執筆:2009年3月
自己紹介
2005年、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了後、大手自動車会社ヨーロッパ部で2年半勤務。その後、アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)を経て、2008年9月より、LSEのMSc Local Economic Developmentの課程で勉強しております。「貧困地域に雇用をどう創出するか」、「多国籍企業と途上国はどのようにすればWin-winの関係を築くことができるか」といった問題に関心があり、当コースを選択しました。
所属コースの概要
私の所属するコースは、「技術や産業構造の変化、グローバル化が進む中で、どのような地域政策が地域振興には有効か」ということを、学際的に学びます。具体的には、「内生的成長理論」、「新経済地理学」、「産業クラスター」、「地域イノベーション」、「中小企業育成」、「FDI(海外直接投資)の地域への影響」、「グローバルシティ」、「インフラの経済への影響」や「地方への権限委譲」といったテーマが扱われ、地域は先進国と途上国の両方が対象です。
コースの構成は、「Seminar in Local Economic Development」(隔週通年、半単位)が必修、「(GY407)Globalization, Regional Development and Policy」(1単位)または「(GY408)Local Economic Development and Policy」(1単位)のうち、どちらかが必修、残り1.5単位分が選択となっております。しかし、上記のGY407、GY408は相互補完的になっており、両方を履修することを強く求められるため、実際ほとんどの学生は両コースを履修しております。残りの単位は、統計学、地理学部内の都市計画や環境関連の授業を履修する人が多いものの、許可を得ればどの授業も選択自由で、DESTIN(Development Institute)やManagement学部の授業を履修する人もいます。
当コースは、Department of Geography and Environmentにあるものの、当コースに関係する教官は、経済学や経済地理学専攻です。授業は、MSc Regional and Urban Planning Studiesなど他の都市・地域政策関連のコースや、Development Studies Institute (DESTIN)の学生と一緒になることが多いです。
クラスメイトは、全40人ほどです。経済学を何らかの形で勉強してきた人が半数以上ですが、全く学習経験がない人もいます(そのような場合、必要に応じて、入門的な教科書を参照することが求められます)。国籍としては、アメリカ人、中国人、フランス人がそれぞれ5‐7名、他はドイツ、イタリア、メキシコ、アルゼンチン、タイ、バングラデシュ、ケニア、スーダンなどで、英国人は2人です。なお、途上国出身者は、英国の大学出身者がほとんどです。職務経験が1‐2年ほどの人が多く、平均は24歳前後です。
授業全体について
LSEは3学期制ですが、授業があるのは、ほとんどMichaelmas Term(MT:9‐12月)、Lent Term(LT:1‐3月)のみ(各10週)です。最後のSummer Termは、Revisionの授業が2,3回あるのみで、6月に試験となります。なお、Reading Week(ターム中間にある1週間の休み)はありません。
LSEはかなり理論重視で、特に、MT学期に行われる授業はその傾向が見られます。教官は、その理由を、「ケースや実践的なものは時流に応じて変化するため、修士ではしっかり理論を勉強し、批判的な視点を学ぶべきだ」と説明しています。(なお、UCLにもMSc Urban Economic Developmentという、似たようなコースがありますが、そちらはケーススタディーの割合が多いと伺っています)。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名: Seminar in Local Economic Development (GY404)
内容・感想:
地域経済振興に関する重要テーマを、各テーマの専門の教官がオムニバス形式で授業を行います。前半1時間が教官による講義、後半1時間はグループプレゼンテーション(約5人)とディスカッション。今年扱うテーマは、「グローバルシティ」、「産業クラスター政策」、「社会資本、社会と経済開発」、「中小企業支援政策」、「インフラの役割」や「多国籍企業と受入国」などです。成績評価は、期末テスト75%&エッセイ1本(2500語)25%です。
授業名: Globalization, Regional Development and Policy (GY407)
内容・感想:
GY407 は、MT、LT学期で教官もテーマも異なりますが、1つの授業として扱われます。MT学期は、Storper教授のGlobalization and Regional Development(GY407.1)という、主に「グローバル化と企業の立地問題」に関する授業です。毎週3時間半の授業のみです。LT学期の、 Regional Development and Policy (GY407.2)では、「地方への権限委譲と経済発展の関連性」、「地域経済振興の基盤」といったテーマが扱われます。授業は、講義が1時間、ディスカッションが2時間。ディスカッションでは、5人ずつの2チームで行われ、ディスカッション後、残りの学生は質問、評価をします(勝利したチームには、教授からお菓子のプレゼント)。なお、担当のRodriguez-Pose教授はILOなど国際機関のプロジェクトとも関わられていらっしゃいます。成績は、GY407として1つの授業として扱われます。評価方法は、期末テスト75%+エッセイ(2500語)25%です。
大学情報
大学のキャンパスは、街のど真ん中にあるためか、とても狭く、予備校にいるような感覚です。しかし、逆に、どこにいても知り合いと会えるという利点もあります。なお、基本的に、皆、勉強熱心で、英語のネイティブスピーカーも含め、週末も勉強に追われているようです。なお、パブリックレクチャーの講演者は、各国首相や大臣や有名教授といった著名人(例えば先日は、バーナンキFRB議長)が招かれ、とても充実しております。