MSc Public Health
London School of Hygiene & Tropical Medicine (LSHTM)
匿名
匿名
執筆日:2024年12月
担当:伴場 森一(London School of Economics and Political Science修了)
まず、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院は1899年に設立された修士・博士課程のみの高等教育機関です。卒業生には、WHO第8代局長であるテドロス・アダノム・ゲブレイェソス氏などがいます。私はこの大学院で公衆衛生学修士号(MSc Public Health)を取得することを目指しました。留学前は多くの期待を抱いていましたが、実際の留学生活は厳しい現実が待っていました。ここでは、1学期から3学期までの授業内容と経験についてお伝えします。
1学期の必修科目では、①統計学、②疫学公衆衛生の問題、③社会調査の原則の3つを受講しました。統計学ではデータと分布、比率の標本変動、二つの比率の比較などを学び、特にSTATAを用いたデータ分析が実践的で役立ちました。疫学では、疫学的測定、生態学的および横断研究、コホート研究など基本的な概念を習得しました。公衆衛生の問題については、健康の社会的決定要因を学び、公衆衛生における幅広い課題に取り組みました。社会調査の原則では、調査デザインやデータの分析方法を学び、実践的なスキルを身につけました。また、選択科目としてヘルスプロモーションの基礎やヘルスサービスも学び、公衆衛生に関連する幅広いテーマをカバーしました。
2学期にはリサーチデザインと分析、疫学における統計的手法、非感染性疾患の疫学などの科目がありました。リサーチデザインと分析では、研究のデザインと分析手法を深く理解し、疫学における統計的手法や非感染性疾患の疫学について学びました。非感染性疾患の疫学では、がんや心血管疾患の疫学、健康格差、電子健康記録の使用など、幅広いテーマに取り組みました。
3学期には公衆衛生の原理と実践を学び、修士論文に取り組みました。私の修士論文のテーマは「回避可能な死亡(Avoidable Mortality)」で、日本における傾向と地理的パターンを分析しました。
ロンドン大学での学びは、日本の教育システムとは大きく異なり、特に対話重視と間違えることの重要性が印象的でした。クラス内で学生が積極的に発言し、教授や他の学生との対話を通じて理解を深めるスタイルが取られていました。また、間違えることが学びの一環として尊重され、早期に軌道修正をすることが目標達成への近道とされていました。
留学を通じて、目標を達成し、公衆衛生学修士号を取得しました。統計や疫学の素養を身につけ、プログラミングやプライマリケアの知識も得ることができました。多くの知人や友人を得て、現状への感謝と社会への還元の意識が高まりました。
しかし、留学にはコスト(時間やお金)の負担が大きく、非効率やストレス、人種差別に直面することもありました。それでも、これらも貴重な経験と捉えています。また、留学を支えてくれたすべての人々に感謝いたします。この経験を通じて得た知識やスキルを、今後の医療活動に生かし、社会に貢献していきたいと考えています。
留学は、自分の視野を広げ、知識だけでなく新しい価値観や文化を学ぶ絶好の機会です。期待と不安が入り混じる中での出発かもしれませんが、次の点を心に留めておくと、より充実した経験が得られるでしょう。
柔軟性を持つこと:文化や慣習の違いに驚くこともありますが、まずは受け入れてみましょう。その違いが学びの宝庫です。
積極的に行動すること:現地の人や他の留学生と交流することで、新たな視点を得られます。また、言語の壁を恐れずに挑戦することで、自信がついていきます。
健康に留意すること:環境が変わると、体調を崩しやすくなります。規則正しい生活を心がけるとともに、必要に応じて現地の医療機関の情報を事前に調べておきましょう。
失敗を恐れないこと:慣れない環境では、失敗することもあります。それでも、それを糧にして成長していけるのが留学の醍醐味です。
最後に、留学中に得られる経験は一生の財産です。一歩踏み出す勇気が、あなたを新しい世界へ導いてくれるはずです。どうぞ素晴らしい旅立ちを。