野間 久史 (情報・システム研究機構 統計数理研究所 /総合研究大学院大学 先端学術院)
対象:中級者
開催:オンライン開催のみ(事後オンデマンド配信有)
企画概要
近年、Lancet誌などの国際一流医学誌では、統計に関する新しいガイドラインが公表されており、より精緻な統計解析と報告の作法が求められるようになっています。「どの変数をなぜ調整したのか」「欠測データをどう扱ったのか」「モデルの仮定を確認したのか」「感度分析やサブグループ解析をどのように位置づけたのか」統計を専門としない臨床家にとっては、論文執筆の際に悩まされる問題は着実に増えているといえるでしょう。
本セミナーシリーズでは、そのような壁を乗り越え、これから意欲的に臨床研究に取り組みたいと考える臨床家を対象として、臨床研究の論文のMethods、Results、Discussionを「最新のガイドラインをもとに国際医学誌の査読に耐える説明」に高めるための実践的な考え方と方法について解説します。特に、変数調整の最低限のライン、探索的研究におけるDAGの役割、欠測データと多重代入、モデルの仮定の確認、感度分析とサブ解析の扱いについて、詳しく解説を行います。
数式は可能な限り用いずに、高度な理論をできる限り噛み砕いて、実際の臨床研究でよく起こる迷いに焦点を当てます。「単変量解析で有意だった変数だけを調整してよいのか」「探索的研究ならDAGは不要なのか」「欠測が少なければcompletecaseでよいのか」「Coxモデルの比例ハザード仮定はどこまで確認すべきか」「片方のサブグループだけ有意なら効果が違うと言えるのか」といった問いを、具体例を通じて整理します。
本シリーズの目標は、統計手法を「知っている」というフェイズを乗り超え、みなさんが自身の研究で「なぜその解析を行ったのか」「結果をどこまで強く解釈できるのか」を、自身の言葉で正確に説明できるようになることです。Methodsをよりよく磨き上げ、ワンランク上のジャーナルをめざすための、実践的な統計リテラシー講座です。
講師略歴
情報・システム研究機構統計数理研究所 教授。
2011年、京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻修了。博士(社会健康医学)。
情報・システム研究機構統計数理研究所助教,准教授を経て、'23年より現職。
コクランジャパン理事,鳥取大学医学部附属病院教育研究顧問。
先端的なデータサイエンスの研究・振興に取り組むとともに、全国の大学や研究機関において、臨床研究の教育・コンサルテーションを行っている。
12:00-13:00 会場受付
松下 翔(橋本市民病院総合内科)
対象:初学者
開催:現地開催+事後オンデマンド配信
企画概要
プライマリ・ケア研究では、患者経験、態度、Shared Decision Makingなど、目に見えない抽象的な概念を「尺度」を用いて数値化し、研究や実践に活用することが多くあります。しかし、「自分が本当に測りたいものは何か」「その尺度は本当にその概念を測定しているのか」を立ち止まって考える機会は、意外と多くありません。
本セッションでは、「何を測りたいのか?」「どうやって測るのか?」「既存の尺度は適切か?」という3つの問いを軸に、尺度の基本的な考え方を学びます。
例えば、Shared Decision Makingをテーマに研究を行う場合、患者の心理的葛藤を測りたいのか、医師と患者の協働意思決定の質を測りたいのかによって、選択すべき尺度は異なります。また、患者の視点を知りたいのか、医療者の視点を知りたいのかによっても、研究デザインは変わってきます。
さらに、既存の尺度を利用する際に、質問項目(item)の内容を実際に確認すること、妥当性(validity)や信頼性(reliability)がどのように検証されているかを理解することの重要性についても、Decisional Conflict Scaleなどの実例を交えながら解説します。
「有名な尺度だから使う」のではなく、「自分が測りたいものに最も適した尺度を選ぶ」ための考え方を身につけることを目標としたセッションです。
講師略歴
2017年 東京大学医学部卒。
天理よろづ相談所病院で初期研修・後期研修(内科ローテートプログラム)後、2022年より橋本市民病院総合内科。
日本臨床疫学会 臨床疫学認定専門家。
大谷 尚 (名古屋経済大学)
対象:(質的研究)初学者~上級者、指導者
開催:現地開催のみ
企画概要
みなさんの中に、大学で英語以外の第二外国語を初めて勉強したとき「えー!どうしてドイツ/フランス語だとこうなんだろう?英語だったらこうならないのに!」と不満な思いをした人はありませんか? それは「頭が英語になっている」ために英語の知識が邪魔をし、英語以外の外国語の習得を妨げているのです.同じことは量的研究と質的研究の間でも起きています.「頭が量的研究になっている」ために量的研究の知識が邪魔をし、質的研究の理解を妨げているのです.
ところで「英語から入るドイツ語」という本があります.これはドイツ語を英語と比較して説明することで、英語の知識が妨げではなく、むしろ助けとなってドイツ語を理解できるように書かれた本です.それだけでなくこの本は、英語に関する理解も深めてくれます.
このセッションは、量的研究には馴染みがあって理解できるが、質的研究を、①「インチキ臭いからやりたいと思わない」人、②やってみたいが「良く分からず手が出せない」人、③自分でも経験したが「いまだにすっきりと分からず不明な点が残っている」人、そして④質的研究を指導する立場にあるが「指導者として迷うことや分からないことがまだまだある」人など、多様な人が、量的研究との比較を通して質的研究を理解できるように構成されます.
講師は質的研究について解説しながら、両者の比較に基づくいくつかの小質問(クイズ)を出します.参加者はそれについてグループで根拠を持って話し合い、自分たちの答えを出した後で、講師の答えを聴きます.その答えが正しければ、自分の考えに自信を持って発展させて行くことができます.逆にそれが間違っていれば、その根拠が間違っていたことを知り、質的研究に対する認識の変革へと進んで行けます.
このセッションではこのように、参加者が質的研究に対する日頃の疑問や思いを言語化して共有し、それを足掛かりにしてお互いに認識を深め、あるいは不認識な点を克服して質的研究を理解していきます.講師はこれまで、医師を中心とする医療者に対して、国内外で、質的研究の講演、セミナー、ワークショップ、集中講義を300回ほど担当してきました.また東京慈恵会医科大学の「プライマリケアのための臨床研究者育成プログラム」に2008年から関与し、今年で19年目になりました.
質的研究に疑義や疑念を持つ人こそ、ぜひ講師をやっつけるつもりで「前のめり」で参加してください.このセッションが、質的研究についてのすべての参加者のモヤモヤを晴らす機会となることを願っています.
14:30-15:00 休憩
中山 元 (慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センター
本村 壮 (佐賀大学医学部附属病院 総合診療部)
対象:初学者~上級者
開催:現地開催+事後オンデマンド配信
企画概要
我が国のプライマリ・ケア研究の最近の拡がりは数十年前と比べ隔世の感があります。その拡がりとともに、プライマリ・ケア研究を志す若手研究者が各地域で育ってきています。それぞれの地域で今後、プライマリ・ケア研究の核となって情報を発信していくであろう期待の若手が、どのように研究を始め、何に関心があり今後どのように活動していくかの語りは、これから研究を始めようとするプライマリ・ケア従事者に刺激をもたらすと思います。3名のRising starにご登壇頂きます。
質問紙調査研究とclinician-researcherとしての歩み 慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センター 中山元
私は家庭医療を学んだ後、卒後10年目に大学院に進学し、「家族介護者からみた医療・ケアの質」に着目して質問紙を用いた研究を行いました。具体的には、家族介護者からみた多職種ケアの質を測定する尺度を開発し、ケアの質に関連する要因や家族介護者のアウトカムへの影響について検討しました。また、在宅医療をフィールドとした質問紙調査研究にも参画しています。今年、卒後18年目にして大学教員になり、研究キャリアとしては後発の立場からclinician-researcherとしての経験をお伝えしたいと思います。
岩田啓芳(北海道大学 環境健康科学研究教育センター総合内科)
濱田修平(筑波大学医学医療系 神栖地域医療教育センター)
対象:初学者〜中級者(研究を始めたい病院勤務医、総合診療医、研修医、若手指導医)
開催:現地開催のみ
企画概要
病院勤務医は日常診療の中で、多様な疾患や診療プロセス、多職種連携の現場に接しており、研究につながる臨床疑問に数多く遭遇します。一方で、「どのような疑問が研究になるのか分からない」「テーマが臓器別専門領域に偏ってしまう」「単施設では症例数が限られる」「研究計画としてどのように形にすればよいか分からない」といった課題に直面することも少なくありません。
本セッションでは、病院勤務医が取り組む研究の特徴や意義について、診断、予後、治療、医療の質改善、患者経験、医療システムといった観点から整理し、「病院勤務医らしい研究」とは何かを考えます。また、実際に臨床現場で生じた疑問が研究課題として発展し、学術的成果へとつながった事例を紹介しながら、研究テーマの見つけ方や育て方について共有します。
前半は講義形式で病院勤務医の研究総論を扱い、研究課題の創出から研究デザインの構築までの考え方を解説します。後半は登壇者による実例紹介を通じて、研究がどのように始まり、どのような工夫や試行錯誤を経て形となったのかを共有します。さらに参加者とのディスカッションを通じて、日常診療に潜む臨床疑問や研究上の課題について意見交換を行い、「研究が始まる瞬間」を可視化することを目指します。
病院勤務医として研究活動を展開するための視点や方法論を共有し、臨床現場に根ざした研究課題の創出と発展について考える機会としたいと考えています。
16:30-17:00 休憩
小坂 明博(福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)
対象:初学者〜中級者
開催:現地開催+事後オンデマンド配信
企画概要
選択バイアスは、研究対象者がどのように選ばれ、どのような人が解析に含まれ、あるいは除外されるかによって、曝露とアウトカムの関連が歪んで推定される問題です。交絡と比べると見落とされやすい一方で、研究結果の妥当性に大きな影響を与える重要なバイアスです。解析手法によって一定程度補正できる場合もありますが、多くの場合、解析だけで十分に解決することは難しく、研究計画の段階からデータ収集、解析、結果の解釈に至るまで、一貫して注意を払う必要があります。
本講演では、臨床・疫学研究のプライマリ研究初級者を対象に、選択バイアスを見抜き、その影響を適切に考える力を養うことを目的とします。研究に参加する人と参加しない人の違い、追跡中に脱落する人の特徴、特定の条件を満たす対象者だけに解析を制限することによる歪み、曝露・アウトカム・追跡開始時点の不一致など、実際の研究で起こりやすい具体例を取り上げます。
これらの例を通じて、「誰が、いつ、どの条件で解析に含まれているのか」という視点から、比較の公平性を検討する方法を学びます。また、研究計画時に対象者の定義や組み入れ基準をどのように設定すべきか、追跡不能や欠測にどのように対応すべきか、解析段階でどのような感度分析や確認が必要か、結果を解釈する際にどのような限界として記述すべきかについても整理します。単に「バイアスがある」と指摘するだけでなく、研究のどの段階で、どのような工夫によって影響を小さくできるのかを具体的に考えることを目指します。
最終的には、参加者が自身の研究計画や論文読解において、選択バイアスの可能性を自分で点検し、より妥当な研究デザイン・解析・解釈につなげられるようになることを目標とします。日常の研究実践に直結する、実用的なチェックポイントを共有する講演です
松島 雅人 (東京慈恵会医科大学)
杉山 佳史 (東京慈恵会医科大学)
務台 理恵子(東京慈恵会医科大学)
対象:初学者および指導者
開催:現地開催のみ
企画概要
プライマリ・ケアの現場では、日々の診療、在宅医療、地域活動、多職種連携、教育、質改善の中で、「この対応で本当によいのだろうか」「なぜ同じような患者さんでも経過が違うのだろうか」「この取り組みは研究になるのだろうか」といった、言葉にしにくいモヤモヤが生まれます。こうした違和感は、まだ研究課題の形にはなっていなくても、プライマリ・ケア研究の大切な出発点です。患者さんの生活背景、家族、地域資源、医療提供体制、継続的な関係性などが複雑に関わるからこそ、現場でしか見えない問いがあり、現場でこそ、その問いに答える意味が見えてきます。
本ワークショップでは、参加者それぞれが持つモヤモヤを出発点に、少人数のグループで話し合いながら、研究課題へと整理していきます。まず、PECOを用いて「誰についての問いか」「何が関係していそうか」「何と比べるのか」「何が変わると重要なのか」を考え、問いの骨格をつくります。次に、FINERを用いて、その問いが実施可能で、興味深く、新規性があり、倫理的で、重要な研究になりそうかを点検します。さらに最後に、C²AREの視点から、Context、Comprehensive、Applicabie、Relational、Equity-orientesを見直し、プライマリ・ケア研究としての意味を想起し、そして深めます。
研究経験の有無は問いません。これから研究を始めたい方、研究テーマを探している方、日々の診療で感じる違和感を誰かと話してみたい方を歓迎します。まだうまく言語化できない疑問、研究になるか自信のない違和感、普段から気になっている現場の困りごとで大丈夫です。また、研究のメンターとして指導されている方たちにもご参加頂きご意見を頂戴したいと思います。アットホームな雰囲気の中で、互いの経験を聞き合いながら、「それ、研究になるかもしれない」を一緒に探してみませんか。
19:00-20:30 懇親会 (4階学生ホール)