風力発電に用いる風車の故障停止は,産業・社会に甚大な影響を与える.風車は,回転機器の中でも最大級の規模を誇るため,それ故にメンテナンスや故障検知が難しい.定期メンテンスでこうした機器の維持管理を行っているが,機器の劣化や損傷等の経年変化をより正確に,より早期に把握することができれば,機器の状態に応じた費用対効果の高いメンテナンスを実施することができる.近年のセンシング技術や情報通信技術の発展に伴い,遠隔での状態監視システム(Condition Monitoring System; CMS)への期待が高まっている.
CMSを用いた風車異常検知では,対象は振動やAcoustic Emission,温度,潤滑油,音響,SCADA等と多岐にわたり,それぞれに対して種々の方式が検討されている.これらのセンサーデータに対する診断・解析技術は知識駆動型とデータ駆動型に大別される.データ駆動型アプローチは,対象機器の稼働状態が正常か異常かを判断する「専門家の知識」を,蓄積された過去のデータから「学習」することで得ようとする.この時に利用するのが機械学習や深層学習の技術である.
機械学習や深層学習を用いて故障予兆検知を行う際,検知対象の機器の正常・損傷データを事前に大量に収集する必要がある.しかし,風車等の寿命の長い機器では,実運用上短期間に大量の異常データを収集することは現実的でない.そこで本研究は,寸法やスペックに依らず,他の風車から入手した損傷データを監視対象の故障予兆検知に流用することができないかを考える.
機械学習・深層学習を用いた風車異常検知のサーベイページ[google_sheet]