Playing at the World
Jon Peterson "Playing at the World" (2012, Unreason Press)
ダンジョンズ&ドラゴンズのルーツと影響についての調査研究の本。
大きめの版型で700 頁オーバーという大著。
(M.Loponen というヘルシンキ大博士課程の人がレビューで「些末事も大事なことも同じ調子でずらずら書き過ぎ」と言ってました)
Jon Peterson がどういう人かは不明。顔写真つきのインタビューとかには出ているしBlog などもあるのだけれども、経歴については全く載っていない。WIRED のインタビューでもそのへんのことを聞かれて、「そういう本じゃないんでそういうのどうでもいいと思う」みたいに答えている。
ちなみに出版社のUnreason Press というのも、たぶんこの人がこの本のために立ち上げた出版社だと思われる。
**** 以下、序文のまとめ ***
20 世紀後半に、マスのヤングアダルト層に大いにアピールする「シミュレーションゲーム」というジャンルが登場。
それから20 年後、トールキンにより一気に盛り上がったファンタジー文学ジャンルがウォーゲームとくっつく形で、新しいゲームジャンルであるRPGが生まれる。つまりD&D(1974)だ。
ガイギャックスは、D&D の由来について、ガイギャックスの中世物ミニチュアゲームChainmail(1971)をアーンソンがキャンペーン【Blackmoor】でダンジョンを潜ったりするゲームをやるために弄ったものがプロトタイプだ、と言っている。この本はRPG の誕生の背景を研究調査していくもので、要はガイギャックスが一言で済ませたところを延々と掘っていくわけだが、なぜそんなことをする必要があるかについて、まず説明している。要はD&D/RPG がその後、ホビー・ゲームのみならず文化全般に対して非常に大きな影響を与えた重要なものだからだ、ということ。著者個人としては、ここにこの本を書いたそもそもの動機があるとのこと(WIRED インタビューより)。
(RPG の心理学的哲学的な価値がどうこう、みたいな話はこの本ではしない。この本はあくまでも歴史について掘っていくもの)
加えて、そういう研究調査が容易ではない理由についても触れている。最も大きな理由はガイギャックス/TSR 社(TSR はガイギャックスが創った会社)とアーンソンの間の訴訟。これによりコミュニティが全体としてガイギャックスにつくかアーンソンにつくか的な緊張関係を持つことになり、コミュニティに属する人々の証言に不可避的なバイアスがかかることになった。あとは曖昧な記憶に頼っているとか。ファンジンも当時の製作者が高等教育を受けてないせいもあって「証拠物件」として使うには心もとないつくりだったり。
各章の紹介に入る前に、そもそもD&D は何が新しかったのか、という点について確認を行っている。その世界の中で何でもやろうと試みれる、という理想の追求。また、ロジスティクスモードと戦闘モードの切り替えから成るひとつの冒険というドラマの形を作り上げたこと。これらにはそれぞれ先例もあったのだが、D&D で結実したということは間違いない。
最後に各章紹介。この本は以下の5 章+終章に分けられる。最初と最後の章が歴史(D&D 以前、D&D 以後)。間の三章がD&D 自体について。
・前史(1964-74)
この章では、ウォーゲームというものについての説明、ボードウォーゲームとミニチュアゲームの違いについてまず説明する。
つづいてゲームコミュニティの話。
・中世ファンタジーという舞台設定
なんで最初のRPG は(ウォーゲームで標準的な)単なる歴史物ではなく、中世ベースのファンタジーが舞台なのか。
トールキンの影響について(D&D の序文では影響を与えた文学作品への言及があるが、そこではトールキンは外されている)。
D&D はファンタジー文学から何を借りてきたのか。
・ルール
近代ウォーゲームの曙であるReiswitz による演習用ウォーゲームKriegspiel(1812 年)の紹介。
ウォーゲームとD&D のルール面での共通性。
・キャラクター(ロールとそれへの没頭)
D&D 自体はロールプレイの概念についてそれほど触れていない。ロールプレイの概念は60 年代のウォーゲームから来ている。
これを考える際は多人数ゲームからの変遷という観点が必要で、すなわちDiplomacy を起点に変化をたどる必要がある。
・RPG の曙(1974-77)、終章
D&D の発売、影響の拡大、ウォーゲームとは違うものとしての認知、フォロワーの増加、RPG というジャンルの誕生。
このゲームの文化的影響について。お馴染みの批判(ゲ現区!暴力!)とかにも触れつつ。コンピューターRPG の誕生にも言及。
【序文まとめ:さわだ (2015/8/28)】
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採録
1章前半 https://youtu.be/Dibhv2nQYQk
1章後半 https://youtu.be/lp6GULwm_EQ
2章前振り部 https://youtu.be/P16U-5yvVtQ
2章本編 https://youtu.be/jNbdwQeheRg
3章前半 https://youtu.be/Hk94ij0OjEQ
3章後半 https://youtu.be/ZDeti4hNSEs
4章前編 https://youtu.be/suJDhEGuRwk
4章中編 https://youtu.be/HRtWgLS6a2w (プリント類なし)
4章後編 https://youtu.be/pivd2-rAOdY
5章前編 https://youtu.be/0vC4ppwG8uE
5章中編 https://youtu.be/zDK_gLmBvmw
5章後編/終章 https://youtu.be/IIIUEYKtbPk