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宇野裕美 (うのひろみ)

マイグレーション、フェノロジ-などの生物の生活史を通じた、食物網の時空間的つながりを研究しています。

河川・渓畔林生態学、個体群生態学、群集生態学、景観生態学


略歴
2017-現在            京都大学生態学研究センター                             特定准教授
2016-2017年       カリフォルニア大学デービス校                            研究員  
2011-2016年     カリフォルニア大学バークレー校 統合生物学部 Ph.D.
2010-2012年     京都大学理学研究科(生態学研究センター)         修士
2006-2010年     京都大学理学部生物科学系動物学専攻              学士
2003-2006年     三木学園白陵高等学校        
2000-2003年     三木学園白陵中学校
1994-2000年     神戸市立つつじが丘小学校

連絡先
〒520-2113
京都大学生態学研究センター
大津市平野2丁目509-3
電話:077-549-8252
電子メール:hiromiuno1@ecology.kyoto-u.ac.jp
             ( hiromiuno1@gmail.com )

所属学会
日本生態学会
Ecological Society of America
Society of Freshwater Science

研究概要

自然環境は多様で空間的に複雑な構造を持つ。また、その環境は季節や一日の時間によって大きく変化する。そんな中、生物は各々の成長段階や環境変化に応じて、様々な景観の間を移動し利用している。自然界での生物間相互作用を理解するうえでは、このような環境の複雑性と生物の移動・フェノロジーを考慮することが必要不可欠である。私はこれまで、自然の中でも特に複雑な環境を有する河川―渓畔林生態系を対象として、その空間的な複雑さや環境の季節変化が生物多様性の維持に果たす役割や、生物間相互作用に与える影響について多角的アプローチで研究してきた。

<河川ネットワーク構造と生物多様性>

一つの河川水系は多数の小さな支流が交わり、少数の大きな河川本流に流れ込んで成り立っている。私はこのような河川ネットワーク構造の中で、生物がどのように分布し多様性が維持されているかについて研究してきた。マレーシアキナバル山における研究では、支流にあたる各小河川における生物種数は本流に比べて少ないものの、数多く存在する小河川ごとに種組成が大きく異なるため、結果として小河川にすむ生物が河川水系全体の生物多様性に寄与する割合が高いことを示した(Uno et. al. In prep)。一方、北カリフォルニアにおける調査では、本流と支流の両方に生息する種はまず暖かい本流河川で出現した後に冷たい支流河川で出現するなど、季節に応じた河川内での分布域の変化が多様性に寄与していることを示した(Uno, unpublished)。こうした温帯河川と熱帯河川の多様性構造の差は、河川本流・支流間の温度関係やその季節変動の違いが寄与していると考え、現在環境DNAを用いて気候区間で河川ネットワーク構造と生物多様性構造の関係を比較する広域研究を計画している。

<河川ネットワーク内の生物の移動、相互作用>

河川の本流と支流では環境が大きく異なり、多くの生物が季節や生活史段階に応じてその間を行き来している。河川生態系を考える上で、それらの動きを合わせて理解することが不可欠である

北カリフォルニアにおける研究で、一生のうちで河川本流と支流を使い分ける水生昆虫が存在することを発見した(Uno, in prep)。この発見は、これまでの水生昆虫に関する常識を塗り替えるものであり、本流と支流の河川渓畔林食物網がそれらの移動によってつながれていることを意味した。私は、野外大規模操作実験によって、本流で育った水生昆虫が成虫として羽化後に支流に移動して産卵し死ぬというプロセスが、本流から支流生態系へ資源を供給し、支流捕食者の成長を著しく促進していることを示した(Uno & Power (2015) Ecology Letters)。この研究は、これまで注目されてこなかった食物網の低次に属する小動物の行動や移動のパターンが、生態系内の資源の再分配に寄与している可能性を示した。

更に、本流と支流の間を移動するカゲロウに寄生する線虫も発見した。この研究では、学部生の卒業研究としてその指導に携わり、生活史を研究して新種記載をした(Poinar, Walter, Uno (2015)。

また、現在は河川地形が魚類などの捕食者の本流と支流の間の移動に与える影響についても興味を持ち、航空レーザー測量データ(LiDAR)を用いた水文モデルによって河川水位の変化を推定し捕食者の移動パターンを予測するプロジェクトも行っている。

<河川水温の変化に対する生物応答>

温帯域においては水温や気温は劇的に季節変化する。また、生息地や年によりその温度は異なる。私は、季節ごとに異なる生活史段階を持つ年一化のカゲロウの一種に着目して、室内実験と地理情報システム(GIS)を用いた長期広域データベースの解析により、生物がそのような温度変化にどのように対応しているかを研究した。結果、1)各生活史段階がその季節に応じた温度耐性を持っていること、2)異なる生活史段階への移行が温度変化に応じて生じるため、温度の季節変化や生息地・年ごとの変異にも対応可能であること、を明らかにした(Uno & Stillman in revision)。以上の結果は、生物は一つの生活史段階の温度耐性から予測される以上に、生活史戦略として温度環境の変化に適応しうる可能性を示唆しており、温暖化などの気候変動が生物の分布や絶滅リスクに与える影響を予測するうえでこうした生活史段階への注目が重要であることを示した。

<水温の空間異質性が生物相互作用に与える影響>

河道内の地形の複雑さも河川と渓畔林の相互作用に影響を及ぼす。水生昆虫の羽化タイミングは温度に依存するため、河床構造が複雑で水温に空間的異質性があると川から水生昆虫が羽化するタイミングがずれうる。この羽化タイミングのズレが、渓畔林の捕食者が羽化水生昆虫を資源として利用可能な期間を伸ばし、結果として捕食者の成長を促進することを示した(Uno (2016) Ecology)。このことは、複数の系にまたがる生活史を持つ種の存在下では、ある系の空間異質性が別の系への資源動態や生物間相互作用にまで影響を与えうる可能性を示唆している。

~~様々な研究アプローチ~~

(a, b) カゲロウ移動の魚への影響を調べる学部生を巻き込んでの大規模野外操作実験。(c) カゲロウの温度耐性を調べる様々な温度での室内飼育実験。(d) 地理情報システム(ArcGIS)を用いた長期広域データの解析。(e) 野外でのカゲロウの羽化時期の測定。(f) クモの摂食実験。



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UNO Hiromi,
Jan 19, 2017, 7:31 PM
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