MSc Regional and Urban Planning Studies
London School of Economics and Political Science
佐藤 春乃さん
MSc Regional and Urban Planning Studies
London School of Economics and Political Science
佐藤 春乃さん
執筆:2025年1月
担当:伴場森一 (London School of Economics修了)
2022年9月よりLondon School of Economics and Political Science (LSE) でMSc Regional Urban Planning Studiesに在籍しておりました。学部では、秋田県国際教養大学で主に環境学、社会学系の授業を履修していました。
もともと大学院への進学を考えていたわけではなかったのですが、大学時代の交換留学中(留学先はthe College of William and Mary)に受けた「環境考古学」という授業で古代都市の滅亡と周辺環境の影響というトピックが面白かったこと、卒業論文で都市農業と都市の持続可能性について研究しながらも、専門の学部にいたわけではないので学び切った感じがなかったことから、大学院に進学したいと思うようになりました。大学院では「都市の持続可能性」における地理的範囲の解釈とその都市政策への影響を主題にしていました。
LSEのMSc Regional and Urban Planning Studiesは、都市計画策定に関わる社会的・政治的背景を学ぶほか、経済分析や政策評価を行うスキルを養うようなコースです。私がこのコースを選んだ理由は、自分がいわゆるハード寄りの都市計画(都市工学、建築、デザインなど)ではなくソフト寄りの都市計画(都市のビジョン、政策など)に興味があったからです。日本で都市計画と言うと前者がイメージされ、後者であっても工学部系の中に設置されていることが多いと思うのですが、LSEのこのコースでは公共政策的な視点で都市計画を捉えていたので選びました。実際のところ、自分が文系出身であるため、日本の大学院に進学するにしても、必要になりそうな入試は突破できないだろうと思ったことも現実的な理由としてありますが…。
ちなみにイギリスの他の大学でも似たようなコースはあるかと思います。私は他にシェフィールド大学のUrban and Regional Planningと比較して悩みましたが、主に選択授業のラインナップを比較してLSEの方がマッチしそうだと思い、進学先を決めました。
クラスメイトは世界各国から集まっており、それが授業内での議論を面白くさせていると思いました。イギリス人は2人程しかおらず、他は大陸ヨーロッパ(フランス、ギリシャ、ウクライナ)、アメリカ、メキシコ、中国本土、台湾、香港、韓国、コロンビア、サウジアラビアから集まっていました。都市計画に関わるような社会基盤が各国違うため(政府にどれくらいの信頼が置かれているのか、民主的プロセスをどれだけ重視しているのか、人口は増えているのか、基幹産業は何なのか等)、様々な視点に触れることができる環境だったと思います。また、働いたことがある方が多く、不動産業界にいた方や、国際機関職員、研究員、国家公務員など、バックグラウンドは多岐に渡っていました。大学卒業後すぐに進学していた身としては、いろいろな職種の特徴などを聞けて、修士課程以降のキャリアを考える参考にもなりました。
私の在学中にGeography and Environment Departmentがあった建物の屋上は静かでリフレッシュになりました
【必修授業】
必修は、都市計画に必要な基本的な考え方の理解に関わるような授業がメインでした。具体的には、The Economics of Regional and Urban Planning、Social and Political Aspects of Planning、Urban Policy and Planning、そのほか修論のガイダンス授業です。課題は基本的に論文を読むことであり、それを元に授業ではディスカッションしていく形でした。前期はこのような座学メインですが、後期にはチームごとに物件を振り分けられ、その物件は地区のビジョンに沿ったものだったのか、地域にどのような影響を及ぼしたのか等を分析、レポートにまとめるような授業がありました。また、4月にはヨーロッパ圏内でフィールドワークが予定されており、私の年はイタリア・トリノという産業都市で、大企業撤退後のまちづくりについて関係者にお話を聞く機会がありました。
前期の授業内容は実践的な話からは離れていると感じるかもしれませんが、都市計画という分野においては国が変われば法律等が変わり、時には首長が変われば方向性が変わることもあるため、特定の法律や法令を学ぶ場面よりは、若干抽象的な議論が多いです。少し授業の話から脱線しますが、私は現在仕事の中でサーキュラーエコノミー(循環経済)と呼ばれるコンセプトのもとに自治体の産業政策やビジョンを考えていくことがあります。まだ(特に自治体が活用するには)理論的な整理がなされきっていない側面もあるコンセプトであり、都市における経済の考え方や社会的・政治的要素に関する授業で触れた内容が業務に役立っていると感じます。
授業後に行くことも多かった学内のパブです
【選択授業】
私は自分の興味範囲に合わせて地域計画、環境学に関連するような授業(Regional Development and Policy、Economic Appraisal and Valuation、Concepts in Environmental Regulation)を履修しましたが、クラスメイトは皆、都市計画の中でも特に興味のある、修論のトピックに関連する授業を取っていました。
【修論】
Taught Masterであるため、研究手法などに関しては正直授業内容が充実しているとは言い難いです。日本のようにゼミに入って教授と一緒に研究するスタイルではなく、基本的に自分一人で研究し、修論を書き上げる必要があります。担当教授は付きますが、あくまでも相談相手であり、修論の下書きを読むこともルール上許されていません。その分、これまでこんなに頑張ったことはないと言えるくらい頑張ったので達成感も得られましたが…。
LSEはロンドンの中心部にある大学で、とても賑やかでした。学校終わりにパブに行ったり、気分転換に美術館・博物館に行ったりと、充実した生活を送ることができました。寮生活については別の方と同じLKHで生活していたため、割愛させていただきます。
LKHからは歩いて登校することもでき、通学路には有名な建築物もあって楽しい道のりでした
留学を目指すには様々理由があるかと思いますが、特に英国の修士留学ですと1年であるため、あっという間に時間が過ぎていきます。何をしたいと思って留学を考えるのか、そのためにはどの大学が良いのか、どのプログラムが良いのか…と考えること、決めることがたくさんあるかと思いますが、留学に行く前のそのプロセスにじっくり時間をかけていけると良いのではないでしょうか。応援しております!