2018年4月19日(木)
講演者:本田 淳史氏(横浜国立大学)
タイトル: 混合型曲面に対する曲面論の基本定理と等長変形
アブストラクト: ミンコフスキー空間の連結な正則曲面で,空間的な部分と時間的な部分を持つものを混合型曲面と呼ぶ.空間的部分と時間的部分の境界の点,つまり光的点は幾何構造の特異点とみなされる.本講演では,混合型曲面の光的点の近傍における曲面論の基本定理を紹介する.さらにその応用として,混合型曲面の等長変形定理を導く.
2018年5月17日(木)
講演者: 小磯 憲史 氏 (阪大名誉教授, 九大IMI)
タイトル: Riemann 多様体における弾性曲線の波動型運動方程式
アブストラクト: ピアノ線を手本とする曲線を弾性曲線という.その運動方程式は理想化の取り方によっていくつか考えられる.この講演では Caflish & Maddocks が導入した太さのある弾性曲線の波動型運動方程式を中心に紹介し,それを Riemann 多様体上に一般化する手法を解説する.できれば縮小写像の原理の基本部分と Riemann 幾何を要する評価部分についても述べたい.
2018年6月7日(木)
講演者: 桑江 一洋 氏 (福岡大学)
タイトル: Laplacian comparison theorem on Riemannian manifolds with ${\rm CD}(K, m)$-condition for $m\leq1$
アブストラクト:この講演は中国科学院のXiangdong Li 氏との共同研究、および氏と北京師範大のSongzi Li 氏との共同研究に基づく。完備で境界のない重み付き$n$-次元リーマン多様体$(M,g,¥phi)$, $¥phi¥in C^2(M)$ と重み付きラプラシアン$L=¥Delta-¥nabla ¥phi¥cdot ¥nabla$を考える。$L$は測度$¥mu:=e^{-¥phi}{¥rm vol}_g$について対称になる。$m¥in]-¥infty,+¥infty]$と$x¥in M$に対して$m$-Bakry-Emery Ricci tensor ${¥rm Ric}_{m,n}(L)(x)$ を$${¥rm Ric}_{m,n}(L)(x):={¥rm Ric}(x)+¥nabla^2¥phi(x)-¥frac{¥nabla¥phi(x)¥otimes¥nabla¥phi(x)}{m^n}$$で定める。$K$を$M$上の連続関数として$(M,g,¥phi)$がCD$(K,m)$-条件を満たすことを${¥rm Ric}_{m,n}(L)(x)¥geq K(x)$が全ての$x¥in M$で成立することとする。CD$(K,m)$-条件は$m¥geq n$のときにBakryとEmeryによって最初に導入され、$L$の形でのBochner-Weiztenboeck公式を経由してこの条件がBakry-EmeryのΓ2条件、いわゆる$L$の形でのBochnerの不等式と呼ばれるものと同値であることが知られている。$K(x)$が半直線上の連続関数と距離関数の合成$K(d(x,p))$で$m¥geq n$のときにXiangdong Li (‘07)は$L$に対するラプラシアン比較定理を確立し、重み付きリーマン多様体についての種々の幾何学的性質、例えばBishop-Gromov不等式やMyersの定理等、また$L$-調和関数のYauの勾配型評価などの解析的性質、さらには$L$-拡散過程の保存性・フェラー性などの確率論的性質を導出した。一方で太田慎一氏(‘16)によって, CD$(K,m)$-条件は$m¥geq n$だけでなく、$m<0$のときにもΓ2条件と同値であることが指摘され、$m$が負の場合にも幾何学的に意味があることが判明した。最近のWylie-Yeroshkin(’16) の結果では$m=1$の場合に閉形式$¥alpha=¥frac{d¥phi}{n-1}$に対応する重み付き接続を経由することでそれまでとは異なる形の$L$に関するラプラシアン比較定理を導出し、種々の幾何学的性質を導出した。この講演では重み付きラプラシアン$L$に関する比較定理が$m¥leq1$でも成立することと、それに応じた種々の幾何学的結果を報告する。時間に余裕があれば解析的な結果にも触れたい。
2018年6月21日(木)
講演者: 小澤 龍之介 氏 (大阪大学)
タイトル: Stability of RCD condition under concentration topology
アブストラクト: 近年、測度距離空間が「Ricci曲率が実数K以上」と考えられるRCD(K,∞)条件がよく研究されている。集中位相とは測度距離空間全体の集合上の位相であり、よく知られている測度付きGromov-Hausdorff位相よりも弱く、閉Riemann多様体の列で次元が無限大へ発散するが極限空間が有限次元になるようなものを許容する位相である。本講演ではRCD(K,∞)条件をみたす測度距離空間の列が集中位相で収束しているときに、極限空間もRCD(K,∞)条件をみたすという結果を紹介する。本研究は横田巧氏(京都大)との共同研究である。
2018年7月12日(木)
講演者: Ding Qing 氏(Fudan University)
タイトル:Non-positively Curved Manifolds and the Martin Boundary
Abstract: In this talk, we report our study of the interaction between function theory and geometry on a complete simply-connected Riemannian manifold with non-positive curvature. Our aim is to generalize such a study from the case of strictly pinched negative curvature to the case of non-pinched curvature. The key subtly idea applied here is to introduce a new geometric boundary at infinity and to prove that it is a part of the Martin boundary under certain geometric conditions. Then we obtain a representation formula of bounded harmonic functions from Martin's theory. Some related representation formulae are also discussed.
2018年7月26日(木)
時間: 16:30-18:00 (いつもと時間が異なります)
講演者: 只野 誉 氏 (東京理科大学)
タイトル: Ricci ソリトンの幾何学
アブストラクト: 1980 年代に R. S. Hamilton によって導入された Ricci フローは多様体上の標準計量の構成において大きな成功を収め, 微分幾何学における重要な地位を確立した。中でも G. Perelman による Poincar¥'{e} 予想の解決や S. Brendle 及び R. Schoen による微分可能球面定理の解決は記憶に新しい。Riemann 多様体上の Ricci ソリトンは Einstein 多様体の自然な一般化であるだけでなく, Ricci フローの自己相似解に対応し, このフローの特異点モデルとして自然に現れる重要な研究対象である。Ricci ソリトンは数学のみならず超弦理論の AdS/CFT 対応においてもその重要性が指摘され, 近年活発な研究が行われている。本講演では Riemann 多様体上の Ricci ソリトンに焦点を当て, その基本的な性質を紹介した後, 講演者が得た最近の結果についてお話ししたい。具体的には Einstein 多様体に対する Bonnet-Myers の定理や Hitchin-Thorpe 不等式などの基本的な結果が Ricci ソリトンに対してどの程度拡張出来るかをお話しし, Ricci ソリトンに対する直径評価や Einstein 多様体と Ricci ソリトンの間に成り立つ間隙定理などを紹介する。さらに, 近年の Ricci フロー理論の成功を契機として導入された佐々木-Ricci フローや佐々木-Ricci ソリトンに対しても同様の考察を試み, 佐々木-Ricci ソリトンに対する Bonnet-Myers の定理や佐々木-Einstein 多様体と佐々木-Ricci ソリトンの間に成り立つ間隙定理などを紹介したい。
2018年8月9日(木)
講演者: 中村 謙太 氏 (九州大学)
タイトル: p 山辺流の解の先験的評価
アブストラクト: ユークリッド空間内の有界領域における低階項つき二重非線形偏微分方程式をp山辺流とよぶ。pは方程式中に現れるpラプラシアンである。この講演では古典的山辺流にも触れながら、p山辺流の解の存在と、エネルギー評価等の先験的評価、正則性について得られた結果を述べる。本研究は熊本大学 先端科学研究部 三沢正史 教授との共同研究である。
2018年8月23日(木)
講演者: 大野 晋司 氏 (日本大学)
講演タイトル: Hermann作用の軌道の幾何学
アブストラクト: この講演では、Hermann作用と呼ばれるRiemann対称空間へのある種の等長的なLie群作用について紹介する。Hermann作用はRiemann対称空間のイソトロピー作用の一般化であり、その軌道はRiemann対称空間の部分多様体の例を与える。Riemann対称空間のイソトロピー作用の軌道の第二基本形式等の部分多様体としての性質は、制限ルート系を用いて詳細に記述できる事が知られている。さらに2011年に井川によって導入された制限ルート系の一般化概念である重複度付き対称三対の概念を用いると、Hermann作用のうち多くを占める可換なHermann作用の軌道の性質を記述する事ができる。本講演では重複度付き対称三対の類似の概念を用いて、可換とは限らないHermann作用の軌道の性質を調べる事ができる事を説明したい。
2018年9月20日 (木)
講演者: 船野 敬 氏(東北大学)
タイトル: ラプラシアンの固有関数の値の分布について
2018年10月4日(木) (15:30-16:50, 80分)
講演者:北別府 悠 氏(熊本大学)
タイトル:閉凸集合の間の新しい距離について
2018年10月18日 (木) (いつもと開始時刻が異なります 15:00-16:20 80分)
講演者: 本多 正平 氏(東北大学)
タイトル: Ricci曲率が下に有界な測度距離空間のL^2空間への自然なほぼ等長埋め込み
アブストラクト:Nashの埋め込み定理とは,任意のコンパクトRiemann多様体は十分大きな次元のEuclid空間に等長的に埋め込める,という主張を指す.この写像は自然なものではないが,熱核を使った自然な,しかし等長ではなくほぼ等長な写像がBerard-Besson-Gallotによって考察され,この写像は機械学習および多様体学習と深い関係を持つことから,現在(応用上の立場からも)非常に注目を集めている.この写像をRCD空間というRicci曲率が下に有界な測度距離空間上で考えることで,多様体上ですら新しい評価を与えることについて説明をしたい.本講演はLuigi Ambrosio氏,David Tewodrose氏,Jacobs. W. Portegies氏との共同研究にもとづく.
2018年11月15日 (木)
講演者: 深谷 友宏 氏(首都大学東京)
タイトル: 粗凸空間と粗Cartan-Hadamardの定理
アブストラクト: 幾何学的群論や距離空間の幾何学の研究に於いて,「非正曲率を持つ距離空間」の様々な定義が知られている. 例えばGromov双曲空間・CAT(0)空間・Busemann空間などである. Gromov双曲空間のクラスは擬等長同型で閉じるという著しい性質を持つが,一方で直積では閉じていない.また,CAT(0)空間やBusemann空間のクラスは直積では閉じるが,擬等長同型では閉じていない.講演者は尾國新一氏との共同研究で,Busemann空間の持つ距離函数の「凸性」を擬等長不変にした,「粗凸空間」を導入した.この空間のクラスは,擬等長同型と直積の二つで閉じている.さらにこの空間に対し,Riemann幾何学に於けるCartan-Hadamardの定理の粗幾何学に於ける類似が成立する事を示した.この講演では粗凸空間の定義とその意義,および粗Cartan-Hadamardの定理の主張と粗Baum-Connes予想への応用について解説する.
2018年11月22日 (木) (いつもと開始時刻が異なります 15:00-16:20 80分)
講演者: 横田 巧 氏(京都大学)
タイトル: RCD空間の集中とスペクトル収束
2018年12月6日 (木) 15:30-17:00
講演者: 梶ヶ谷 徹 氏(東京電機大学)
タイトル: 重み付きハミルトン安定性と変形ラグランジュ平均曲率流
アブストラクト: 平均曲率流とは, リーマン多様体M内の部分多様体Nの体積汎関数の勾配流のことであり, 極小部分多様体を探す一つの手法として近年活発に研究されている.もしMがケーラー・アインシュタイン多様体で, Nがラグランジュ部分多様体であるなら, 平均曲率流はラグランジュ性を保つことが知られており, この場合を特にラグランジュ平均曲率流と呼ぶ.本講演では, ケーラー・アインシュタインの場合に知られていたラグランジュ平均曲率流に関するいくつかの基本的事実が, ファノ多様体を含むより一般のケーラー多様体内の重み付き体積汎関数の勾配流(変形ラグランジュ平均曲率流)に対して自然に拡張できることを示し, 特にMが正の(変形)リッチ曲率を持つ場合に, 幾何学的に自然な初期条件のもとでの変形ラグランジュ平均曲率流の収束に関する結果を紹介する.本講演は, 國川慶太氏(東北大AIMR)との共同研究に基づく.
2018年12月20日 (木) 15:00-16:20 (当日は2講演あります)
講演者: 土田 旭 氏(北海道大学)
タイトル: 接分布からベクトル束への束準同型の安定性について
2018年12月20日 (木) 16:30-17:50 (当日は2講演あります)
講演者: 中村 拓也 氏(九州大学)
タイトル: ほぼ非正リッチ曲率を持つコンパクトリーマン多様体上のキリングベクトル場について
アブストラクト:非正リッチ曲率を持つコンパクトリーマン多様体は,キリングベクトル場全体からなるベクトル空間の次元が多様体の次元以下であり,等号成立はリーマン多様体が平坦トーラスに等長的な場合に限る,というBochner の定理がある.本講演では,この定理のリッチ曲率に関する条件を「十分小さな正の上界を持つ」という条件に置き換えても,定理の主張が成立することを紹介する.本研究は九州大学の勝田篤教授との共同研究である.