人道支援を専門的に学ぶ
~成長と刺激を得たロンドン生活~
人道支援を専門的に学ぶ
~成長と刺激を得たロンドン生活~
MSc International Development and Humanitarian Emergencies
The London School of Economics and Political Science
北村侑里さん
執筆:2026年3月
担当:生田 洸己 (The London School of Economics and Political Science )
北村さんの自己紹介をお願いいたします。
北村侑里と申します。早稲田大学政治経済学部政治学科(英語学位プログラム)を卒業後、2024年9月にロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の
MSc International Development and Humanitarian Emergencies に進学しました。現在は外務省に勤務し、国際機関への拠出金を評価する業務に携わっています。
高校時代から国際協力や人道支援に関心があり、大学では政治学を専攻しながら、他学部の授業も履修し、開発や人道支援について勉強しました。学びを深める中で、特に関心を持つようになったのが「人道危機下の子どもの保護」というテーマです。このテーマともっと向き合い、専門的に人道危機について学びたいという思い、そして将来的に国際機関で働くためには修士号が必要であると考えたことから、大学院留学を決意しました。
LSEを選んだ理由は、人道危機に特化したコースでありながら、開発と人道支援を横断的に学べる点に魅力を感じたためです。また、留学生が多く国際的な環境で学べることも大きな決め手でした。進学に際しては、人道危機に特化したこのコースと、子どもに焦点を当てた他大学のプログラムで迷いましたが、より包括的に人道危機や人道支援を学べる点を重視してLSEを選びました。
LSEで人道危機や人道支援について学んだ経験を活かし、現在は国際機関の取り組みを政府の視点から評価・分析する業務に携わっています。大学院での学びと現在の業務がつながっていることを実感しており、非常に貴重な経験ができていると日々感じています。
所属されていたコースの特徴や雰囲気について教えていただけますか。
私が所属していた MSc International Development and Humanitarian Emergenciesは、開発と人道支援を専門的に学ぶことができるコースです。学生の約8〜9割が女性で、世界各地から同級生が集まる、国際色豊かな環境でした。クラスメイトのバックグラウンドも多様で、私のように学部卒業後すぐに進学した学生が多い一方で、数年から10年近い職務経験を持つ学生もいました。社会人経験のない学生でも、インターンやボランティアなどでさまざまな経験をしており、同級生から聞く話はどれも刺激的でした。
カリキュラムに関しては、人道支援や開発に関する必修科目に加えて、幅広い選択科目が用意されていました。難民問題、紛争、複合緊急事態といった人道危機に関する授業だけでなく、アドボカシー、ジェンダー、公共政策、国際法などの授業も選択できるため、人道危機・開発を多角的な視点から学ぶことができる環境でした。
このコースのカリキュラムの大きな特徴は、必修科目に Humanitarian Consultancy Project という人道支援の分野でのコンサルティングの実務を経験することができるモジュールがあることです。実際に人道支援に携わる国際機関やNGOを相手に、課題分析や解決策の提案を行う実践的なグループプロジェクトを通じ、プロジェクト管理やの作成・発表を通じて、実務的な学びを得られた、非常に貴重な機会でした。
LSEで特に印象に残っている授業を教えてください。
各授業では、毎週講義とセミナーが1回ずつありました。少人数(10〜15人程度)で行われるセミナーでは、グループワークやディスカッションを行いました。特に印象に残っている授業は以下のとおりです。
Managing Humanitarianism(必修)
この科目では、人道支援とは何かという基本的な問いから、人道支援に関わるアクター、あらゆる制度、そして現場が直面する課題について学びました。最近のこの分野における潮流や、さまざまな地域の事例について学び、幅広いテーマについてディスカッションを行うことで、人道危機・人道支援の理解が深まりました。
Key Issues in Development Studies(必修)
開発学における、さまざまな議論を扱う授業です。毎週異なるテーマが設けられ、そのテーマに関する論文を読み、議論するという内容でした。この授業を通して、「開発をどのようにすれば効果的に進められるのか」という問いがいかに複雑で難しいかを実感しました。学べば学ぶほど、開発学は多様な価値観や視点が交差する分野であるということを感じました。
Health, Conflict and Crises(選択必修)
紛争下における保健医療の課題を扱う授業で、私自身が最も関心を持っている「人道危機下の子どもの保護」に通ずる内容も多くありました。理論だけでなく、実際の紛争地域の事例を通じて、人道危機の現場でどのような課題が起きているのかをより具体的に理解することがました。
上記の授業の他にも "Complex Emergencies"、"Forced Migration and Refugees"、"Humanitarian Consultancy Project" の授業の履修に加え、修士論文を執筆しました
(合計 4 Units)。また、他学部の授業を聴講したり、語学センターで語学の授業を履修したりするなど、幅広く学びの機会を活用しました。
LSEのキャンパスや大学の雰囲気について教えていただけますか。
LSEのキャンパスはロンドン中心部に位置し、複数の建物が集まって構成されています。キャンパスの外に出るとすぐに繁華街や劇場街が広がっており、ロンドンの活気を日常的に感じることができる環境です。
学生数は他大学と比べると比較的少なく、規模もさほど大きくありませんが、それゆえの安心感がありました。キャンパス内では、さまざまな分野で活躍する卒業生や専門家を招いた講演会が頻繁に開催されており、世界の第一線で活躍する人々の話を直接聞く機会が多くありました。こうしたイベントは、学びの視野を大きく広げてくれる大変貴重な機会だったと感じています。
キャンパスへの通学路にあるミュージカル劇場
大学院在学中はどのように就職活動を行っていましたか。
在学中は、日本で働くことはあまり考えておらず、卒業後はイギリスを含む海外で人道支援に関わる仕事に就きたいと考えていました。そのため、日本の就職活動は行っておらず、イギリス国内の就職活動を少しずつ進めていました。
しかし、昨今の世界情勢もあり、人道支援や国際協力の分野で応募できる求人は限られていました。また、国際機関のインターンも非常に競争率が高いことから、希望に近い仕事を見つけることは難しいのではないかと感じるようになりました。それでも、今後のキャリアを考えたとき、やはり人道支援や国際協力に関わる分野で経験を積むことが重要だと考え、日本で働くことも視野に入れるようになりました。ちょうどそのタイミングで現在のポジションの募集を見つけ、応募に至りました。
修士論文提出後は日本に一時帰国していましたが、このまま日本に残るのか、イギリスに戻るのか、あるいは別の国に移るのか、将来が全く決まっていない状態でした。選択肢が多いことはワクワクする一方で、先が見えない不確実な状況に不安を感じることもありましたし、周り(特に大学時代の同級生)と自分自身を比べて焦ってしまうこともありました。そのような状況でも「自分は自分の道をちゃんと歩めている」と自分に言い聞かせることが大変でもあり大切だったように思います。
今後は、人道支援の中でも特に関心を持っている 人道危機下の子どもの保護 という分野の専門性を高めるため、フィールドでの勤務や実務経験などを通して知識とスキルをさらに深めていきたいと考えています。
ロンドンでの生活や日常について教えていただけますか。
私が住んでいた寮はキャンパスから少し離れた場所にあり、毎日片道45分ほど歩いて通学していました。長い道のりではありましたが、ビッグ・ベンやロンドン・アイを横目にテムズ川を渡る景色はとても美しく、またロンドンにいることを実感させる、気持ちの良い時間でした。
寮では7人の大学院生とフラットをシェアしていました。国籍も専攻分野も異なり、生活スタイルもそれぞれ違っていて、とても面白い環境でした。特に仲良くなったインド人のフラットメイトとは、お互いに料理を作り合ったり、チャイを淹れてもらったりして、何気ない時間を一緒に過ごしました。日本式のカレーをとても気に入ってくれて、おかわりまでしてくれたことが印象に残っています。
休日には美術館や博物館を巡ったり、趣味のミュージカル鑑賞を楽しんだりしていました。ロンドンは文化的な施設が非常に豊富で、飽きることはありませんでした。Reading Week(各セメスターの第6週目にある授業が休みになる期間)や長期休暇にはイギリス国内を日帰り旅行したり、ヨーロッパを旅行したりしました。
また、大学時代に続けて、LSEでもアルティメットフリスビーのチームに所属し、練習や大会に参加しました。そして、アルティメットの活動を通じて、学部生や大学外の友人ができました。コースの同級生以外のコミュニティがあったことで、ロンドン生活がかなり充実していたと感じています。また、毎週体を動かすことは、気分転換にもなりましたし、1年間を心身ともに健康に過ごせた一番の要因だと感じています。
インド人のフラットメイトとの帰国前最後の夕食。
インド料理を振る舞ってくれました。
友人と公園でのピクニックのひととき
私は結果的にとても満足のいく留学生活を送ることができましたが、後悔のない選択をするためには 十分な情報収集がとても重要 だと感じています。IDDPの留学レポートには多くの先輩方の経験が残されているので、それらを読むことで留学生活のイメージが具体的に湧くと思います。気になることがあれば積極的にコンタクトを取り、準備を進めていくことをおすすめします。
振り返ってみると、自分の関心分野を深めながら、友人たちと切磋琢磨した1年間は刺激に満ちた非常に充実した時間でした。授業の予習や課題に追われる日々ではありましたが、それ以上にかけがえのない出会いと成長が得られた、幸せな時間だったと感じています。留学は不安なことも多いと思いますが、きっと今後の人生の礎となるような経験になるはずです。ぜひ勇気を持って挑戦してほしいと思います!
卒業式の際のお写真。北村さん(右から二番目)とコースメート
※本ページの内容は、ご回答者様個人のご見解および当時のご経験に基づくものです。最新の情報はご自身でご確認ください。