執筆:2009年3月
自己紹介
2007年武蔵野女子大学卒業後、イーストアングリア大学にて開発学ディプロマを専攻。
2008年9月よりブリストル大学教育学部にて、MEd Educational Leadership, Policy and Development に在籍中。
所属コースの概要
ブリストル大学教育学部は大学学部を修了した学生のみを対象としています。コースは教育システムにおけるテクノロジー研究や教育開発、教育リサーチ、英語教師養成分野などをカバーするTaught course(講義、セミナー、エッセイ提出とチュートリアルから成るコース) とResearch programme(担当教授の指導の下、独自に研究を進め論文を書くコース)を提供しています。
教育学修士コースは、Counselling Education、Mathematics Education、Educational Leadership,Policy and Development、Psychology of Education、Special and Inclusive Educationの5つのコースから成り立っています。その中でも、Educational Leadership, Policy and Development コースは教育政策、改善、国際開発と比較教育などのリサーチを基にした授業を提供しています。
2008年度在籍学生は20名強、ユニット(授業)は世界の教育政策の形成に焦点を当てたもの、持続可能な教育開発に焦点を当てたもの、機関の中でのリーダシップやマネジメントに絞ったものなど様々です。
クラスメイトの国籍などはその年によって大分ばらつきがあるようですが、2008年度は中国人が半分以上、あとはキプロス、イギリス、台湾、トルコ、ケニヤ、インド、アンギラ、タイ、インドネシアなどです。殆どのクラスメイトが自国で教育者としての経験があり、中には政府からの派遣生もいます。
2007年度はアフリカからの生徒が大多数を占め、その殆どが自国の教育省、もしくは政府出身者だったようです。日本人は極めて少なく、2008年度コースに在籍している日本人は1名でした。
応募条件として「少なくとも1年の実務経験」が求められていますが、絶対的な条件では無く、コースには私を含め3名程学部卒の生徒がいます。しかし、授業の内容やエッセイでは自分の経験を基にしたものを求められることが多く、その都度教授と相談しなければならないので不利です。
プログラムの内容など詳しくは、http://www.bristol.ac.uk/education/ をご覧下さい。
授業全体について
タームは主にAutumn, Springの2つに分かれていますが、例外的に夏に集中授業を行うユニットもあるようです。リーディングウィーク(ターム中間にある1週間の休み)は特に設けられていませんが、これもユニットにより異なります。
修士号取得に必要な単位は180単位、そのうち修士論文が60単位、必修科目が20単位を占めます。残りのうち60単位は在籍しているプログラムの中から、40単位はマスターレベルであれば、どこのコースからも取得可能です。必修科目はIntroduction to Educational Inquiry、教育リサーチの方法(理論と実践)を学ぶもので、その他専攻科目の選択は学生個人に任せられていますが、パーソナルチューターとの面談で決まることが多いようです。
授業は、理論と学生によるディスカッションの両方を重視する形で進められています。前半はパワーポイントを使った教授による理論説明がされ、後半はディスカッションが中心になります。各テーマに関した視覚教材(ビデオやドキュメンタリー)を使う他、各ユニットにつき1回はグループプレゼンの機会があります。
授業では、実務経験者が多いため、それに基づいたディスカッションやプレゼンが多く見られますが、そこでの疑問や学んだことを共有することでお互いに学びあっている、という印象です。
その他、各ユニットではCourse bookというユニットの説明本とBlackboardというオンラインシステムが用意されており、授業で取り扱われたパワーポイントや参考資料などが閲覧でき、授業の予習復習に役立っています。アセスメントに関しては、ほぼ全てのユニットにおいてエッセイ1本勝負で、筆記試験などはありません。しかし、チュートリアル (教授と1対1での面談)などのサポートは手厚く、エッセイ前には何度でも(教授の空き時間次第ですが)面談を申し込むことが出来ます。
これまでに受けた授業の内容・感想
授業名:Introduction to Educational Inquiry
内容・感想:
唯一の必修科目で、教育リサーチの方法論と実践を学ぶユニットです。講義では理論も学びますが、10週を通して各グループ(4~5名程度)でリサーチを実際に行い、最後の週に設けられたConference Dayでのプレゼンテーションを目的としています。成績評価にプレゼンテーションは入っておらず、自身で行ったリサーチを基にしたエッセイ(4,000字)1本で評価されます。
授業名:Quality and Improvement in Educational Settings
内容・感想:
このユニットは学校をシステムと捉えることで、その効果性と改善を促す要因を理論と経験から学ぶものです。理論を基に運営改善に乗り出した学校の例を挙げたり、検証したりします。授業では前半が教授による講義ですが、実務経験を基にした学生によるディスカッション、参加が強く求められており、各人の経験から出てくる疑問や課題が授業の中心になったりしています。
成績評価はエッセイ2本(1,000字、3,000字)ですが、最初のエッセイは評価には含まれず後のエッセイの練習といった感じです。次のエッセイのトピックは経験を重視したものが多いですが、実務経験のない学生は教授との面談によって、トピックを変えることも可能です。3,000字のエッセイ提出の前には必ず教授との面談があり、そこで最初のエッセイの評価と改善点、最後のエッセイの内容を話し合えます。
授業名:International Development, Comparative Research and Education
内容・感想:
このユニットは国際開発の場における教育の意義を、現在よく知られているGlobal Agenda(Education for All, Millennium Development Goalsなど)や開発途上国と呼ばれている国に焦点を当てることによって、その欠点や改善の可能性、リサーチや社会文化の重要性などを検証します。最後の週には学生によるプレゼンテーションがありますが、成績評価には含まれません。
他のユニットと同じようにエッセイ(4,000字)1本で評価されますが、少なくとも1回は教授との面談があり、そこでエッセイのアウトラインや内容を議論することも出来ます。このユニットでは、毎年1月にLondonのInstitute of Educationで行われるEFA Global Monitoring Report Colloquium への参加が可能です。
大学情報
ブリストル大学はイギリス南西部の貿易港、ブリストルに位置します。ロンドンからは電車で1時間半、長距離バスで2時間半の距離です。コッツウォルズやバースにも近く、観光にも便利な場所です。駅から20分ほど歩くと、city centreがあり、さらに15分ほど歩くと大学の敷地内に入ります。歴史を感じさせるゴシック様式の建物が学部や教室として存在し、創立100年という歴史と伝統を感じさせます。
ブリストル大学は1876年に設立されたUniversity College of Bristolを前身とし、1909年に設立されました。同大学はイギリス屈指の名門校であると共に、初めて女性を受け入れた大学としても有名です。2009年度タイムズ誌ではイギリス第7位、リサーチ分野での高い評価を受けています。
教育学部は1892年に設立され、教育水準(TQA)でも最高値の24を受けました。教育開発の分野でも、EdQualと呼ばれるバース大学、タンザニア、ルワンダなどの教育機関と提携し、発展途上国での教育の質に重点を置いたリサーチが盛んです。
寮は、海外からの留学生に対しては優先的に受け入れています。大学院生の寮となると、Ensuite(シャワー・トイレが完備された部屋)が基本で、男女別れている寮は少ないです。物価や家賃はロンドンと大体同じなので、プライベートで安く、大学から近いフラットを見つけるのは大変なようです。
その他の情報
英語サポート
英語が第一言語でない学生に対し、Autumn セメスターに大学併設の語学学校にてIn sessional courseという語学研修が設けられています。Writing, Reading, Speakingから成り、自分の時間割と調整して授業を受けられます。費用は教育学部持ちなので、無料で受けることが出来ます。
サポート体制
教授やパーソナルチューターからのサポートもそうですが、学部としてのサポート体制もしっかりしています。何か問題に直面しても、教授やオフィスの忙しさから後回しにされる、ということはまずありません。パーソナルチューターとは少なくとも月に1回、各ユニットの教授とも面談の時間は確実に取れます。
教育学部は学生からの評価をとても重視する学部でもあります。ユニットに関しても、とてもフレキシブルですが、言い換えると今年あったユニットが来年には消えている、ということもあり得ます。なので、出願を考えていらっしゃる方には、オンラインでの検索だけではなく、実際に学部に問い合わせることを強くお勧めします。
催し物
毎週、EdQualやその他のリサーチチームによるworkshopが開催されます。内容は、国際開発、学校教育のシステムやInclusive(特別なニーズに関わらず、全ての子ども達が教育を享受できることを目指す手法) , Special Education(特別なサポートを必要としている子ども達への教育)、実施しているプロジェクトに関するものなど広範囲にわたります。
秋学期にはStudy SkillというWork Shopが毎週金曜日の午前中に開かれます。ここでは、critical thinking, presentationやreading and writing skillなどに重点をあてた講義を提供しています。
春学期には、Research Workshopが毎週火曜日、木曜日の夕方に開催されます。これは、秋学期の「Introduction to Educational Inquiry」でカバーしきれなかった理論やスキルを補うと同時に、修士論文で使うリサーチの質を上げることにも焦点を当てています。
出願に関して
出願に際して、1年以上の実務経験が求められていますが、実際には数名の実務未経験者もいるため、必ず満たすべき項目ではないようです。それよりも、このコースへの応募理由などを明記したPersonal Statementの準備を入念にされることが重要なのではないでしょうか。
英語が第一言語でない学生に対してはIELTS6.5という条件もあります。満たすことの出来ない学生に対しては、夏に語学センターで行われているPre-sessional course(5もしくは10週)を受講後、規定の条件を満たすことが義務付けられています。