27万種にも種分化した植物の種多様性を明らかにするため、3つのテーマ「地域性」、「分類学」、「雑種形成」から研究を行っています。
【在来植物の系統解析】
植物の類縁関係や分布変遷を明らかにするため、分子系統解析と系統地理学的研究を行っています。
・在来緑化草本の系統地理学的研究
法面緑化に用いられるススキやヨモギなどの在来草本を対象に、地域を越えた移動に伴う産業利用系統から在来地域集団への遺伝的かく乱(国内外来種問題)を回避するため、系統地理学的研究を行いました。
・絶滅危惧植物/地域固有植物の系統解析
希少種の保全遺伝学的研究に取り組んでいます。
【ラン科植物の分類学的研究】
ラン科植物は全植物種の約1割(2万5千種以上)が認められる最も種分化した植物群の一つです。ラン科植物の多様な特性がどのように進化してきたのか解明するために分類学的研究を行っています。
・唇弁が花弁化したペロリア変異体の発見
ラン科を特徴付ける唇弁が花弁化したペロリア変異体をキンラン、ユウシュンラン、オオバノトンボソウから発見しました。他のラン科植物からもペロリア変異体の発見が期待されます。
ツクバキンラン。茨城県石岡市にて(2014年5月撮影)。
・ネジバナの形態学的・系統学的研究
ネジバナには花序に毛が有る変種ネジバナと無い変種ナンゴクネジバナがあり、本土と琉球諸島に棲み分けています。本土に稀産する花序に毛の無い個体が、ナンゴクネジバナの隔離分布であるのか、ネジバナの毛の欠失変異であるのかを検討し、高知県と熊本県に産する毛の無い個体はネジバナの毛の欠失変異であることを明らかにしました。
また、開花期がネジバナとは異なる秋咲きの品種アキザキネジバナを高知県から初報告しました。
ネジバナの有毛花序。高知県南国市にて(2010年6月撮影)。
【雑種形成に関する研究】
植物種では雑種形成は進化を引き起こす原動力の一つです。野生植物が稀に行う自然界での実験的現象である雑種形成について研究を行っています。
・サトイモ科テンナンショウ属植物における交雑と形態的多様性
テンナンショウ属植物の形態的多様性を明らかにするため、種多様性の高い四国において雑種形成の視点から研究を行いました。ユキモチソウ×アオテンナンショウ、アオテンナンショウ×ウワジマテンナンショウ、ユキモチソウ×マムシグサの雑種(と浸透性交雑)を現地踏査により発見しました。四国では複数種間での雑種形成と遺伝的交流によって高い形態的多様性がもたらされているのかもしれません。
ホソバテンナンショウ×イズテンナンショウ。静岡県伊豆半島にて(2011年5月撮影)。