ります。ただ、延滞料やコピー、プリントアウトなど、全体的にコスト面が気になります。自分でプリンタを購入したり、付近のNews agency(新聞・雑誌から食料品まで売っているお店のこと)でコピーをした方が、断然節約になると思います。
その他の情報
勉強面としては、いくつか日本語で関連分野の文献を探して、目を通しておくと良いかと思います。そして、英語の文献と照らし合わせると、ボキャブラリーの強化にもつながります。生活面としては、知り合いの紹介等を利用して、経験者に話を聞いてみると良いでしょう。あとは、何事も経験してみなければ分からないものなので、その都度、考えつつ対応していくのが一番だと実感しました。