開催趣旨

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情報通信技術(ICT)は、生産性の向上や国際競争力の強化をもたらし、社会や組織の変革の鍵になる可能性をもっている。

日本はブロードバンドインフラの面では世界最先端であり、娯楽性の高い優れたサービスがあるが、ビジネスや社会の大きな変革につながるようなICTの活用は進んでいない。本フォーラムでは、オバマ政権の大胆なICT活用や日本の先駆的なネット事業にヒントを得て、日本の組織・社会においてICTの可能性を引き出して国際競争力を高めるシナリオを探る。

米国に誕生したオバマ政権は、選挙戦のツールとして ICTを最大限に利用したことで知られるが、同時に、経済復興などの政策立案でも大胆にウェブを活用し、政策形成における透明性の向上や活発な市民参加に取り組んでいる。また、ネット上で専門家が交わすメディア産業やネット企業に関する議論は、報道などを経由しながら企業の経営判断を左右する影響力をもち始めている。

このように米国では、ネット上のオープンな議論やアイデアが経営や政策上の意思決定を直接左右するという構図が次第に成立しつつある。これは、米国に新しい競争力をもたらすものになるのだろうか。

翻って日本では、娯楽や生活のための優れたツールはあるものの、政治やビジネス分野でのインターネットが果たす役割は限られている。企業へのICTの導入には組織や業務の見直しと併せた実施が有効だが、日本はそのような取り組みが少ないとされる。インターネットを理解し、活用できることがキャリアや経営判断に役立つ度合いや、社会的に評価される度合いも限られている。長期雇用の下では情報発信をするよりも社内での評判が重要になる、といった制度的要因、公の場での議論が必ずしも歓迎されない風土などもある。これらは、日本がこれからもICTの可能性を活かしきれないことを示唆しているのだろうか。

あるいは、日本独自のICT活用の可能性があるのだろうか。例えばICTでも対人コミュニケーションに関わらない交通システムや電力配送などの分野への活用による高度化も近年注目を浴びている。こうした分野での日本の成長を軸に日本の国際競争力の強化を狙えるだろうか。その実現のために、経営者やビジネスパーソン、市民や政府は何をするべきなのか。

本フォーラムではICTに関わる経営者、研究者として第一線で活躍している識者を招き、日本に必要なICT活用と、そのための制度・意識の変革の課題を論じる。