シンコーホールディングス社会連携講座:https://esdse.t.u-tokyo.ac.jp
株式会社シンコーホールディングスとの社会連携講座「地下環境の持続可能な開発のための工学」を開設しています。地下の環境汚染の除去、拡散防止、動態の理解、およびモニタリングについて、バイオ・環境・土木などの分野融合的な工学研究を行っています。
地下環境の原位置除染技術の開発
バイオ電気化学的システムなどを用いた難分解化合物の分解や金属イオンの低毒化・不働態化を原位置で促進する技術の開発
地下環境の汚染拡散防止技術の開発
バイオセメントを利用した土壌固化、汚染物質封入と拡散遮蔽技術、および高付加価値セメントの開発
地下環境の汚染動態の理解
ミクロ(汚染物質と微生物の反応、難分解化合物の代謝など)、メソ(汚染物質の流動挙動の解析)、マクロ(実環境のモニタリング、流動シミュレーションによる汚染物質の動態)の各スケールで地下環境の汚染物質の動態の理解
地下環境の汚染検出技術の開発
地下の環境汚染の高感度・簡便なモニタリング・検出技術、及び統計やAIを利用した評価手法の開発
本講座の活動を通じて、地下の環境汚染の検知・理解・対策のための分野融合的な研究・技術開発を実施し、地下の環境問題対策の拠点創成に取り組んでいます。さらに、さまざまな環境対応に関わる技術習得と教育の充実を通し、環境問題に対応できる専門人材の育成を行なっています。
INPEX社会連携講座:https://aresder.t.u-tokyo.ac.jp
株式会社INPEXと社会連携講座「持続可能なエネルギー資源開発のための先進的貯留層工学」を開設しています。本講座では、より低炭素なエネルギーの安定供給に向けた、石油・天然ガス開発とCO2の分離回収・地中貯留(CCS)に関する技術開発と研究に取り組んでいます。
油ガス田の生産挙動やCCSにおける環境のモニタリングに応用可能な新規トレーサー技術の開発
AIを活用した油ガス田開発計画やCCS操業計画の最適化技術の開発
地下流体挙動の解明など実践的な工学研究
本講座の活動を通じて、エネルギー安定供給と低炭素化に資する貯留層工学の研究・技術開発を実施し、次世代の貯留層工学の拠点創成に取り組んでいます。さらに、さまざまなエネルギー技術に関わる技術習得と教育の充実を通し、資源開発と温暖化対策を担って持続可能な社会の構築をリードする次世代の貯留層工学の専門人材の育成を行なっています。
バイオ電気化学的システムの基礎研究と技術開発:微生物を用いたカーボン・エネルギー変換技術
バイオ電気化学的システム(Bio-Electrochemical System: BES)とは、電気化学的反応の触媒に微生物を利用した反応システムの総称である。有機物などの嫌気的酸化により発電する微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell)や、水素の生産を目的とした微生物電気分解セル(Microbial Electrolysis Cell)など、エネルギー生産・変換、水処理、バイオセンサーなどの分野での利用が期待されている。
当研究室では、バイオカソード(Biocathode)を用いたBESによるCO2変換・有効利用を中心とした研究を行っている。バイオカソードとは、電気化学的な還元反応の触媒に微生物を利用した電極(カソード)である。電極の表面に定着している微生物が、電極から供される電子を利用し、還元反応による化合物の合成を触媒する。微生物の優れた代謝能により、バイオカソードは電気エネルギーを高い効率で利用し、CO2から有機物(燃料,原料などの有用化合物)を合成する(Microbial Electro-Synthesis)。
バイオカソードを利用してメタンを生成する反応系は特に電気化学的メタン生成(Electromethanogenesis)と呼ばれる。バイオカソード上で電子(e-)とプロトン(H+)を用いてCO2を還元し、メタンを生成する(CO2 + 8H+ + 8e- → CH4 + 2H2O)。この反応系は、基本的にCO2と電力があれば、メタンの生産にバイオマスなどの原料を必要としない。また、反応の過電圧が極めて小さく、クーロン効率が高い(ca. 96%)ため、電力の変換・蓄電(Power to Gas)での活用が期待される。
実用化には、しかし、反応速度の向上など、バイオカソード性能の更なる進化が必要だ。現状はまだ基礎研究の段階にあり、電気化学的メタン生成を触媒する微生物的な機構に関しても不明な点が多い。当研究室では、カソードと微生物の間の電子移動の機構の解明などの基礎的研究と、リアクターや電極の改良、電子伝達を仲介する添加物の利用など発展的な技術開発を行っている。また、新規の触媒生微生物を用いた新たなCO2変換・利用技術の開発を試みている。
資源開発分野の新たなバイオテクノロジー
エネルギー密度や安定性、原料などとしての幅広い用途、埋蔵量、コストなど、人類は石油より優れた資源をまだ見つけてはいない。再生可能エネルギーがより広く使われるようになる未来でも、石油・天然ガスをはじめとする化石資源は(CO2回収・貯留などにより、使用による温暖化ガスの放出を最小限に抑えられた上で)人類の社会を支え続けていく。
当研究室では、資源開発で利用可能な新しいバイオ技術の開発を行っている。資源開発では、これまでも微生物を用いた石油増進回収(Enhanced Oil Recovery: EOR)や微生物脱硫、廃水処理などでバイオ技術の利用が試みられてきた。しかし、私たちは、近年の技術発展とエネルギー・資源分野の最新情勢を背景に、バイオ工学の石油・天然ガスの分野での新しい技術応用を試みている。最近はバイオ粒子を用いた新規のEOR技術、地下流体挙動の4Dモニタリング手法、サワーガス処理に伴うメタン生産技術の開発に取組んでいる。