平成23年3月に発生した東日本大震災は、広範な地域に凄惨な被害をもたらし、その復旧・復興の在り方、進捗が日本社会全体の課題となっています。この復興のためには長期的に大量の人的物的資源の投入が求められています。そのような中で期待されるのが、大学生を中心とした若者による被災地支援のためのボランティア活動だと考えられます。すでに震災発生直後から、多くの学生が被災地域及び周辺地域において各種支援活動を展開しています。また、個々の学生の自発的取組みとともに、大学のボランティア活動センターによる取り組みも積極的になされていることは、皆様もご存じかと思います。
今回のような、未曾有の震災のみならず津波被害および原発事故という複合的な状況においては、深慮すべき様々な課題も当然存在します。たとえば、学生を被災地域に派遣することの是非や派遣するタイミングの在り方、ボランティア参加前に備えるべき知識の内容、ボランティア活動を正規授業科目に位置づけることの是非、ボランティア活動が内包する教育的効果については、これまでの各種のボランティア活動の実践及び研究の知見のみでは対処できない課題となることが予測されます。
そのような中で、学生による震災ボランティアの状況を整理・検証することは、今後の大学生等の若者による災害被災地ボランティアの在り方を示唆するうえで大変重要だと考えます。そこで我々は、この問題を高等教育研究の中に位置づけ、すでに先行する今回の震災における学生被災地ボランティア支援の実態に関する正確且つ詳細な情報収集とその分析が是非とも必要であるという認識に至りました。今次の震災でのボランティア活動の検証を通じて、次の災害への備えとする意味も込めて、研究会を組織するに至りました。
上記の問題意識を共有する研究者および高等教育関係者が集い、調査活動のために結成されたのが「学生ボランティア研究会」です。この研究会組織は、教育領域の取材経験の豊富な小林功英(教育学術新聞記者)の呼びかけに、今回の大震災に対する高等教育関係者の貢献を模索する白川優治(千葉大学)、立石慎治(東北大学*)、村澤昌崇(広島大学)が応じる形で結成されました。冒頭で触れましたように、本組織は、このたびの東日本大震災を契機とした学生による被災地支援ボランティアの実態調査を行い、学生ボランティアの是非やその教育効果を総合的に検討することを主目的とします。
代表:小林功英(日本私立大学協会 教育学術新聞:研究会統括・渉外担当)
白川優治(千葉大学:総務・渉外、調査デザイン・分析、関東地区学生調査担当)
立石慎治(東北大学*:調査デザイン・分析、財務・会計、東北地区学生調査担当)
村澤昌崇(広島大学:調査デザイン・分析、西日本地区学生調査担当)
* 2013.7より国立教育政策研究所.