執筆:2010年2月
自己紹介
植民政策、パワーリレーション、サバルタンスタディ、デコンストラクション、フェミニズムといった自分の知的好奇心の範囲を狭めることなく開発の現場の勉強がしたいと思っていたとき、UEAのジェンダー分析という学問分野を知りました。知的領域での議論を理想論で終わらせることなく現場に生かすスキルが見につきそうだと思ってここに決めました。卒業後は社会開発分野で働きたいと思っています。
所属コースの概要
ジェンダー分析というと女性のための女性による学問かと思われるかもしれませんが、そうではありません。男女という性のカテゴリーを社会的構築物ととらえ、なぜ、男女間に経済、社会両側面において不平等が起こっているのか、どのような要因がそういった不平等を持続させているのか、社会をそのジェンダーの視点から分析していく学問です。MA in Gender Analysis of International Developmentという私の所属するコース(以下MGAID)では、特に開発途上国の経済、社会開発両方をジェンダーの視点から分析していきます。
ジェンダーは現在、開発分野において最も重視されている視点の1つであり、国際機関においても開発プログラムの計画、実践、評価のすべての段階において重要視されています。また、国際NGOや現地NGO、草の根の市民活動などの分野においてもジェンダー分析は現実的で効果的、かつ問題を包括的に捉えることのできる視点として大変重要視されています。
MGAIDではそういった国際開発におけるジェンダー分析の現実問題と進むべき方向性について、タイムリーな話題を使って幅広い分野に適応させながら勉強することができます。衛生・栄養・健康・教育など女性に関わるとされる分野に限らず、紛争、政治、経済、移住、農業、など、女性が周縁に置かれがちな分野においてもジェンダーがどのように作用し、その結果どのようなことが起こるかを分析します。
「女性のエンパワーメント」という言葉は今ではどの開発分野を勉強しても必ず出会うフレーズとなっています。しかし、一体それがどういった状態を指すのか、実現のためにはどういったことが必要なのか、そもそもなぜそれほど重要視されているのか、そういった根本的なことを勉強できる機会というのは実は少ないのではないでしょうか。今後もますますジェンダーの視点が幅広い開発分野で重要視されていく中で、MGAIDで学ぶジェンダー分析はどの分野においても求められるスキルであると言えます。現在一緒にMGAIDで学んでいる国際NGOで働いていた友人は、MAGIDを選んだ理由として上記の理由を挙げていました。
今年度のMAGIDは全員で5名と少ないため、教授たちとのコミュニケーションが密にとれるだけでなく、メンバー内での議論や情報交換も活発です。他のコースよりも必修が多いため、ジェンダーについて深く広く勉強することができます。
授業全体について
コースは2学期制です。秋学期は9月下旬から12月上旬まで、春学期は1月上旬から3月下旬までです。MGAIDは秋学期に必修科目2つ、選択科目1を履修し、春学期に必修科目2つ、選択科目を1つ履修します。
秋学期の必修科目はGender and Rural LivelihoodsとGender Concepts for Developmentの2科目でした。前者は開発途上国の農村地域におけるジェンダー関係と開発の現在について理論とその応用について学びます。後者ではフェミニズムをベースとしたジェンダーの多岐にわたる理論を網羅します。選択科目ではQuantitative dataの分析、統計について学びました。春学期の必修科目はGender Difference and Social PolicyとResearch Techniques and Analysisでした。前者では社会政策におけるジェンダーの視点のあり方、捉え方、応用の仕方などを理論から学びます。後者ではQualitative dataの採集、分析等について細かく学びます。フィールドリサーチに行く際に必要な理論と現場の雰囲気をここで学ぶことができます。選択科目としてConflict, Peace and Securityを受講していますが、ここではジェンダーの視点が紛争を学ぶ上で欠かすことのできない重要な視点として盛り込まれており、とても刺激があります。
私の場合は各科目2つの課題を提出し、評価されます。提出したエッセイは採点され、コメントされて戻ってくるので、どこがまずかったのか、どこを評価してもらっているのかがわかります。また納得のいかない点、不明瞭な点については教授や博士課程の学生に聞きに行って、次回のエッセイに役立てるようにしています。
課題、エッセイの提出期限は秋学期12月中旬と春学期3月末に集中しています。試験は4月末に一回だけ行われます。その3時間の試験の中で、秋学期春学期を通して受講した必修科目に関連する内容の問題が数問出されます。試験の後は修士論文 の執筆期間となり、授業等はなくなりますので、学生は帰国したり、フィールドワークに行ったりします。その後9月初旬に修士論文を提出し、全ての課程は修了します。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名:Gender Concepts for Development
内容・感想:
フェミニズムをベースとしたジェンダーの多岐にわたる理論を網羅した授業です。トピックは以下のとおりです。
Feminist and Gender Analysis、Concepts for gender analysis、Household and kinship、Power and empowerment、Well-being and gender、Economic growth and gender、Masculinities、Culture and religion、Gender and Institutions
私が選んだエッセイのテーマは”What does term ‘essentialism’ mean when it applied to women? Why is it an unsatisfactory way to think about gender difference, and what alternatives are there?”でした。2500ワード程度でした。
授業名:Gender, Difference and Social Policy
内容・感想:
社会政策におけるジェンダーの視点のあり方、捉え方、応用の仕方などを理論から学ぶ授業です。トピックは以下のとおりです。
Thinking critically about social policy、gender and difference、Social policy and the World Bank、Gender, health and social policy、Gender inequality、 the MDGs and social policy、Basic services and the state: OXFAM GB、Domestic violence and social policy、 Social policy and indigenous people、Gender, social policy and non-state actors、HIV/AIDS and course conclusion
特にGender mainstreamingの言説がどのように実際に応用されているか、またSocial Policyは女性を特別に重視するべきか、ということをエッセイでは書きました。1000ワードのエッセイと、2500ワードのエッセイが課題でした。
授業名:Conflict, Peace and Security
内容・感想:
トピックは以下のとおりです。
Privatisation of military、The global economy and war、 The meaning of violence、 Religion, ethnicity and conflict、 Gender and war – masculinisms and war、Gender and war – women’s and children’s role in war、Humanitarian action、Humanitarian interventions、 Peace keeping、 Post conflict、 The war on terror、 Natural resource and conflict、Gangs, riots, and communal conflicts
この授業では特に指定されたエッセイのテーマはなく、授業で学んだ内容に関係のあるテーマを自分で設定し、3000ワード程度書くというものでした。この授業ではテスト形式のエッセイ、というものが実施され、直前までテーマが明かされずに、金曜日にエッセイのテーマが明かされ、週末を挟んで3日で書きあげて提出というものがありました。
大学情報
私はキャンパスから徒歩10分くらいの寮に住んでいます。キャンパスと寮の間には美しい公園があるので、気晴らしにそのあたりをうろうろするとすぐにリフレッシュできます。街全体もそうなのですが、人間の住居環境と自然が丁度よく交わり合っていてとても住みやすいです。寮生活はすべてが整っているわけではないですが、フラットメイトに恵まれて思っていたよりもずっと快適に暮らしています。キッチンが共有なので、フラットメイトとのコミュニケーションが自然ととりやすいのかもしれません。
また、大学に入学してからも留学生向けの英語のスキルアップを目的としたコースや、エッセイの書き方についての講習、エッセイのチェックなどが頻繁に行われています。
わたしは春学期からですが、フランス語の授業を受講し始めました。こちらは有料ですが、先生がとても熱心な方ですし、わかりやすいので満足しています。また10週間で100ポンド程度ですので、通常の語学学校のコースに比べれば格安です。
その他の情報
日本にいる間に日本語で読めるだけ多くの哲学・思想・政治思想の本を読んでおくことをお勧めします。コースの内容に直接関係ないように思われても、主だった哲学・思想・政治思想等は現在のアカデミックの議論のベースになっていますので、知っていることを前提として授業が進んでいきます。知らなくても問題ないのですが、知っておくと深く理解できます。