執筆:2024年11月
インタビュアー:伴場 森一(London School of Economics and Political Science)
※本留学レポートはインタビュー形式です。
伴場:1年間のロンドン生活はいかがでしたか。
大塚:非常に楽しかったです(笑) パートナーと一緒に来たので、家探しに苦労はありましたが、休みのときに一緒に出掛けたりしましたし、現地でできた友人にパーティに呼ばれたりして楽しかったです。日本と比較すると、電車がストライキで止まったり店がすぐ閉まる等の不便はありましたが、ダイバーシティがあるというか、それぞれの人が好きなことをしているのが良かったですね。電車内が特に象徴的で、日本はみんな暗い感じで静かですが、一方でロンドンは皆さん思い思いに過ごしていましたね。歌っていたり、周りを気にしていない感じとか(笑)ただ、ホームレスの方々が街中で日に日に増えていったことには複雑な気持ちになりました。
伴場:これまでの経歴について教えてください。
大塚:新卒で金融機関系のシンクタンクで3年ほど、経済事情の予測など、エコノミスト業務に従事していました。その後、証券会社に転職し、エコノミスト兼ストラテジストとして、日本経済及びヨーロッパ経済及び金融のリサーチ業務をしていました。しかし、学生時代から漠然と留学をしたいと考え、LSEのEuropian InstituteのMSc Political Economy of Europeに入りました。修了後、現在は入学前に勤務していた会社に戻っています。
伴場:入学前の仕事で政治と関わっていたのでしょうか。
大塚:そうですね。我々の仕事として投資家に対してストラテジーを提案したりするので、最終的な目標としてはマーケットの反応を理解・予測し、そのうえで金融商品の何を売って何を買うべきかということを考えるのですが、政治で結構マーケットが動くことがあります。日本だとあまりないかもしれませんが、ヨーロッパではあります。例えば、各国の選挙や、かなり昔ですが欧州債務危機等ですね。政治と経済の相互作用が非常に重要なので、そのような知識を深めたいと考えました。実際に勉強して非常に役立ったと思います。
伴場:所属していたコースの人数、国籍の割合、経験者の割合等を教えてください。
大塚:学部全体は200名以内で、MSc Political Economy of Europeは80-100名程度でした。ガイダンスでは、フランス人が最も多いと言われました。おそらくコースの2割ほどがフランス人でした。ほかに多かったのはイタリアやスペイン等で、ヨーロッパ系で半分以上を占めていたと思います。イギリス人は数名程度しか会っておりません。中国人は1割から2割ぐらいでした。新卒は6割程度で、4割程度はインターンを含めた何かしらの経験があったと思います。なお、ヨーロッパは移民も多いので、移民関連のコースもそのEuropian Instituteにあります。
伴場:入学後に何かギャップを感じましたか。
大塚:当初、欧州委員会等で勤務していた人がいると考えていましたが、実は逆で、そういうところに行きたい人が学びに来ていました。したがって、ネットワーキングに関してはLSEとは関係のない様々なビジネスの集まり等でカバーしました。具体的には、英国の金融機関で勤務している人と会ったほか、今働いている会社の人がロンドンに来て何かのイベントに参加する際にゲストとして話をしにいったこともありました。
伴場:なぜLSEのそのコースへ留学をしようと考えたか、もう少し詳しく教えてください。
大塚:ヨーロッパの経済・政治の専門性を深めることが第一で、あとは留学への憧れですね。また、英国への留学は確かに高いですが、アメリカ等に比較すると安いというのも理由としてありました。加えて、大学のときの同級生が政府の派遣でLSEのPublic Policyで学んでいた話を聞き、「なんか行けそうじゃない?」と思ったというのもあります(笑) なお、Political Economy of Europeに関してLSEの良いところは、細かく分かれているところだと思います。他の大学(KCL等)だとあくまで「Political Economy」に留まっていますが、LSEはそこに「of Europe」まで付いています。その点は志望動機書を作成するときにすらすら書けましたね。したがって、表向きは自分の専門性を深めたいものの、裏の気持ちは「なんか行けそうじゃない?」というのがありました(笑)
伴場:日本の大学で学んでいたときに、留学を検討しなかったのはなぜですか。
大塚:結構費用が掛かるというイメージがあったためです。漠然とエコノミクスには興味はありましたが、具体的なアクションに起こせず、それをずっと引きずっていたかもしれません。
伴場:学んだことで役立っているのはセオリーなのか、もしくは何かプラクティカルなことですか。
大塚:両方だと思います。アナリストなので、レポートを書くことが仕事なので、セオリーは大変役立っていると思います。プラクティカルなことで言えば、海外の顧客や同僚と話したりディスカッションしたりすることもあるので、英語で一通りこなす度胸が身に着いたと思います。なお、学部が学際的なことを扱うので、結構初歩的な段階から指導されることが多く、私は社会人経験が長いので、例えば定量分析等では目新しいことはなかったです。ただ、厳密な定性分析の方法を学べたのは役立っていると思います。学際的なので、所属する学生のバックグラウンドもバラバラでしたね。その点、初歩的な指導をされるのは良かったと考えています。
伴場:出願したのはLSEだけでしたか。
大塚:第一志望はLSEで、他にはKCLのInternational Political EconomyやWarwickのPolicitial Economy系のコースやSOASのEconomics、CambridgeのPublic Policy、UCLの確かPublic Policy系に出していました。ただ、LSEと第二志望以下とは志望の強さにかなり差がありましたね(笑)
伴場:国際開発のキャリアを検討したことはありますか。
大塚:正直あまりなかったです。新卒で入社した会社で担当した経済分析の仕事を非常に楽しく感じましたし、上司にも恵まれ、ずっと続けたいと思ったという感じです。それで今までそのようなキャリアができております。
伴場:最後に、今後大学院留学を検討している方に一言お願いします。
大塚:学部を卒業してすぐに大学院入学をするのもいいですし、私は社会人にこそ是非留学してほしいと思います。留学して後悔している人というのはあまり聞かないです。特に社会人の方は、今まで培ったものを捨ててしまうという恐れがあるかもしれませんが、リターンはきっと大きいと思います。そのリターンは金銭的なものではないかもしれませんが。
伴場:ROI(Return On Investment)が高いということですね。
大塚:そうですね(笑)