その1
「災難」のときの、アメリカに戻る便でのことである。航空券の日にち変更が急やったんで、かどく(家族)揃って横一列とか、すぐ近くとゆう席はもうなかった。私は次男と一緒に、三席並んでるとこの、窓際と真ん中の席に座ることになった。
通路側に超肥満のおばちゃんいてたら、肉がアメーバみたいに私の席を侵略してくるはけ、困るなあ。なんて考えながら、自分の座る列を見ると、通路側に60台半ばと思われる、アジア人のおっちゃんが座ってた。おっちゃん、スリムやん!ああ良かった。「すいません、奥に座ります」
おっちゃん、立って私らを奥に行かせてくれた。そんとき、ホッとした顔で「ああ良かった、日本の方ですね」てゆった。
その2
聞くと、海外旅行どころか、飛行機に乗るのも今日が初めてとか。出身は、東北地方の某AKT県とゆうことも教えてくれた。別に隠すこともないんやが、「某」てつけたら、どこかいっこも分かれへんやろ?
「娘がアメリカの人と結婚していて、この間家を買ったので、遊びに来てくれと言われまして」
てゆったと思う。
とゆうのも
その3
関西地方の専門用語バリバリの私がゆうのも何やが、おっちゃん、かなりディープなAKT地方の専門用語を自由自在に操っている。私、そっち方面の用語はだんねん(残念)ながら造詣が深くないんで、半分以上理解できやん。
侮れん、日本の専門用語の難しさ!
おっちゃん、日本語の通じやん人が隣に座ったらどーしよーって戦々恐々としてたとゆうわけ。それが日本人やったんで、緊張の糸がいっぺんにほどけてしもて、こんだらエンドレスでしゃべりだした。
ほやけど、何ゆってるか、未熟者の私には殆どわからん。ひたすら曖昧な笑顔でうなずくのみであった。
その4
おっちゃんどうやら、英語は書けやん、読めやん、話せやん。アメリカ入国の際に必要な書類を機内でもろたが、書き方分からんで四苦八苦してる。
家族が用意したと思われる、「地球の歩き方」からコピーしたと思われる「必要書類の記入の仕方」及び、旅行の日程、滞在先の住所、電話番号など、ほんっまに細かいことまで書き込んだ書類は持ってた。が、どの情報をどこに書き込んだらええかさっぱり分からんで、頭かかえてた。
「あのー、よろしかったら私が書きましょうか?」
むちゃむちゃほっとしてるおっちゃん。
その5
そのうち、飲み物サービス、ほして食事サービスが始まった。おっちゃんは「何をどう頼んだらいいのか分からないので、お任せします」ほんなことゆわれても。
おんなじワイン飲んだ。おんなじ「ビビンバ」頼んだ。
食事には、サラダがついてた。皿の上には、きれーにピシーとラップかけられちゃあって、まるでなんにもないよーに見える。なかなかええ仕事してるやん。
おっちゃんが困った顔して「あの~、ドレッシングをかけたらこうなってしまいました」てサラダの皿を見せに来た。
ラップがかかっているのに気づかなくて、その上にドレッシングを絞り出したおっちゃん。ドレッシングがこんもり山型になってる。
ドレッシングがこぼれやんよーに、そーっとラップをはがし、「ぎゅー」てサラダの上に絞り出してあげた。
その6
お腹いっぱいになったことやし、さー寝よーと思ったんやが、おっちゃんずーっと話かけてきて、寝られやん。
+お腹いっぱいになったことやし、さー寝よーと思ったんやが、おっちゃんずーっと話しかけてきて、寝られやん。
「私、5年前に退職したときに、胃がんが見つかったんです。医者に、もう末期だから助からないと言われて、覚悟していたんです。それが、いつの間にか消えちゃったんですよ」
おっちゃん、それ、でったいガンと違うって!
「いろいろお世話になったから、これ。AKTで買ってきたものですけど」て、「チップスター」と「種抜き梅干し」くれた。
その7
寝たり起きたり話したりしてるうちに、到着前の食事の時間になった。
「そろそろ11時。あと一時間半もあればデトロイトに着きますよ」
ほしたら、焼きそばをたべ終えたおっちゃんが、ものすごー真面目な顔して聞いてきた。
「あの~、今の食事は、朝食でしょうか、昼食でしょうか?」
「…兼用だと思います」
さーそろそろ着陸や。そんとき気ーついた。
おっちゃんの言葉、半分以上理解できる!
その8
外国語を勉強する際に、ひたすら聞いて聞いて耳を慣らすとゆう勉強法があるが、その有効性を、身を持って体験した。この勉強法、なかなかいけるで!
入国審査の際には、娘が通訳としてお手伝いした。おっちゃん、何度も私らにお礼ゆって、先に入国した。私らはその後すぐ、別室送りになったとゆうわけ。
夕方。おっちゃんが、わだわだ私の携帯に、お礼の電話をかけてきてくれた。 何て丁寧な。
おっちゃん、お元気で。帰りの飛行機では、サラダのラップは外してね!