活動報告

【研究会開催の報告】 

2023年度国際シンポジウム開催報告

  2023年は11月23日に、村上春樹文学研究者を招いて、オンライン国際シンポジウムを開催した。当日の事務局は村上の初期代表作『羊をめぐる冒険』(以下『羊』と略す)の舞台とも称されている北海道美深町に設置し五名の講演者は現地のホテル青い星通信社にて登壇した。講演者以外に、地元の町民二名も臨席して質疑応答に参加しており、オンラインでは30名以上の参加者を迎えることができた。

  星野智之(TOURIST HOME & LIBRARY 青い星通信社代表)は「『羊をめぐる冒険』をめぐるゴールドラッシュの点と線」をテーマに、『羊』に主要舞台として登場する「十二滝町」と美深町の関連性を論じた上で、村上が愛読していた米国作家ジャック・ロンドン(1876〜1916)の著作『荒野の呼び声』等にまで展開した。  権慧(早稲田大学助教)は中国語圏と韓国における『羊』の出版状況を紹介し、さらに「やれやれ」などのセリフが、各国でどのように翻訳されているかを比較研究した。 楊炳菁(北京外国語大学・朝日大学准教授)は「クローズド・サーキット」をキーワードに『羊』の冒険主体を「僕」から「星羊」、「羊博士」、「鼠」などに拡大し、同作を日本近代化論の視点から考察した。 小山鉄郎(共同通信社編集委員・論説委員)は村上作品における聖地としての「四国」と「北海道」を紹介し、「十二滝町」など頻出する数字の奥義を論じた上で、さらに「川」と「滝」をキーワードに村上の新作小説『街とその不確かな壁』を解読した。 藤井省三(名古屋外国語大学図書館長・東京大学名誉教授)は「消える女と“満洲国”の記憶」をテーマに『羊』の登場人物「耳のきれいな女」の謎、村上作品における「耳」と「蝶」の象徴性などを論じ、同作を村上文学における日中戦争の記憶を描く小説シリーズの原点として位置付けた。

 全講演終了後に五名の講演者によるディスカッションを行い、参会者より質問を受け付け、同作のみならず、村上文学全体に対する理解を深めることができた。

 今年度も東方学会若手支援助成金をいただき、講師の講演料として使用させていただいた。改めて、深く感謝申し上げたい。


【研究会開催の報告】 

2022年度特別講演会開催報告

2022年10月6日に特別講演会を開催した。新型コロナウィルス感染症対策のためハイブリッド形式を採用し、本部は早稲田大学大隈記念タワーに設置した。当日は対面10名、オンライン参加者40人以上の参加者を迎えることができた。

講師としてマレーシア在住の日本文学翻訳家・エッセイストの葉蕙氏、コロラド大学名誉教授・日本文学研究者のフェイ・クリーマン氏にオンライン講演を行った。

葉氏は「村上春樹と旅に出る」をテーマに村上の旅行記を中心に論じ、葉氏自身の村上文学翻訳および経験談をシェアした。クリーマン氏は「ノンフィクションは文学ですかーー村上春樹における虚構と真実」をテーマに、『アンダーグラウンド』と『神の子どもはみな踊る』について分析を行った。コメンテーターとして、藤井省三氏(名古屋外国語大学 教授・東京大学名誉教授)とエリック・シリックス氏(早稲田大学国際文学館 助教)に対面で参加していただいた。

質疑応答ではアメリカや中国の村上文学研究者から質問があり、議論を深めることができ、世界中で起きている村上ブームを再確認することができた。

本部には共同通信社、読売新聞社、NHKの記者が臨席して傍聴しており、講演会の様子はNHK WORLD NEWSROOM TOKYOにてライブ放送された。

本研究会は東方学会若手支援助成金をいただいており、講師の講演料、お茶代、資料印刷費用として使用した。改めて、深く感謝申し上げたい。


【12月のある晴れた日に行われた読書会】

『ノルウェイの森』について語るとき、私たちの語ること

 

  2021年12月12日に早稲田大学早稲田キャンパス8号館にて「『ノルウェイの森』について語るとき、私たちの語ること」をテーマとする読書会を開催した。講演者を含め、10名の参加を得た。


  本会顧問藤井省三氏より「村上春樹と中国――日中戦争の記憶」という題目で、中国の村上ブームと村上チルドレンを紹介した後、『騎士団長殺し』(2017)と『猫を捨てる』(2018)における歴史の記憶、村上文学の魅力について講演を行った


  会長の権慧氏は「中国・韓国における『ノルウェイの森』」を題目に講演を行い、1980年代末から2020年に至るまでの中韓両国の村上ブームを比較したうえで、出版界の新たな動向、訳本の変遷について述べた


  その後、参加者と『ノルウェイの森』への印象、最初に出会った村上春樹の作品などについて語り合い、交流を深めることができた。



2022年1月

【研究会開催の報告】

東アジア村上春樹研究会設立10周年記念国際シンポジウム 開催


2021年10月7日には本会設立十周年を迎えており、当日には中国語圏を代表する村上春樹文学翻訳者の頼明珠、施小煒両氏を招き、記念国際シンポジウムを開催した。新型コロナウィルス感染症対策のためオンライン開催となり(本部は早稲田大学大隈記念タワー1102号室に設置)、日本・中国大陸・香港・台湾・マレーシア・アメリカから40人以上の参加者を迎えることができた。

頼氏は「村上春樹と翻訳」という題目で講演を行い、ボブ・ディラン、カズオ・イシグロ、アリス・マンローに注目し、さらに村上が『Novel 11,Book 18』と『極北』を翻訳したきっかけで、台湾でも両作の中国語訳が台湾で出版されたことを指摘した。

施氏は「‘私文学’としての村上春樹文学―― 『ふしぎな図書館』を例に」という題目で講演を行い、「私文学」と「公文学」について論じたうえで、村上文学がいかにそれを継承・発展したかについて説明を加えた。それぞれ張瑤氏(北京語言大学東京校・講師)と藤井省三氏(名古屋外国語大学・教授 東京大学・名誉教授)がコメンテーターを務めた。

質疑応答ではアメリカや中国の村上文学研究者から質問があり、議論を深めることができ、世界中で起きている村上ブームを再確認することができた。

  本部には共同通信社と読売新聞社の記者が臨席して傍聴していた。 

  本特別講演会は、一般財団法人東方学会の「若手研究者の研究会事業支援」の助成をいただいた。改めてお礼申し上げる。 

2021年11月

第十一回東大中文村上春樹研究会・特別講演会のご報告

去る7月13日、第11回研究会・特別講演会を開催し、東京大学文学部外国人専任講師・孫軍悦先生による「翻訳研究の方法についてー『ノルウェイの森』の中国語訳を手掛かりに」を題とする講演が行われました。孫先生は中国語版『ノルウェイの森』を例に、翻訳テクストの生成過程や翻訳の現実的効果などについてお話してくださいました。質疑応答では設定時間を超えるほど熱論となり、中国での村上ブームや村上作品によく登場する「やれやれ」の訳し方などで大いに盛り上がりました。

質疑応答の時間 懇親会

また、会員総会を開催し、世話人会より以下の通り業務報告がありました。

1. 新入会員(学外会員)3名が承認されました。

2. 会則変更

年会費制廃止にともない、第四条の会員資格を下記に変更しました。会則変更は出席会員全員の同意を得ております。

新・第四条(会員資格)

3. 東大中文村上春樹研究会第四回(2014年8月〜2016年6月)会計報告

第四回目の会計報告をしました。詳細は会員向けのメールマガジンにて公開されております。




第十回東大中文村上春樹研究会・特別講演会のご報告

2015年12月12日、第10回研究会・特別講演会を開催し、中国・東北師範大学日本研究所准教授尚一鴎先生による「村上春樹と莫言小説比較研究」を題とする講演を行いました。尚先生は村上春樹の『ねじまきのクロニクル』と莫言の『赤い高粱家族』を中心に、両作に登場する羅漢と山本の処刑の物語構造に共通する部分などについてお話ししてくださいました。コメンテーターの権慧(本会会員)より村上文学における「歴史認識」に関する質疑が提起され、その後、出席者全員により熱々かつ有意義な討論を重ねることができました。

また、会員総会を開催し、世話人会より以下の通り業務報告がありました。

1.役員の交代

昨年度、研究会前会長徐子怡は博士課程満期退学となりましたので、会則第9条(役員)に従い、第10回特別講演会とあわせて会員総会を開催しました。世話人による新人事の提案、及び出席会員の投票により、交代後の世話人構成は以下となりました。

会 長 権慧 (新任)

副会長兼事務局長 張瑶(留任)

研究会顧問 徐子怡 (新任)

研究会顧問 謝恵貞 (留任)

2. 会則の変更

会員総会にて、出席者全員の同意を得て、第五条の年会費制を廃止し、下記の参加費に改正しました。

新・第五条(参加費)

2016年1月1日より年会費制度を廃止し、参加費制とする。同会が主催する活動に参加する際、正会員・準会員・学外会員およびその他の来場者は会場にて参加費を支払う。参加費の金額はその都度異なり、世話人会により決め、同会ウェブサイトやメールマガジンなどで事前に公開する。

3. ウェブサイトの移転

公式ホームページを本サイトに移転させていただきました。

https://sites.google.com/site/chubunmkhk/

第九回東大中文村上春樹研究会・特別講演会のご報告

第九回東大中文村上春樹研究会はノーベル文学賞発表日である10月8日に東京大学教授藤井省三氏による特別講演会を開催しました。

講演会で藤井省三氏は「『1Q84』の青豆雅美と魯迅の革命同志、秋瑾」を題に、魯迅文学の影が見られる村上文学を論じ、また『1Q84』の女性主人公である青豆雅美と中国の革命家秋瑾(1895〜1907)についてお話をくださりました。

講演会の後は参加者全員でノーベル文学賞発表の瞬間を迎え、当時の様子はNHKや産経新聞社により報道されました。

産経新聞:http://www.sankei.com/life/news/151008/lif1510080038-n1.html

第八回東大中文村上春樹研究会例会のご報告

第8回東大中文村上春樹研究会が無事に終了しました。

発表者・張瑤氏による村上春樹『ノルウェイの森』、岩井俊二『ラヴレター』、そして中国「70後」作家の代表格である慶山(旧名:安妮宝貝)『蓮花』を中心に、三者間の受容、及び作品間における綿密な影響関係分析について研究発表を行いました。発表後の討論も白熱したものとなり、非常に有意義でした。

今回の研究会報告及びそれと関連する情報共有などについて、次回のメールマガジン(2014年9月号)で会員の皆様へ発信致しますので、何卒よろしくお願いいたします。


発表題名PPT         会場の様子


会場の様子 懇親会・左から藤井省三氏・徐子氏・権慧氏・張瑶氏

張苓氏を招いて

2014年3月15日(土)、業務研修のため来日されている新経典文化公司外国文学編集部の張苓副編集長が当研究会にお越しくださいました。張副編集長は新経典文化公司より刊行された村上作品の責任編集者を担当しているだけでなく、岩井俊二作品の中国語訳者でもあります。なお、今回は張副編集長のご都合により、当研究会での特別講演会を依頼することが叶いませんでしたが、次回は、当会員の皆様と一緒に張副編集長を囲んで、中国の村上作品の翻訳出版状況について、ご教示を頂きたいと考えております。

交流会の様子 左から張瑶氏・張苓氏・徐子怡氏・権慧氏

日時:2013年7月13日(土)、10:00(9:30開場)

場所:東京大学本郷キャンパス山上会館002会議

プログラム: 

09:30 開場

10:00 開会の挨拶:藤井省三(東大文学部教授)

10:10 講演:謝惠貞(東京理科大学講師)

『1Q84』から『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』へ - 欲望という通過儀礼、または台湾における村上春樹受容の考察

10:40 討論:コメンテーター:権慧(東大中文博士課程院生、同村上春樹研究会副会長)

11:10 講演:徐子怡(東大中文博士課程院生、同村上春樹研究会会長)

中国の村上春樹読者は如何に「村上チルドレン」を読むのか - 「豆瓣網」における中国の村上読者に対する安妮宝貝の読書調査 - 

11:40 討論:コメンテーター:長堀祐造(慶應義塾大学教授)

13:10 講演:楊炳菁(北京外国語大学日本語学科副教授、東大文学部外国人研究員)

村上春樹小説における「虚」と「実」-「中国行きのスロー・ボート」の中国人について

14:00 講演:王志松(北京師範大学日本語学科教授)

「物語」のための冒険 - チャンドラーと村上春樹の『羊をめぐる冒険』

15:10 討論:コメンテーター:島村輝(フェリス女学院大学教授)

16:40 閉会の挨拶:藤井省三(東大文学部教授)

講演者・謝恵貞氏 講演者・徐子怡氏


コメンテーター・権慧氏 会場の様子

(左後から)藤井省三氏、長堀祐造氏、権慧氏、島村輝氏

(左前から)謝恵貞氏、王志松 氏、楊炳菁氏、徐子怡氏

『毎日新聞』夕刊2013年7月29日シンポ

第六回東大中文村上春樹研究会例会・特別講演会のご報告

14:30 開場

15:00-16:00 講演 楊炳菁先生(日本語)

16:00-16:40 コメント 小山鉄郎氏

16:40-17:00 質疑応答

17:10 閉会

18:00 懇親会


会場の質問を答える楊炳菁氏


会場の様子

会員(正会員・準会員・学外会員)7名、非会員13名のご出席を賜りました。足をお運びくださったみなさまにあらためて御礼申し上 げます。

非会員の来場が多数予想されたため通常であれば例会と同時開催の会員総会を今回は開催いたしませんでした。研究会第二年度の会計報告 は会員のみなさま向けのメールマガジンにて行いました。

会員(学外会員)1名を新たに承認しました。

第五回東大中文村上春樹研究会のご報告 

題 目 : 村上春樹の謎を解く三つのキーワード - 都市、愛、暴力 村上春樹文学の過去形、現在形と未来形

報告者 : 邵丹(東京大学大学院修士課程)

日 時 : 2012年12月22日(土) 15時半

場 所 : 東京大学本郷キャンパス赤門総合研究棟624室

あわせて第5回会員総会を開催し、世話人会より以下の通り事業報告がありました。

■2013年度役員人事

会長 徐子怡(留任)

副会長 権慧(留任)

副会長兼事務局長 張瑶(新任)

顧問 謝惠貞(新任)

■2013年度新事業計画

・研究会のfacebook公式ページを1月中に開設する

・メールマガジン上での論文、書評などの公開、当研究会以外の関連行事の情報紹介

・例会以外の特別講演会の開催

・電子版会誌の発行

第四回東大中文村上春樹研究会のご報告 

題目 : 人気書き込みサイト「豆瓣網(ドーバンワン)」からみる中国における村上春樹の受容

報告者 : 徐子怡(東京大学大学院博士課程・東大中文村上春樹研究会会長)

日時 : 2012年7月21日(土)

場所 : 東京大学本郷キャンパス法文1号館319

次第 : 報告者 : 徐子怡(東京大学大学院博士課程・東大中文村上春樹研究会会長)

日時 : 2012年7月21日(土)

場所 : 東京大学本郷キャンパス法文1号館319

次第 :

15時〜 第4回会員総会 

事業報告(Twitter開設報告)

会則変更案についての報告、討議を行い、新会則が承認・施行されました。

第5回例会の研究報告者候補として邵丹会員が承認されました。

15時半〜 第4回例会

18時〜 懇親会

第三回東大中文村上春樹研究会例会のご報告

題 目 : 1980年代後半の「村上春樹現象」 - 『ノルウェイの森』まで

報告者 : 大井浩一(毎日新聞学芸部)

日 時 : 2012年4月28日(土)

場 所 : 東京大学本郷キャンパス赤門総合研究棟

次 第 :

15時〜 第3回会員総会

事業報告(2011年度会計報告、新入会員数報告、新任事務局員張瑶紹介)

一周年へ向けて会員からの意見聴取

15時半〜 第3回例会

18時〜 懇親会


第二回例会のご報告

題目 : 楊照氏の村上春樹論をめぐって

司会 : 権慧(東大中文村上春樹研究会副会長・東京大学大学院修士課程)

日時 : 12月10日(土)

場所 : 東京大学追分国際学生宿舎14階コミュニケーションルーム3(東京都文京区向丘1-12-8)

※楊照氏の村上春樹論である「三十年来固執不変的主題」(同氏の単著『永遠的少年』、本事文化股?有限公司、2011年所収)にもとづき、出席者全員で討論を行いました。

13:30 会員総会

事業報告 : 6月19日から12月9日までの間の新入会員数(3名)報告

会則変更案了承 : (旧)「会長は事務局長1名を任命する」→(新)「会長は事務局員若干名を任命する」

ウェイブサイト投稿規定案作成過程報告

大井会員より研究報告の提案があり、第三回例会(2012年3月頃)での報告をお願いすることにしました。

謝惠貞会員の世話人就任承認。

14:00 討論会(15:30終了)


2011年度第1回例会研究報告 : 「村上春樹―ノーベル賞の前、1Q84の後」

報告者 : 謝惠貞(東京大学大学院博士課程)

日時 : 6月18日(土) 15:00~16:00

場所 : 東京大学本郷キャンパス赤門総合研究棟701号中国語中国文学研究室

研究会設立大会兼2011年度第1回会員総会(例会終了後に開催)

a.会則の承認

会則案は承認、即日施行され、6月18日をもって研究会が正式に発足しました。

b.世話人選出

徐子怡、権慧、張瑶、松崎寛子の世話人就任が提案され、承認されました。

c.会長、副会長、事務局長の選出

会長に徐子怡、副会長に権慧を選出したことが報告されました。

d.出席者による討議

今後の運営方針について会場から質問があり、会長、事務局より回答がありました。

e.入会申し込み

正会員6名、仮会員4名が承認されました。