近年、「心臓または腎臓の急性/慢性の機能不全が、もう片方の臓器での急性/慢性的な機能不全を引き起こす病態」を表す心腎連関症候群という疾患概念が獣医学で提唱され非常に注目されています。心腎連関症候群の中でも特に、心臓の機能低下に始まり腎臓の機能低下が引き起こされる病態では、 心拍出量の低下、中心静脈圧の上昇および動脈血圧の低下が関与しているとされていますが、正確な機序の解明には至っておりません。本研究では、上記の血行動態指標を組み込んだ新たな指標による腎機能低下の機序解明ならびに治療法への応用を模索していきます。
研究資金
心腎連関における血行動態学的視点からの腎機能低下機序の解明(科研費2024-2026年)
心疾患のイヌ・ネコの治療では、強心剤や利尿剤、抗凝固剤など実に多くの薬剤が使用されています。薬剤を用いて疾患を治療する際、使用する薬剤の薬物動態特性を把握することは適切な治療を行う上で欠かすことができませんが、イヌ・ネコでは依然として十分な情報の蓄積がありません。薬物動態を調査するためには、薬剤を投与した動物からの度重なる採血が必要となりますが、疾患に苦しむ動物からの多数の採血は非現実的であり、それが情報の蓄積を困難なものにしている一因にもなっています。そこで本研究では、日本の小動物臨床研究ではまだあまり導入されていない母集団薬物動態解析という方法を用いることで、1頭の動物からの採血回数を可能な限り少なくしつつ、各薬剤の薬物動態特性を調査することを目的としています。