(基本事項)
福岡大学微分幾何セミナーは, 福岡大学理学部9号館4階 大学院講義室3 で基本的に行います.
また曜日・時間は木曜日 15:30 から 90 分がデフォルトです.
2024年 7 月11日(木)
講演者: 熊谷 駿 氏 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
タイトル: リーマン面上の正則二次微分とそのVeech群について
アブストラクト:リーマン面上の正則二次微分が定める「平坦構造」における自己アフィン写像の表現行列の群をVeech群という.これは円盤でパラメトライズされる,リーマン面のアフィン構造変形全体の族のタイヒミュラー空間への埋め込みに対する写像類群の作用を表す群にもなっている.正方形トーラスの一点上で分岐する被覆面(折り紙)においては,Veech群のフックス群模型がモジュライ空間への埋め込みまで含めて代数的に特別な性質をもつことが知られている.一方で具体例の計算にあたっては定式化に用いる対象の煩雑さや計算量による問題があるものの,次数7までの折り紙で網羅的な計算結果が得られている.本講演では上記のほか, 折り紙を例としてVeech群の作用の不変量を被覆,タイリング ,特異点 のそれぞれから構成するアプローチとそれらの関係について紹介する.
2024年4月25日(木)
講演者: 國川 慶太 氏 (徳島大学)
タイトル: 余次元の高いself-shrinkerのモース指数評価
アブストラクト: 本講演では余次元の高いself-shrinkerのモース指数が第1ベッチ数により下から評価できることを紹介する. ただし, 現状, その結果を得るためには第2基本形式に関する技術的な仮定が必要である. 超曲面ではそのような技術的仮定が不要であることを考慮すると, 我々の結果には検討・改良の余地が大いに残されている. 講演では, その辺の事情も含めて現在進行中の話や今後の展開について話す予定である. なお, 本講演の内容は櫻井陽平氏(埼玉大学)との共同研究に基づくものである.
2024年5月16日(木)
講演者: Jun Kitagawa 氏 (Michigan State University)
タイトル: Sliced及びdisintegratedモンジュ・カントロビッチ距離について
アブストラクト: Radon変換と最適輸送を組み合わせて$\mathbb{R}^n$上の確率測度空間に導入されるsliced Wasserstein及びmax-sliced Wasserstein距離なるものがあり、計算が難しい古典的なモンジュ・カントロビッチ距離の代用品として用いられる事がある。本講演ではまずこれら距離の幾何学的構造が古典的なモンジュ・カントロビッチ距離のものと大きく違う場合があることを述べる。続いて代わりとなるようなdisintegratedモンジュ・カントロビッチ距離と呼ばれるものを紹介する。これらはファイバー束上の確率測度空間上での距離の族であり、ファイバー毎での輸送を反映する。Disintegratedモンジュ・カントロビッチ距離の基本的な幾何学的構造について述べ、関連する重心問題に関しての結果もいくつか紹介する。本講演は高津飛鳥氏(東京都立大学)との共同研究に基づく。
2024年6月13日(木)
講演者: 可香谷 隆 氏 (室蘭工業大学)
タイトル:Sharp interface limit for a quasi-linear large deviation rate function
アブストラクト:本講演では,大偏差原理で現れるある汎関数に対する特異極限問題を考察する.汎関数の特徴として,Allen-Cahn方程式の解が最小解であることが挙げられる.Allen-Cahn方程式の解は,近似パラメータの極限を取ると,Sharp interfaceが現れ,平均曲率流によって動くことが知られている.本講演で扱う汎関数に対しては,一般の曲面流に対し,曲面流をSharp interface として生成する関数のクラスに制限すると,その関数クラス上で,汎関数が平均曲率流を最小解とする曲面流に対するある汎関数にガンマ収束することを示す.本講演の内容は,九州大学の角田謙吉氏との共同研究に基づく.
2024年6月27日(木)
講演者: 北別府 悠 氏 (熊本大学)
タイトル: RCD 空間上の Shannon 不等式について
アブストラクト: Shannon 不等式とは, ユークリッド空間上の密度関数を持ち分散有限な確率測度に対して, エントロピーを分散を用いた式で抑えるような不等式のことである. この不等式は Gauss 分布の時に sharp になることが知られていた. 本講演では同様の不等式が非崩壊な RCD(0,N)空間と呼ばれる測度距離空間でも成り立つことと, 不等式が等号になる時には測度距離空間が錐になるという剛性定理について証明のあらすじを述べる.
2024年7月4日(木)
講演者: 芥川 和雄 氏 (中央大学)
タイトル: 双曲空間の積から双曲空間への調和写像について
アブストラクト: 双曲空間を含めたrank 1 の非コンパクト型対称空間の間の調和写像の研究は満足いく結果が得られている.双曲空間の積は,既約ではないが,higher rank の非コンパクト型対称空間である.本講演では,双曲空間の積から双曲空間への調和写像の存在・一意性の研究成果について解説する.本研究は,松本佳彦氏(阪大理) との共同研究である.