MSc Sociology
London School of Economics and Political Science
荒幹彦(あらもとひこ)さん
MSc Sociology
London School of Economics and Political Science
荒幹彦(あらもとひこ)さん
2024年9月執筆
担当:伴場森一 (London School of Economics修了)
1.自己紹介
北海道生まれ/育ち。高校時代にスウェーデンへ1年交換留学。北海道大学文学部2年次に国立台湾大学へ交換留学、また3年次に再び台湾に渡航し約1年現地でインターン。大学卒業後、LSEのMSc Sociologyに進学。大学と大学院を通して社会学、特に教育社会学とジェンダー社会学を学び、大学院修了後はロンドンのメディアリサーチ会社でアナリストとして勤務。日本語と英語C2、スウェーデン語と中国語B2レベル。
2.LSEでの生活
LSE在学中勉強はもちろん頑張ろうと思っていましたが、卒業後のことも強く意識していたので就活とパートタイムの仕事も並行して行いました。よって、週のうち8時間をLSEの授業、25時間勉強、15-20時間パートタイムの仕事、10時間を就活等キャリア関連のことに費やし、残りの時間で生活をしたり友達と遊んだりしていました。イギリスの大学院は勉強が大変だと聞いていたので、これらをうまくこなせるか不安でしたが、MSc Sociologyは案外なんとかなるプログラムでした(学部の専攻も社会学だったので、その貯金があったこともあります)。後述するように、プログラム内での一体感が弱かったこともあり、私は隣接するプログラムの学生やSociety(サークルのようなもの)や学生寮(International Hall)で会った人ともたくさん友達になりました。
3.MSc Sociologyプログラムの肌感:
このプログラムの学生は、他と比べて学部からストレートで来た学生が多い印象でした。また、その他のDepartment of Sociologyのプログラム(Political SociologyやCity Design、Human Rightsなど)と比べて学生の興味が分散しており、少し一体感の無いプログラムだったように感じます。同様に他のDepartment of Sociologyのプログラムとの比較で、東アジア人がMSc Sociologyには多かったように思います。つまり、他のプログラムは細かい社会学の分野で分けられていて、それに関心のある学生が集まって同じような授業をとっていますが、MSc Sociologyではある人はジェンダー、ある人は経済学、またある人は環境に関心があり、各々全然違う授業をとっていたのでMSc Sociologyの人とたくさん授業が被るということが少なかったと感じます。よく言えば広く色々な人に会えるプログラムだと思います。
具体的なカリキュラムはプログラムページを確認していただきたいですが、どの授業も基本的に1時間のレクチャーに加えて1-2時間のセミナーで構成されていました。大きめの授業では積極的なセミナー参加をそこまで求められないものもありました。なので、そのような授業ではリーディングをさぼっている学生も割といました(私含む)。もちろん熱心な学生も多く、そういった学生はリーディングはもちろんのこと、先生のオフィスアワーや学内の学会などに積極的に参加していた印象です。
カリキュラムの最も大きな特徴は必修が0.5 Unitsの授業1つだけとういう点です。基本的に1つの授業で0.5 Units、1年間を通して3 Units、6つの授業をとることになります。つまり、仕組みとしては必修であるメソドロジー(量的 or 質的)以外は他の学部の授業を含むどの授業をとっても卒業できることになります(必修以外全て他学部履修をすることを指導教員に認めてもらえるかは別問題)。友達の中にはMSc Political Sociologyに行きたかったけど不合格になり、第二希望だったMSc Sociologyに来た人がいましたが、ほぼMSc Poloitcal Sociologyの授業をとっていました。このように、LSEにあるリソースを存分に使いたい人にはお勧めのプログラムかもしれません。ちなみにLSEにはDepartment of Methodologyという学部があり、ここでは多様な研究手法のを深く学べます。社会学に関連して言うと、調査デザイン、色々な統計分析ごとに授業が1つあり、特定のメソッドを深く学びたい人にはもってこいです。
4.LSE課外活動
LSEには(他のロンドン大学と同様)沢山のSociety(サークルのようなもの)があります。求められるコミットメントは千差万別なので、アカデミックイヤーの始まる9月に直接色々見に行くのがいいと思います。また、他のロンドン大学のSocietyにも参加できることも多く、友達の輪が広がり易いです。
私はGrimshawという国際関係のSociety、SOASという別の大学のランニングクラブとNordic Societyというスカンジナビアの人が多いSocietyに参加しました。Societyでは学部生が大半で、自分より少し若い人と交流できる貴重な機会でした。また、学部生の方が卒業後もイギリスに残る割合が高く(そんな気がする)、卒業後も会える友達ができたのもSocietyに入ったメリットでした。私が参加していたSocietyはどこもコミットメントを求められず、自分の好きなタイミングで参加できたのが良かったです。
5.LSE生の就活
LSEは就活が強い大学として知られており、いくつかの調査ではイギリスの大学で卒業生の収入が最も高い大学となっています。イギリスや国際機関、ヨーロッパでの就職を目指している人には魅力的な大学だと思います。各プログラムページで卒業生の就職先、卒業1.5年後の収入などの統計を公開しており、大学としても就職の強さをアピールポイントにしているのが伺えます。キャリアサポート体制も充実しており、キャリアセンターでCVチェックや面接練習ができたり、グループディスカッションの練習セッションなども頻繁にあります。イギリスやヨーロッパでは卒業後すぐに仕事を始めるのが日本ほど一般的でなないとはいえ、LSEには在学中から就活を意識している学生が多いので就活仲間を見つけるのも簡単です。さらに、卒業後も数年就活を支援してくれるAlmuni Centreが設置されており、在学中と同じような就活サポートを受けられるようです。
私の経験から言うと、就活におけるLSEの強みは大学のリプテーションに加えて卒業生との繋がりです。CVとオンラインテストをしっかりやるのを前提として、私は書類選考ではほぼ落ちることはありませんでした。また、ロンドンの大きい会社には基本的にどこにでもLSEの卒業生がおり、LinkedInを通して簡単に繋がれるので就職のアドバイスや推薦も貰いやすいです。
一方で、(プログラムやそこにいる学生の属性に寄りきですが)イギリスで就職しないで母国に帰る学生もかなりいます。MSc Sociologyは大半がそうだったと思います。私の考える主な理由としては、イギリスので就職が年々難しくなっていること(BrexitやVisaスポンサーの基準の変更など)、そして大半の学生は母国にLSEの学位を持って帰った方がイギリスで就職するよりもずっと良いポジションに就職できることが多いからです。イギリスのエリートと競争するより、母国でエリートとして就活した方が有利なのは当然だと思います。なのでイギリスで就職する人は、なんらかの理由でどうしてもイギリスに滞在し続けたい人が多いような印象を受けます。
6.まとめ
どこの大学が自分に合っているかは、まさに大学に何を求めているかに寄ります。個人的には、①まあまあ真面目に勉強したい、②しっかり遊びたい、③就活もしっかりしたいと考えていたので、LSEのMSc Sociologyは中々いい選択だったと思っています。強いて少し残念だった部分を言うと、先述したように同プログラムの学生の興味が中々一致しなかったこと、そして彼らの大半が母国に帰ってしまい、卒業後また一から(若しくは三くらいから)ロンドンでの友達作りをしないといけなかったことです。これを読んでくださった方も、自分にとって良い進学先選びができますように!