裏actors
三
軒
太
夫
女
衒
の
く
ろ
べ
美しさと芸事の技量もさることながら、数々の奇行でも名高い花魁である。
廓の窮屈さもなんのその、今日も心は遥か遠くを彷徨っている。
なにしろ現実はなにかと不都合、不便ばかりで、真にもって面倒くさいのである。
かといって万一落籍されて、下々の暮らしをすることを考えると、これまた面倒くさい。
いわゆる「人買い」である。
悪人の代名詞である。
仕入れ価格が五百円で売値が五百円では、赤字になることに、最近気づいた。
実はお人よしかも知れない。
そんな調子なので、人間の娘の売買だけでは立ち行かず、犬猫鳥にまで商売を拡げている。
渡り中間の竹はん
そろそろ自分にもいいことがあってもいいんじゃないか、と思いつつ何も起こらないまま現在に至る。
両手の指の数を超える武家に奉公してきたが、特に士分に昇格することもなく、今日も犬の散歩や、草履取で日が暮れる。
背負っているのはもちろん名刀竹光である。
杉本屋の旦那である。
献残商、平たく言えばバザーである。
人が必要必要としないものが、大して売れるはずもなく、せっせと働いたところで、たかが知れている。
最近三軒太夫のところへ足繁く通っているので、ますます商売は左前である。
杉
本
屋
の
旦
那
禿
の
る
う
ち
ゃ
ん
三軒太夫の禿である。
野山で遊び呆けているところを、女衒のくろべに捕獲された。
人の迷惑顧みず、禿生活をエンジョイしている。
素直で裏表がない、といえば聞こえが良いが、つまり大変失礼な奴である。